ナイン・インタビューズ 柴田元幸と9人の作家たち
信頼できる翻訳者であり読者

新作が待ち遠しい作家というのは何人かいるが、新作が待ち遠しい翻訳家となると、これはもう柴田元幸さんしかいない。

多くの人は、海外の作品を読むときに、翻訳家が誰か、なんてそんなに気にはしていない、と思う。僕もかつてはそうだったが、柴田さんの翻訳作品を読んでからは、多少は翻訳者を気にかけるようになった。そして今では、柴田さんが翻訳しているなら原作者が誰か、なんて気にしない。内容をよくわかっていない本を手に、自然とレジまで歩いている。

その柴田さんの新作は『ナイン・インタビューズ』という9人の作家のインタビュー集。シリ・ハストヴェット、アート・スピーゲルマン、T・R・ピアソン、スチュアート・ダイベック、リチャード・パワーズ、レベッカ・ブラウン、カズオ・イシグロ、ポール・オースター、村上春樹というそうそうたる面子。おまけに原文付き、さらに音声を集録したCDがついているので買わないわけがない。

とはいえ、9人の作家で読んだことがあるのは、「村上春樹」「ポール・オースター」の2人のみ。残りの7人に関する知識は全く無かったのだけれど、作者の魅力を引き出すインタビューのおかげで、「誰の作品から読めばいいのだ!」ということになってしまった。

頼まれて翻訳しているのではなく、自分が翻訳したいものを翻訳しているというスタイルからわかるように、柴田さんもその作品、作家が大好きなわけで、自分が好きな作品を多くの人に伝えたいという思いがしっかりと伝わってくる。また、作家達も自分の良き読者として、より良い相互理解を求めて、真剣に質問に答えている。なにより読者の視点で語られる柴田さんの感想に対して、本当に喜んでいる。そのやり取りを読んでいると、自分がまだその作品を読んでいないことに対して、少し腹立たしくもあり、またひとつ楽しみが増えたと、うれしくもなった。

2004年05月15日(土)

読書 /

Text by pushman