
けもの道の歩き方 猟師が見つめる日本の自然
新人猟師の教科書
狩猟免許試験の申し込みの帰りに寄った本屋さんで手にとったのが、『けもの道の歩き方』。自分が狩猟をするというイメージがまったく掴めず、狩猟の何を知りたいのかもあやふやな状態だったけれど、この本のおかげで狩猟への解像度がぐっと上がったと思う。
前作『ぼくは猟師になった』は、狩猟に興味を持った人に対して狩猟の魅力を伝える内容だった。今作は狩猟免許を取得して猟師になろうとしている人や、新人猟師に向けた内容になっている。タイトル通り、千松さんなりの「けもの道の歩き方」を教えてくれるといった感じで、ご自身が体験したことや見聞きしたことをわかりやすく伝えている。
個人的な体験や感覚、伝聞だけではなく、たくさんの資料を元にいろんな考察をされていて、とても勉強になった。まだ実際に狩猟を体験していない僕にも、現在の行政主導による獣害対策や、それに絡んだジビエ振興、狩猟ビジネスなどの問題点や課題が説得力をもって伝わった。もちろん問題点だけではなく、狩猟の魅力や楽しさ、千松さんが体験したエピソードなども前作以上にたくさん語られていて、早く自分も体験したいと思いつつ、軽い気持ちで「狩猟をしてみたい」と思った僕は少し姿勢を正さないといけないような気持ちにもなった。
自給自足の生活への憧れは何度か持ったことはあったけれど、現金収入が必要な現代社会では現実的ではないとすぐに諦めていた。でも、生活の保証がある状態で食べ物を自前で用意する努力は、楽しくておもしろい。現代社会に守られてこそできる、ある種の贅沢だと思うようになった。
千松さんが言われているように、「狩猟を生活の一部に取り入れる」ことはすぐにできることではない。でも、自分が置かれている状況でできることもたくさんある。僕は今のところ狩猟を生活の一部に取り入れられる状況ではないけれど、この本にはその状況をつくるヒントと、その状況を作り出した時の楽しみ方や考え方の指針が書かれている。少しずつその方面に足を運んで、さらなる贅沢を楽しみたいと思う。
けもの道の歩き方
狩猟を始めると意識せざるをえない問題や出来事を丁寧に紹介しつつ、狩猟の魅力についてもちゃんと過不足なく紹介してくれている。新人猟師にとってはかなりの良書。
