鍵盤ハーモニカ Pro-37v3

弾けない楽器を買うんだぜ
鍵盤ハーモニカ Pro-37v3

「ギターを買った」と知人から写真が送られてきた。お祝いの言葉と共に、自慢のギターとウクレレの写真を送った。楽器本来の存在理由である素敵な音楽を、久しく——というか、この世に生み出されて以来——奏でられていない可哀想な楽器達だけど、相変わらずかっこいい。見るたびに惚れ惚れする。こんな素晴らしい楽器なのに視覚でしか楽しんでいない事実が、怖い。せめて音ぐらい出さねばと反省し、数十年ぶりに練習を再開した。

仕舞い込んでいた教材を引っ張り出して、スケール練習を黙々と繰り返す。「この曲を、あの曲を、あんな曲も弾けるようになりたいッ!」と思って真面目に練習していた頃は、できないことばかりが気になり練習するたびに焦燥感に駆られていた。今はなんの目標もないおかげで、さっきより少しでもきれいな音が出るだけで、ミスタッチなく完走できただけで嬉しいし、充実感がある。

鍵盤ハーモニカに惹かれたわけ

気分よくその頃YouTubeで観ていた動画を振り返っていると、鍵盤ハーモニカで「丸ノ内サディスティック」を演奏している動画が関連動画に表示された。調べてみると、原曲では椎名林檎が鍵盤ハーモニカを演奏しているらしい。久しぶりに『無罪モラトリアム』を聴いて、ライブ映像を観て、曲と椎名林檎のかっこよさに改めて魅了された。そして、鍵盤ハーモニカに俄然興味が湧いた。

鍵盤ハーモニカを選んだわけ

かつて何度かいくつかの管楽器に憧れたことがあった。その度に“管楽器は音を出すだけで大変”という話を思い出し、自分には縁のない楽器だと諦めた。でも、大好きな曲の多くで管楽器が使われていて、憧れは消えそうにない。

そこで鍵盤ハーモニカだ。

基本的にはおもちゃっぽい音色なのに、切なさと渋みが含まれていて、ルパン三世のエンディング曲的な哀愁を感じる。かっこいい。

息を吹き込んで鍵盤を押せば、とりあえず音は鳴る。教育楽器として普及しているし、初心者に優しい楽器であるはずだ。そういえば幼稚園ではピアニカの時間があったし、楽しく演奏していた記憶がある。つまり、鍵盤ハーモニカは音を出すのが簡単な管楽器だと言えると思う。

僕の楽器の選び方

初めて買った楽器はウクレレだった。どれを買えばいいかさっぱりわからず、楽器屋さん勧められた入門用のFamous FS-5を選んだ。見た目はしっくりこなかったけれど、弾けるようになる頃には愛着を持てるだろうと考えた。ところがレッスンに通って弦楽器全般に興味が湧き、楽器のかっこよさの基準を持ってしまった。そうなると見た目が気に入らない楽器に愛着を持てるわけがない。さらに、かっこいい楽器でかっこよく演奏する先生達を見て、それまで知らなかったかっこいい音楽も知ってしまった。

かっこいい音楽をかっこよく演奏する才能を持たない僕が、持てるかっこよさとは? もちろん、楽器の見た目だ。

ということで、鍵盤ハーモニカも当然見た目で選んだ。幸いギターやウクレレと比べれば種類はずっと少ないし、高価なモデルでも数万円。安価なものは見た目が安っぽいから選択肢に入らない。そして、自慢のウクレレやギターの横に並べても違和感のない見た目は必須条件だ。ということで、あまり悩むことなく落ち着いた見た目の「メロディオン アルト Pro-37v3」を購入した。

「鍵盤ハーモニカ Pro-37v3」とSumi工房のアーチトップギターとウクレレ
自慢の楽器達。一つもまともに弾けないなんて信じられない。

鍵盤ハーモニカを買っても後悔しないわけ

届いた鍵盤ハーモニカを手に取ると適度な重さで、持ち心地がいい。「いい楽器を買ったなぁ……」としみじみ嬉しくなる。適当に出した音は素朴で哀愁があって、自分が渋くなったのではないかと錯覚する。楽しい。勢いで買って良かった。

でももちろん、簡単に演奏できる楽器というわけではない。呼吸と打鍵のタイミングは想像よりも難しい。打鍵の強弱も意識しないといけない。管楽器よりは楽に正確な音は出せるけど、管楽器と同種の難しさはしっかりとある気がする。とはいえ、心が折れるほどの難しさは当分感じない程度には、初心者でも楽しめる楽器だ。

いくつかの曲のメロディを弾いてはニヤニヤしていると、だんだんしんどくなってきた。強弱をつけ、長く、短く、呼吸を繰り返すのは、結構大変。呼吸するための筋肉が使われている実感があって、もはやちょっとした呼吸のトレーニングだ。そう思えばこの疲労感も心地良く思える。思いがけず、これからの人生を健康に過ごすためにも役立つ、素晴らしい楽器を手に入れたのかもしれない。

メロディオン アルト Pro-37v3

造形が美しく、仕上げが丁寧。もちろん音もいい。生活の邪魔にならない大きさの楽器は、飾っているだけでも生活を豊かにしてくれる。

購入時の価格 ¥26,960

S型唄口(MP-151)

Pro-37v3に付属のホース型は長いので、しんどいし音量の調整が難しい(その分表現の幅は広がる?)。特製ショート唄口は見た目がかっこいいし、音色もいい。でも鍵盤が見えない。つまりどちらも上級者向けに思えたので、その中間に思えたS型唄口も購入。見た目通り両方のいいとこ取りができている感じ。Pro-37v3との(見た目の)相性もいい。買って良かった。

購入時の価格 ¥1,235

鍵盤ハーモニカの本

鍵盤ハーモニカの仕組みやあらましを知りたくて読んでみたけど、なぜ音楽教育で鍵盤ハーモニカが使われているかなどなど、鍵盤ハーモニカにまつわる広範囲なお話が紹介されていて、かなり読み応えがあった。ただ、ちょーっと読みづらかったり、そういうおふざけは要らないと思うことも多かった。著者のユーモアセンスと波長が合っていれば、もっと楽しく読めたかなと思う。

参考ページ

問題ある動画だけれども、まあ、かっこいい。
熱心にギターやウクレレを練習していた時、心の中でリフレインしていた曲。
Update:

Text by pushman

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