狩猟生活の歩み
より楽しんでいくための記録
様々な物事に対するちょっとした好奇心が混ぜこぜになり、興味を持った狩猟。食べ物を自分で手に入れる喜び、おもしろさに触れて、自分の中のなにかが変わった実感があるし、いろいろな考え方や思いは今も更新され続けている。その変遷は自分にとって興味深いので、記録してみることにした。
- 1期目(2017年11月15日〜2018年2月15日)
- 2期目(2018年11月15日〜2019年2月15日)
- 3期目(2019年11月15日〜2020年3月15日)
- 4期目(2020年11月15日〜2021年3月15日)
- 5期目(2021年11月15日〜2022年3月15日)
- 6期目(2022年11月15日〜2023年3月15日)
- 7期目(2023年11月15日〜2024年3月15日)
- 8期目(2024年11月15日〜2025年3月15日)
1期目(2017年11月15日〜2018年2月15日)
狩猟道具:エースハンター5.5mm
移動手段:自転車、電車
猟果無し。ほんとに一人で始めたので勝手がわからず、発砲できる状況を作ることにも四苦八苦。出猟中のほとんどの時間は自転車移動に費やしていたので、とてもしんどかった。でも、自転車を漕ぎながら「自分は今、狩猟をしているんだ」と思うと、めちゃくちゃ嬉しかったし、楽しかった。猟期終盤に中古で購入したエースハンターが壊れて強制終了。罠猟師と偶然出会い、シカのもも肉(両足6kg)をいただいたのが唯一の猟果(っぽいもの)。

2期目(2018年11月15日〜2019年2月15日)
狩猟道具:エースハンター5.5mm 近江屋カスタム
移動手段:自転車、電車
猟果はヘッドショットを狙ってネックショットになったカルガモと、ヘッドショットを狙って羽を破壊するも30分以上逃げ回られタモで回収してナイフで止めを刺したコガモ。
前期壊れたエースハンターを北海道の近江屋さん(現在は廃業)でカスタマイズ。その甲斐あってか念願の猟果を得られた。でも、カモの胸肉は期待していたような味ではなかった。素材そのものがおいしいと思い込んでいたので、ちょっとガッカリ。でも、内臓肉、もも肉の旨味は強烈で、もっと食べたいと思った。自分で動物を殺して食べることに心配したほどの抵抗感はなかったので、狩猟を続けられると確認できたことが何よりの収穫だったかもしれない。初めて野生のシカの群れと遭遇して散弾銃で挑む大物猟がより楽しみに。
3期目に向けて冷凍庫を購入し、散弾銃MSS-20を所持、車の購入も決意。

3期目(2019年11月15日〜2020年3月15日)
狩猟道具:MSS-20、エースハンター5.5mm 近江屋カスタム
移動手段:車(以降同じ)
MSS-20の猟果はヒドリガモ。エースハンターの猟果は半矢で飛べなくなったと思われるカルガモ。
単独忍び猟(っぽいこと)に挑戦するも、狩猟に関する大半の知識の無さを痛感するのみ。それでも痕跡を見つけたり、足跡を追ったり、山の中の道なき道を歩いたり、あらゆることがめちゃくちゃおもしろかった。おかげで「大物猟ってどうしたらええんや……」という迷いが無くなり、コツコツ一人で試行錯誤して学んでいくことを決意。

4期目(2020年11月15日〜2021年3月15日)
狩猟道具:MSS-20、エースハンター5.5mm 近江屋カスタム
MSS-20の猟果はシカ(メス)。エースハンターの猟果はキンクロジハジロ。
初めて巻狩りに参加。いろんなことを教わり、経験させてもらった。念願だった罠の見回りにも同行させてもらい、罠猟への憧れが強まる。巻狩には11回参加し、その内10回は獲物と遭遇。そして発砲できたのは4回。仕留めたのは1頭。とてもいい場所で待たせてもらったのに不甲斐ない結果だったけれど、巻狩の待ちで必要なスキルの輪郭がぼんやりとわかった。
エースハンターも発砲回数は激増。しかし当ったのは3回で、内2回は半矢で潜られ回収できなかった。鳥撃ちメインの狩猟生活から大物猟メインに移行したことでメリハリができて、鳥撃ちがより楽しくなった気がする。

5期目(2021年11月15日〜2022年3月15日)
狩猟道具:MSS-20、エースハンター5.5mm 近江屋カスタム
MSS-20の猟果はシカ4頭。エースハンターの猟果はキジバト。
本格的に巻狩りに参加。そして罠猟にも参加させてもらい、止め差しや解体を何度も経験させてもらった。さらに自分で仕留めたシカを一人で解体、精肉したり、「狩猟をしよう」と思ってから「体験したい」と思ったことのほとんどを体験させてもらえた素晴らしい猟期だった。
今期は単独忍び猟よりも巻狩りに参加して狩猟や山の知識を学ぶことを最優先した。それに備えてMSS-20でスキートを練習し、その甲斐あって前期とはまったく違う気持ちで引き金を引くことができた。今思えば前期は走っている鹿をろくに狙えていなかったと思う。獲った数が増えたことよりも、急速に増えている知識を少しずつゆっくりと自分の武器にできていることがうれしい。引き続きスキート練習をして、連射にも対応したい。そして、ランニングターゲットもしっかりとやっておきたい。
巻狩りの参加回数が増えたことで鳥撃ちの回数は激減。それでも出会いは過去最高。キジバトしか獲れていないのは狙撃力不足。でもキジバトは念願の獲物のひとつだったので、とてもうれしい。ちなみにカモよりクセはなくとてもおいしかった。来期は鳥ももっとたくさん食べたい。
6期目(2022年11月15日〜2023年3月15日)
狩猟道具:MSS-20、エースハンター5.5mm 近江屋カスタム
MSS-20の猟果はシカ4頭、カルガモ1羽。エースハンターの猟果はカルガモ1羽、キンクロハジロ1羽。
エースハンターは相変わらず射撃が下手で出会いの数を全く活かせていない。初めてキジをスコープで捉えたけれど、かすりもしなかった。ポンプ回数12回は威力上昇のメリットよりも引き金の重くなるデメリットを感じるようになった。結局8回ポンプに減らし、カルガモとキンクロハジロを仕留めた。来期までに軽量のペレットを試して、6回ポンプでどうなるのか試す予定。
MSS-20は巻狩がメイン。知識と経験が増えて、益々おもしろいと感じる。今期は待ち方や状況の変化への対応など、それなりに成長していると実感することもあった。残念なことに、それを猟果に繋げられなかった。年末まではいいペースだったのに年明けから良くない外し方が続き、撃てば中るような状況でも引き金を引けなくなってしまった。幸い終了直前に良い射撃で仕留めることができて、嫌な感覚は払拭することができたけれど、反省することの方がずっと多い。
単独忍び猟ではようやく鹿と出会うことができた。今期は1回しか挑戦できなかったけれど、歩き方や歩くペース、ルートの選定など、前期までとは比較にならないぐらい上達していた(はず)。鹿が居そうな気配を感じ、待ち伏せして、数分後に雌鹿が2頭出てきた。撃とうと思えば撃てる状況だったし、中る距離だった。でも、なんだか引き金を引く気にならなかった。想像通りの展開がうれしすぎて、猟欲が満たされてしまったのかもしれない。自分一人で鹿と偶然ではない遭遇を果たしたことで、巻狩で得た知識と経験が身に付いていると実感できたのは、今期一番うれしいことだった。
7期目(2023年11月15日〜2024年3月15日)
狩猟道具:MSS-20、エースハンター5.5mm 近江屋カスタム
MSS-20の猟果はシカ2頭、マガモ2羽、コガモ1羽。エースハンターの猟果はヌートリア2頭。
猟果だけをみれば変わり映えしない、というか少し寂しい結果に見えるけれど、内容はとても充実してめちゃくちゃ楽しい猟期だった。
残念なのはエースハンターの猟果。鳥を獲れなかったの初年度以来。悔しい。チャンスは何度もあったのだけど、射撃が下手すぎる。練習していないから当然の結果なんだけど、それにしても。ヌートリアは念願の獲物だったし、うれしかった。お肉もおいしい。農作物に悪さしているらしく、困っている農家さんも多いので、これからも狙うつもり。
今年は単独忍び猟をする機会がなかったので、MSS-20は鳥撃ちと巻狩り。鳥撃ちは念願のマガモ2羽とコガモ1羽。初めてのマガモはエースハンターで獲りたかったので複雑な気分になったけれど、そんな小さなことはどうでもよくなる旨さだった。そりゃみんなマガモを狙うわけだ。MSS-20は基本的に大物用だし散弾で鳥を獲るのは気が進まないんだけど(弾が入るので)、マガモの場合は積極的に狙っていくと思う。
大物猟では解禁後に「ゆっくり歩く鹿への“狙いすました狙撃”」「疾走する鹿に反応した“動的射撃”」という理想的な2パターンで獲れたけれど、その後がダメダメだった。原因は待つ場所の選定。こちらに都合の良いルートで逃げてきた時にベストの場所を選びすぎて、少しずれた場所に出てきた獲物に対処できないことが多かった。来期はもう少しいい加減に場所を選ぼうと思う。
「獲る」という結果が不甲斐ないのに充実した猟期を送れた理由は、罠の設置場所の選定や見回り、そして巻狩り前に見切りの真似事をさせてもらえたことだ。
今まで足跡を見ても大した情報を得られなかったけれど、数日間連続で見回りさせてもらったことで、その足跡が新しいとか古いとか、ここはいつ頃イノシシが掘り返したとか、少しは判断できるようになった(その判断が正しいかはまだまだ怪しいけれど)。
また、いくつかの罠の設置場所を一緒に考えさせてもらい、「なぜそこがいいか」「なぜこっちには設置しないのか」など、実際的な知識を得られた。そしてその罠の近くまで獲物が来たり、直前で引き返されたりといった痕跡を見ることで、獲物との駆け引きを楽しめた。
そして、今期一番の収穫は、イノシシの腹出し〜皮剥き〜大バラシを一人でできるようになったことだ(運搬を除く)。今まで一任していた熟練の先輩猟師が引退されたので、自ら志願して解体担当になった。最初は手の抜きどころが分からず皮剥きに尋常ではない時間がかかったけれど、何回か経験してかなり短縮できた。来期はもっと手際良くできるはず。
本当はみんなでやればそれぞれ知識と技術が増えるし、なにより早く終わるんだけど、これに関しては我儘を通させてもらった。僕はお肉として食べるまでが狩猟行為だと思っているし、その全ての工程を一人でもできるようになりたいのだ。
8期目(2024年11月15日〜2025年3月15日)
狩猟道具:MSS-20、エースハンター5.5mm 近江屋カスタム
MSS-20の猟果はマガモ2羽、カルガモ2羽。エースハンターの猟果はヌートリア1頭、キジバト1羽、ヒヨドリ2羽。
今期の巻狩は色んなことがあって大苦戦。最終的に猟隊としてはまあまあ(?)な結果になったと思われるけれど、僕個人はMSS-20を所持した年以来、鹿を獲れなくて寂しい結果となってしまった。発砲したのは解禁まもない時期の2回だけで、その2回以外は絶妙に撃てない場所に出てきて見送ることしかできなかった。発砲した2回ともこちらに向かって駆け降りてくる状況。しっかりとこの状況を苦手意識として植え付けられてしまった気がする。とはいえ、狩猟に関する知識や体験は着実に重ねられている実感があるので、来期に貯蓄をした感覚もある。
冴えなかった巻狩と反比例するように存分に楽しんだのが鳥撃ち。まあ猟果は相変わらずしょぼいんだけど、今更キジバト、ヒヨドリを夢中になって追いかけた。MSS-20でマガモ、カルガモを獲ったけれど、相変わらずカモをおいしく食べるのはなかなか難しい(スープは間違いなく旨い)。マガモは間違いなくおいしいけれども、カルガモは「……ん?」となる匂いを感じる。それは散弾で獲っているからかもしれない。
ということで、やはり鳥はエアライフルで獲った方がおいしいお肉になるし、おもしろい。そしてキジバト、ヒヨドリは塩焼きでまちがいなくおいしく食べられる。羽毟りもカモに比べればとても楽ちんだ。
今更ながら先輩猟師にキジバト、ヒヨドリがよくいる場所や時間などのあれこれを聞きまくり、自分が池や川、田んぼなど、下方向しか観ていなかったかことを思い知らされた。目線を上げればキジバト、ヒヨドリはそれなりの頻度で見つかる。タイミング良く食事タイムに遭遇できたら近づいても逃げないことが多い*1。近づけたら射撃がうまくない僕でも中る確率は高くなる。
ただ、狙いやすいからといって回収しやすいわけではない。残念ながら回収できなかったことが何度かあった。やはり撃つ前に回収できる可能性にも思いを巡らせるべきだし、落ちた時は喜ぶ前にどういう状態でどこに向かって落ちたかをしっかり観察しないといけない。慌てて落ちた場所に向かうと、探す範囲の特定でが難しくなる。狩猟も8期目だというのに、こんな初歩的なことも知らなかったことは反省しかない。
「獲る」ことにかけてはここ数年学んだことが結果に結びついていない。でも、獲物の利活用に関しては、やりたいと思っていたことに少しずつ挑戦できるようになった。猪の腹脂で作ったハンドクリームやラードは、それなりに上手くできたし、その効果や味はさておき日常生活に役立っているという雰囲気がうれしい。今期もヌートリアを食べるために獲ったけれど、皮鞣しに挑戦するためサイズは少し控えめなものを狙った。塩漬けにして冷凍にしているので、時間に余裕ができたら挑戦する予定。
前期から率先してやらせてもらっている猪の皮剥、解体はかなり成長したと思う。皮剥ぎの時間もかなり短縮できてきたし(それでもまだまだ時間はかかっているけれど)、解体は「ここはどうすれば?」という迷いがほぼなくなりつつあり、それは時間の短縮と納得いく仕上がりにつながっている。
そして今期のハイライトは「捌いた肉をその場で喰う」という猟師っぽい行為の体験。僕はもともと食に対する衛生観念はさほど高くはなかったけれど、自分で生き物を食べ物にする過程を経て、格段に高まった*2。だから血抜きや皮剥ぎ、解体で肉を汚染させる行為は絶対にしたくないと思っている。とはいえ、趣味の狩猟でできることには限界がある。だからできる限り気をつけてはいるけれど、気になる点もまだまだたくさんある。だから、肉をその場で焼いて喰うなんてことあっという間に「もうええかリスト」に放り込んだ。でも、やってみるとこれがまあおいしい。旨い。自宅では手に入らない炭火の効果が一番大きいとは思うけれど、ワイルドな状況は猟師の特権ではあるし、テンションもあがる。塩コショウにレモンを絞っただけで、疲れた体に活力がみなぎる。これは猟師なら経験しておいて損はないと思う。というか体験しておかないともったいないかもしれない。クズ肉やちょっといい部位を少しだけバットに分けておき、全てをきれいに片付けてから、その肉を焼いて食べる——なんてことをするためにも、もっと手際良く綺麗に解体できるようになりたい。まあでも、年に1〜2回で十分だとは思う(笑)。
大物を一人でお肉にまでできる自信はついたので、来期は久しぶりに単独忍び猟にも挑戦したい。一人で鹿、猪を仕留めて、現地で皮剥をして大バラシをして、自宅で落ち着いて精肉をすることは、狩猟を始めた当初からの目標だ。巻狩に参加させてもらったおかげで獲った後にすべきことはわかったし、一人で獲った時に(できるだけ)衛生的に皮剥、大バラシする方法も頭の中で試行錯誤できるようになった。来期は是非ともその妄想を実行して、検証してみたい。