野生のシカの群れに初遭遇
2018年度 9回目の出猟
昨年の出猟回数は13回。実際はもう少し出猟できたはずだった。猟場に行けばほぼ確実にカモやキジに遭遇するので楽しいのだが、捕れないのはやはり悔しいし、哀しい。そんな日々を重ねているうちに、早起きしても「寒いな」「眠いな」と思いながら布団の中でぐずり、そのうち『山賊ダイアリー』の主人公の狩猟仲間であるマサムネくんの名言「いたって どうせ獲れねぇよ……」という声が聞こえてきて、あっさり納得してそのまま寝てしまったことが何度かある。
今年は獲れる予感に満ちていたり、実際にカルガモを獲ったせいか、今の所マサムネくんの声は聞こえてこない。
家を出た時は寒さを感じなかったが、猟場に着くと霜が降りており大変寒い。うっすら霧もかかっていて、薄暗い。間違いなく今期一番の冷え込み。しかしその雰囲気のせいか、いつもより静かで気分が盛り上がる。
山中池に到着。地面が湿っているおかげで足音も小さい。ふと後方に気配を感じて振り向くと、白いブリーフのようなものが山の斜面をぴょーんぴょーんと駆け上がって立ち止まった。
「……シカッ!」と思って立ち止まると、もう一頭が左から出現。先を行くシカが3歩、というか、3跳びしては立ち止まり後ろの一頭を待つ。それをを繰り返しながら急な斜面を駆けて行く。100mは離れていると思うが、立ち止まるたびにこちらを伺っている。二頭はペースを乱すことなく駆け上がり、そのうち見えなくなってしまった。
ここはまだまだ山の入り口で麓に民家もある。足跡や糞は見ていたので獣が出てきているのはわかっていたが、実際人の生活圏で獣を目の当たりにすると、やはり驚く。寒いうえに霧のせいで薄暗いので、シカもいつもよりゆっくり行動していたのかもしれない。
獣の行動時間がいつもより遅いなら、もしかするとイノシシ、ひょっとするとツキノワグマも……とビビりまくる。イノシシが掘り返したような痕跡はよく見るし、何かに引っ掻かれた木も見たことがある。基本的に野生の動物は人と出会ったら逃げ出すそうだが、子連れで気が立っているイノシシなどは向かってくることもあるそうだ。
とにかくエースハンターでは大変心細い。カスタマイズしたのでシカやウリ坊の止め刺しに使えると聞いているが、さすがに自由に動けるシカをエースハンターで仕留めるのは無理だ。下手に手を出すと逆上したシカに角で突き殺されたり、蹴り殺されそうな気がする。ナイフを取り出そうかと考えたが、慣れない道具を振り回すのも危ないで、お守りがわりに携帯しているクマスプレーを忍ばせ、改めて池に向かう。
水面を覗くと、一面真っ白。凍ってはいないが水蒸気が立ち込めてほとんど見えない。念のため双眼鏡で覗いてみたが、やっぱり見えない。いつも逃げられる原因となっている、土手での仁王立ちをしてもなにも出てこない。
さらに奥にある池(奥山池)を目指して歩いていると、左前方から物音。直後にシカが飛び出してきた。さっきより近いが、それでも80mほどの距離はある。先ほどより警戒度が高く、立ち止まることなく一気に急峻な斜面を駆け上がっていく。同じ場所からもう一頭が後を追う。さらにもう一頭。全部で三頭。先行しているシカが逃げた方から鳴き声。仲間に警告しているような声だった。
万が一に備えてエースハンターを準備。断続的に鳴き声が聞こえてくるが、姿は見えない。そしてなんというか、気配が消えない。どうも見られているようで落ち着かない。しかしこちらに勝ち目はないので、予定通り奥山池に向かう。
シカが走り回った直後なのでなにもいないだろうと思ったが、コガモの群れを発見。まだこちらには気が付いていないようなので、50mぐらいまで近づきペレットを装填。膝射で狙いを定めて引き金を引くが、コガモの右手前に着弾。コガモは一斉に飛び立ち、シカの気配も消えていた。
いつもなら落胆しているところだけれど、シカを目撃したことで妙なテンション。改めてシカが駆け上がって行った斜面を見ると、斜面というより崖。こんなところを駆け上がる勢いで体当たりされたら、吹っ飛ばされるのは間違いない。怖い。これからはある程度こちらの存在をアピールした方がいいかもしれない。
たった數十分の出来事で、どっと疲れた。でも、体験してみたかったことなので、心地よい疲労感。いつか自分でシカ肉を手に入れたいと改めて思った。
今回コガモを撃ち損じたことで、渋々レンジファインダーの購入を決意。獲物との出会いに恵まれている割に、捕獲率というか命中率が低すぎる。今まで目測で距離を判断していたけれど、排除できる不確定要素はなりふり構わず排除することにした。いつかは目測でも獲れるようになりたいので、レンジファインダーの助けを借りて、目測の精度を高めていきたい。