
テンカラの仕掛け巻きをクリップで自作
テンカラのシンプルさを損なわない工夫
不便を解消してくれそうな道具を見つけて「欲しい!」と思っても、「アレをこうすれば同じようなものを作れるのでは?」と考えてしまう。買えば簡単確実に不便が解消されるのに、思いついたアイデアは実現可能なのか試したい欲を抑えられない。そのアイデアは大抵役に立たないけれど、その結論に至るまでの試行錯誤が大変楽しく、本来の目的を忘れ、思いついたやり方でイメージした道具を生み出すことに夢中になってしまう。
そうして生み出した道具の大半は、数回の使用で欠点が目立ち、既製品の素晴らしさを再認識する。どれを買おうか物色しているうちに、また新たなアイデアが……ほんと我ながら生粋の工夫貧乏だと思う。そんな僕でも、「これは……良いッ!」と思えるものを作り出すことがある。その一つが、テンカラの仕掛け巻きだ。
テンカラに仕掛け巻きはあった方が良い理由
渓流、源流でルアー釣りをしていてもロッドを「畳みたい」「畳んだ方がいいかな」と思う状況はあまりない。ロッドは長くても5.6ft(約1.7m)程度だし、多少歩きづらい状況でもフックをフックキーパーなどに引っ掛け、リールでラインを巻き取りテンションをかけておけば、そこまで邪魔には感じない。
一方テンカラは基本とされる竿の長さが3.6m。僕が持っている最も短いテンカラ源でも2.4m。長い。「……(念のため)竿畳むか」と思う状況はルアー釣りに比べると圧倒的に多い。
少しの距離なら穂先がしなる程度の軽いテンションをかけて、ラインはグリップでまとめれば対応できる。でも、3m前後の竿の取り回しは山の中ではかなり気を遣う。ラインは草木に絡むし、足元も悪いので結果的に移動速度が落ちる。竿を畳む時間を惜しむより、畳んで歩いた方が安全だし速い。大抵のテンカラ竿は振り出し式なので、畳むのなんて数秒しかかからない。ただ、リールがないのでラインの処理が面倒。適当に束ねたら大抵絡まるし、手の自由を奪われて危ない。ということで、仕掛け巻きはあった方が断然快適にテンカラを楽しめる。
それでも邪魔な“仕掛け巻き”
「テンカラ 仕掛け巻き」で検索すると、リーダーのスプールみたいなものと、竿に取り付けるタイプの2種類が見つかる。スプール状のものは工夫貧乏じゃない人でも「買わなくてもスプールで代用できそう」と思うだろう。工夫貧乏である僕はもちろん空のスプールに工夫を加えて使ってみた。でも、僕はこのタイプの仕掛け巻きを便利だと感じなかった。仕掛け巻きを安定させる必要があるからだ。刀の鍔みたいにしても仕掛け巻きは不安定で持ちにくい。この手の仕掛け巻きは、釣りをしている最中よりも、釣りを終えてラインを竿から外して保管する時がピッタリだと思う。

竿に固定するタイプは良さそうだと思ったし、多分きっと便利だと思う。でもカラフルすぎるプラスチックの主張が強い。テンカラ竿に似合わない。そして、シンプルなテンカラという釣りに、道具が追加されるのも気に入らない。便利な道具だとして、持っていくのを忘れる、あるいは釣行中に落とすと、自分へのがっかりと不便の再来でイライラするだろう。
やっぱり道具を追加したくない。「要は竿のどこかに引っ掛けられたら……」と思いながら愛用のテンカラ源300を眺めていると、尻栓にラインを引っ掛けてくださいと言わんばかりの溝があるのに気がついた。

尻栓に切り込みがある場合(テンカラ源など)
試しにラインを引っ掛けてみると、しっかりとはまる。もう一箇所どこかにラインを引っ掛けられたら、竿自体が仕掛け巻きになる。細めの結束バンドを元竿の一番下(グリップのすぐ上)に巻いて使ってみると、すこぶる快適。ただ、竿は穂先に向かってテーパーしているので、上方向の力が加わると結束バンドがずれる。それに引っ掛けるだけにしては大きい。もっさい。
あれこれ考えているうちに市販のフックキーパーを知り、「これやん!」と喜び購入しそうになったんだけど、ここまで工夫できたからには市販品の助けを借りるのは最後の手段にしたい。そこで安価で加工が容易なクリップで試行錯誤することにした。
まず、クリップを切断してU字にする。それを2回折り曲げ、毛鉤作成用に買ったスレッドを巻き付け元竿に固定。ある程度巻き付けたら、解けないように自己癒着テープを巻き付けて完成——なんと試行錯誤することなく完成してしまった。

実際の釣行で使ってみると、ニンマリご機嫌な使い心地。竿を畳み、リリアン、またはラインだけを出して上栓で抑える。少しテンションをかけながら巻きつけて、最後はグリップのどこかに毛針を刺して固定すれば、ラインは解けない。追加の道具を取り出す必要もないので、移動中だけでなく休憩や写真撮影など竿を畳んだ方がいい状況で、「めんどくさいな」とならない。
巻き癖はしっかりつくけど、そこをしっかり伸ばせば癖は取れるので、全体的に緩くマキグセがつくスプールよりも、僕はこちらの方が性に合っている。

尻栓に切り込みがない場合(郡上テンカラ、スーパーテンカラなど)
この仕掛け巻きを付けた釣行は期待以上に快適で、残りの竿にも導入を決意した。ところが、宇崎日新の「スーパーテンカラ」の尻栓には溝がない。しかも金属。溝を削っても綺麗に仕上げないと引っ掛けたラインが痛んでしまう。それは“ちょっとした工夫”の域を超えてしまい面倒くさくなってしまう。

ということで、再びクリップを活用。切断したクリップを1回折り曲げハの字に開いて調整し、尻栓で押さえ込んでみる——完成。これまた一手間の工夫で完結し、めちゃくちゃ満足。

この仕掛け巻きは延べ竿全般におすすめ。固定の仕方も毛鉤巻きの応用っぽいので、テンカラ竿にはより似合う気がする。若干、ほんとに若干気になるのは、クリップのギンギラ。次この仕掛け巻きを作る時は、クリップを黒にしてもいいかもしれない。
ニトムズ 自己融着テープ
毛鉤作りにも使えるし、テンカラをするなら持ってて損しない一品。無くしがちな口栓を自作する際の微調整にも使える。毛鉤巻きや仕掛け巻きだけで使うなら、再購入は数年先になるので、とりあえず買っておいて損はしないと思う。
購入時の価格 ¥504
