工夫の減さん
工夫が好きなやつ、必読

初めて『権現の踊り子』を読んだ時、タイトルにとても魅かれたのは覚えていたのですが、内容は一切残りませんでした。その後読み直すこともなく、たまに「逆水戸」のみを読んでは笑い転げる日々でしたが、久しぶりに全編を読み直し、「工夫の減さん」の素晴らしさにやっと気付きました。
良かれと思って工夫ばかりして、事態をより悪化させてしまうどころか、他人に迷惑をかけ続けているおっさんの物語。たまらなく切ない。こういう状況は、程度の差こそあれ誰しもが経験してると思います。

博奕で身を滅ぼしたとか女でしくじったとかいうのは聞いたことがある。しかし工夫で身を滅ぼしたというのは聞いたことがない。

工夫の減さん – 権現の踊り子

工夫して良い結果が出ればいいですが、現実はそううまくいきません。工夫することはそれなりの大変ですし、努力も必要なので、結果がうまくいかなくても自分を納得させることはできます。それを繰り返すうちに工夫することが目的になり、結果は二の次になることはよくある話です。その究極が工夫貧乏。工夫する理由、工夫する楽しさ、工夫する喜びが全ての目的をぶち壊し、工夫すればするほど悪い状況を呼び込みます。ちょっと大げさすぎますが、僕もそんな工夫貧乏の一人なので大変笑わせてもらいました。

昔は言葉の勢いで笑いを誘って物語に引き込み、ふんわりとラストを迎えていたと思いますが、この物語のラストはかなりいいです。切なくて哀しくて、そこはかとなくハードボイルド。かっこいい。この物語には、人生の滋養になる大事な何かが書かれていると感じます。それがなにかはまだ、わからないのですが。

読書 /

Text by pushman