雪に埋もれた猟場

積雪の中の出猟
2018年度 15回目の出猟

数日前から「今期一番の寒気がやってくる」と言われていた通り、極寒の朝を迎えた。今までも何度か「今期一番の寒気」はやってきていたが、今回のそれははっきりと格の違いを見せつけるような寒さだった。そんなわけで布団からなかなか出られず、でもこんな時こそカモがいたりするんだろうなぁ……と妄想していると、「いたって どうせ獲れねぇよ……」というマサムネくん(『山賊ダイアリー』の主人公の狩猟仲間)の声が聞こえてきた。ほとんど完全に同意し、再びまどろみ始めたけれど、「でもやらなきゃ…………確実な0だ!!」という新一(『寄生獣』の主人公)の声に励まされ、奮起して出猟。

電車出猟の数少ない良い点のひとつは、車中にいる間は大変快適なこと。読書がはかどる。読みふけってちょっと疲れたなと思う頃には、だんだん空が白んできて、猟場に近づいていることがわかる。そうなると本を閉じて外を眺め、「なんかおらんかなぁ」と観察している。しかしこの日は一面真っ白。先日自転車ですっ転げた時も薄っすらと雪が積もっていたけれど、この日はあたり一面真っ白の雪景色だった。

即Uターンして暖かい布団に潜り込みたいと思ったけれど、雪の中での狩猟は経験しておきたいことのひとつでもあるし、なかなか体験できない状況なので、思う存分楽しむべきだと判断。しかし、いくらなんでも自転車は危険。前回のアクシデントで痛めた箇所はまだ痛むし、これ以上痛い思いはしたくないので、猟場まで慎重に歩いて行くことにした。

10cm以上の積雪で歩くのも大変。こんな天気なので人も車もいない。狩猟中に人の目を気にしないでいいのはありがたい。でも、自分一人というのも落ち着かない。

ようやくカル川に到着すると、珍しくコガモが川の中央にいる。いつも隠れている場所が凍りついてしまったようだ。「チャンス!」と思ったが、周囲の茂みも埋もれるほどの積雪で、安全に降りる道がわからない。川の水は落ちたら即死しそうなほど冷たそう。こんなところで死ぬわけにはいかないので、数分ボーッとコガモを眺め、帰宅を決意した。

結局雪の中を数時間散歩しただけでこの日は終了。こんな天気でも獣たちはご飯を求め、いろんなところを闊歩しており、その痕跡をいくつも見ることができたのは楽しかった。とはいえ、この日はマサムネくんが完全に正しかった。とりあえず雪の中の出猟を体験できたので、これからは猟場に雪が積もっていたら迷うことなく帰宅できる。

雪に残された獣の足跡
畑に残されていた獣の足跡。鹿かと思って辿ってみたが、防獣フェンスの下にできた小さな穴から続いていたので、小型の哺乳類っぽい。

Text by pushman

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