真夜中のプール
打ち上げ花火を下から見た少年の歌……なのかも

アルバム『俺たちのロックンロール』に収録されている曲で真っ先にひっかかったのは、シングルでも発売されている『真夜中のプール』でした。たしか歌詞カードも広げず、なにかの作業をしながら聴いていたと思うのですが、この曲が始まってしばらくしてからちょっとなにか落ち着かない感じがしたんです。歌詞カードを広げながら聴き直すと、鮮烈にある映像を思い出しました。

岩井俊二の最高傑作「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」です。

パクっているとかインスパイアされているとか言いたいんじゃなくて、繋がっている世界観が猛烈嬉しかったんです。なんでシングル発売の時に気付かないかなぁ、と自分にがっかりしたほどです。もちろん僕の勝手な解釈なんですけど。

『真夜中のプール』CDジャケット

昔の恋人が結婚するという話を聞いて、過ぎ去った過去を振り返る……というモチーフは特に目新しくないないんですが、良いです。やっぱり。それだけ普遍的にある情景なんでしょう。

昔好きだった人への想いは、ふとしたことで喚起されることがあります。その想いは、こっぱずかしい気持ちやなんともいえないあたたかい気持ちと共に、自分が過ごしてきた時間の重み、その時にわからなかったこと、いろんなことを引き連れてきます。それら静かに向き合っていると、だんだんと今すべき事、失ってはいけないものが見えてきます。

過去の思い出に浸ることはなんとなく自分が弱っている感じがして、いかんいかんと焦っていましたが、弱っていても別に悪い事ではないと思えるようになりました。自己正当化する力を身に付けただけかもしれませんが、歳をとるといいこともたくさんあるんです。

真夜中に飛び込んだプールで
服のまんま泳いだ夏
君は覚えている?

真夜中のプール

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』を好きな人なら、この歌詞から反射的に典道となずなの別れのシーンを思い出すはず。そして、なずなが結婚することを知った祐介が、典道にそのことを伝えたんだなと勝手に解釈して、より切ない気持ちになるはず。
僕はなりました。
そして、「なんで同じキャストでPV撮らないんだよ」と勝手に苛立ったりもしました。

全く関係ない作品が(自分の中で)繋がるのは、小確幸のひとつです。片方の作品で描かれなかったことが、もう片方に描かれているような関係になっているので、どちらかひとつしか知らない方には、知らない方の作品にも触れて欲しいです。

真夜中のプール

斜に構えたり、カッコつけすぎたりしない、斉藤和義らしいストレートで優しい曲です。

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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