走る鹿にMSS-20で二の矢を撃つ
ミスした時こそ平常心で

待ち場で犬の鳴き声を聞いている間は、「来るかな……」と不安混じりの期待感でいっぱいになる。でも大抵の場合、そう思っている間はなにも起きない。実際に獲物が現れる時はそれまでとは違う音や空気を感じ、「……ん?」と緊張感が高まり、「これは来るわ」と確信する。
今回も音が変わって「ん?」と思った直後に「パキッ」という枝が折れる乾いた音が鳴り響くと、雑木の中から小さな鹿が姿を現した。

巻狩り中は10〜30mで発砲することが多いので、スコープの倍率は常に1倍。大抵はそれで問題ないけれど、「倍率を上げて撃っていれば中ったかも……」と思える状況が何度かあった。このまま撃てば目の前の状況を振り返った時、きっと同じことを思うだろう。今回は待っている時間が長かったので、いくつかの目印を見つけて距離を測定している。つまり、準備万端。鹿との距離は60m前後。落ち着いてグイッとズームリングを目一杯回し、6倍にセットした。

右目で鹿を捉え、据銃。……自分が何を見ているかさっぱりわからない。少し動かしてみたけれど、茶色の視界に斜線が走り回るだけ。そんな状態で「これが鹿だ」と判断できるわけがない。6倍の視界を侮っていた。銃を下ろして肉眼で鹿を再確認しながら、スコープを1倍に戻す。淡々と書いているけれど、実際にはわりと結構焦った。

約30m先の鹿に向けて発砲する直前
一発目を撃つ直前。距離は約30m。ちゃんと据銃できている場合はこれぐらい銃が映り込む。(GoProの動画から切り抜き)

頭の中は「ミスッた!」という意識でいっぱいのまま、立ち止まった鹿をスコープで捉える。距離は30mぐらい。頭が見えたら撃つと決意……するやいなや頭が見えたので引き金を引く。が、全く手応えがない。鹿はこちらに向かってくる。
肩付けはそのままに頬付けだけを外し、鹿を目で追いながら排莢、次弾装填。鹿が死角に入ったので出てくるタイミングを見計らっ……たはずが、タイミングをずらされて「ん?」となった瞬間に姿を現わし、完全に遅れて発砲。もちろん中るはずなく、鹿は颯爽と駆けて行った。

人に気がついて驚く鹿
僕からは鹿が見えていなかったけれど、鹿が僕に気がついた瞬間。めちゃ驚いた表情をしている。バッチリ鹿にピントを合わせてくれたGoProに感謝(合成みたいに見えるけれど)。(GoProの動画から切り抜き)

二の矢もちゃんと据銃して撃ったつもりだったけれど、動画で確認すると二の矢は頬付けせずに撃っていた。つまり、スコープを通さず、獲物と銃口と右目を一直線にして撃ったようだ。かなり上を撃っているのはそのせいだと思う。スキートのダブルに比べたら時間の余裕は十分あったし、排莢、装填がスムーズにできただけに、しっかり据銃していれば……と悔しくてたまらない。しっかり据銃していても遅れすぎなので、中っていたとしても多くの過食部が損なわれたはず。中らなくて良かった……と自分を慰めている。

急転換しながら飛び出した鹿
二発目を撃つ直前。地形や木のせいで僕の目線から1秒ぐらい姿を消し、突然飛び出してきたので銃口が追いついていないし、ちゃんと据銃できていないので上の方を撃っている。(GoProの動画から切り抜き)

スコープを6倍にするまではいい感じで落ち着いていたのに、それ以降は焦り倒してしまった。あの距離で6倍にすると据銃した時にスコープで捉えるのは難しい。2〜3倍で十分だった気がする。6倍にするなら、まずは1倍で獲物をしっかりとスコープで捉え、そのまま拡大すればよかった。1倍にした後も撃つのが随分早い。中っている時はもう少し引きつけているのに……

今回は最初の判断ミスを引きずり、その後もミスが連鎖発生してしまったけれど、動画のおかげで全てのミスを反省できた……と思う。次に二の矢をかける機会が楽しみになった。まあそもそも……初矢で仕留めるべきなんだけど。

記録動画

動画で見直すと、獲物との遭遇や発砲がとても短い時間の出来事だとよくわかる。その短い時間の中でいろんな情報を処理して、思考して、行動していることに、我ながら驚く。

GoPro HERO9 Black

狩猟中に予期せぬ出会いがあっても写真はまず撮れないので、GoProで録画し続けている。獲物に向けて発砲した場合には振り返りができて便利。特に中らなかった時はその原因を確認できてありがたい。

購入時の価格 ¥63,800

Anker PowerCore 10000 PD Redux

GoPro純正バッテリーでは1時間前後しか持たないので、長時間撮影する時はこれを接続している。面ファスナーを貼り付けてヘッドマウントに固定しているけれど、200gを切っているのでそれほど気にならない(邪魔ではある)。

購入時の価格 ¥3,439

GoPro対応ヘッドマウント

色々なマウントを使ったけれど、狩猟の雰囲気を記録するなら一番マシだと思う。銃に取り付けるタイプは持ち運びに気を使うし、全体の雰囲気が伝わりにくい。

購入時の価格 ¥792

What’s so bad about feeling good?

Text by pushman

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