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伝えたいことが伝わらない寂しさ

活動を停止せざるを得なくなる直前の作品で、「万事快調」「恋愛依存症」「ロシアの山」「お散歩」という4つの短編が収録されています。1回読んで「なかなかいいな」となぜか偉そうに判断したのですが、ちょっと時間を空けて読み直したら、姿勢を正して謝りたくなりました。むちゃくちゃ素晴らしい作品です。

4つの物語どれもおもしろいですが、「万事快調」が頭一つ抜けておもしろい。父親はすでに亡く、母親は若い男と駆け落ちしてしまった3人姉弟(女女男)のお話です。長女は家族のために遊びも控えて、彼氏もつくらず、一所懸命頑張っていますが、それも実は自分自身のため。次女は姉のようにはなりたくないと願い、自由に遊びながら、様々な問題を抱えていきます。一番下の弟は2人の姉の役に立ちたいと願いながら頑張ってはいるのですが、逆に心配をかけています。それぞれの立場から物語は進んでいくのですが、「生きていくのってややっこしいなぁ」ということが骨身に染みて、自分が見ていることなんて、ほんとに極々小さな出来事のさらにその一部だということがわかります。そのような出来事からなにかを感じて、誰かに伝えたいと思うことがありますが、「一番伝えたいことはうまく言葉にできない」ということも痛感させられます。

僕はこのブログに好きなものへの想いの丈を書きなぐっていますが、書いてるときは気分良く「頭の中で思っていることを言葉にできている」と感じても、後から書いた文章を読み直して「……意味がわからない」と思うことが多々あります。書きながら「こんなことを書きたいんじゃない!」と苦しむことも多いです。今まさにその状態ですが、うまく言葉にできないからこそ伝えたい気持ちってありますよね。「こないだおもしろいことあってさぁ……」と話をしても誰にもおもしろさが伝わらず、「その場にいたら絶対笑えるのに……おもしろいのに……」みたいな哀しい気分。……これまたちょっと違うんですが、この物語はこういう伝えたいことを正しく伝えられないもどかしさ、寂しさなんかをとてもうまく言葉にしてくれてます。

最後の「お散歩」がまたいいです。やるせないっす。読んでよかった。こういう感覚を、きちんと感じられてよかった。ってな具合に、ちょっとだけ自分に甘くなれる物語です。頑張りましょう。

2004年11月28日(日)

読書 /

Text by pushman