ポテト・スープが大好きな猫
猫が好きな大人のための絵本

猫好きで村上春樹好き。という人は、かなりの数にのぼると推察いたしますが、そんな人なら買わない理由が見つからない、とてもすてきな絵本『ポテト・スープが大好きな猫』。生粋のテキサスっ子であるおじいさんと、ねずみ一匹捕れないやせっぽちな雌猫の、温かい日常を描いた物語です。

大人のための絵本。って書くとなんか桃色絵巻を想像しそうになりますが、これはそういった類いの絵本ではありません。小難しかったり、理想的な生き方に気づかされるわけでもありません。とてもシンプルで平和な絵本です。でも、小さい子どもがこの絵本を楽しめるのかちょっとわかりません。なにかでっかい事件が起きるわけではないので、退屈してしまうような気がします。でも、小学生高学年ぐらいから、なんとなく物語の雰囲気を感じられるような気がします。「おもしろくないわけじゃないんだけど……」みたいなかんじでしょうか。それに大体、それぐらいの子どもって絵本なんて読まなさそうです。まあつまり、結局、大人のための絵本ではないけれど、大人が楽しめる絵本になると思います。

僕はそれほど絵本を読んだ覚えが無いので絵を楽しむことをついつい忘れしまうのですが、絵本ってほんとに良くできてますね。おじいさんが得意のポテト・スープを作っている時の自慢気な顔と、「気に入っているのに、そんなそぶりは見せない」という文章で、人柄がよくわかります。この時の表情はほんとにいいですよ。わざとらしい表情なのですが、確かな自信を感じられる。多分こういう表情はほんとに大切な、特別な人にしか見せることはないでしょう。ここの描写は絵と文章の組み合わせが素晴らしいです。

おじいさんもいいですが、主役はなんといっても猫の方です。この歳とった雌猫は、これといった特徴はありません。すこしやせっぽちで、おじいさんのポテト・スープが大好きなだけです。でも、これまでたくさんの猫と暮らしてきたおじいさんは「けっこう気に入って」います。この猫、ほんとにふつうの猫で、猫と生活した人なら「そうそう」と頷くことがたくさんあります。猫は「冷たい」「自分勝手」とよくいわれますが、全然そんなことはないんですよね。「恥ずかしがり屋」「天の邪鬼」が正しいと思います。僕は雄猫と一緒に暮らしているのですが、こいつはほんとにさびしがりで天の邪鬼です。名前を呼んでも耳しかこっちに向けませんが、いつの間にか足下にいたり、朝は必ず僕のお腹の上で寝ています。寝ころんでテレビを見ていると、僕の腕を枕に寝てますし、イスに座れば膝の上に飛び乗ります。そのくせ抱きかかえたりしようものなら飛び出します。はっきりいって完全に手玉に取られているわけですが、このように猫はちゃんと人間のことをわかっているんです。けっして恩知らずでバカな動物ではありません。

とまあこのように、猫好きが読めば猫のいいところを再確認でき、猫と暮らしたことが無い人は、かなりリアルな猫生活の一端を垣間見ることができます。そして、そんな人はいないと思いますが、「猫はあまり好きじゃない。というか嫌いだ」という人は、「ふ〜ん」ってな顔をしながら、「猫ねぇ……」と想いを募らせることになるでしょう。

2006年01月21日(土)

読書 /

Text by pushman