ノルウェイの森
読みかえせば読みかえすほど面白い

村上春樹作品を全作品で読み返すシリーズもようやく第6巻『ノルウェイの森』。この作品が村上春樹の作品の中で一番好きです、とは言いませんが、この作品がなければ他の作品を深く(個人的に)理解出来なかったと思います。

小学校の5、6年生の頃にやってたテレビ朝日の「花金データランド」という、その週の映画や書籍などいろんな商品の売り上げランキングを集めまくった番組で、毎週この物語の名前を聞いていました。当時も本を読むのは好きでしたが、歴史小説や『ゲームの達人』なんかを読んでました。もちろん『ノルウェイの森』も読みたいと思ったのですが、友達に「ゲームの達人みたいな話とちゃうらしいで」と言われて「じゃあやめよう」と思ったのを鮮明に覚えています。そして、その時に読まなくて良かったです。二十歳の頃に読んで本当に良かったと思います。猿のようにギャアギャア騒ぐ事が一番楽しかったあの時代に、この物語を受け入れる事などできないです。そんなことする小学生でなくて良かった。とにかく、物語には「読むべき時」が確かにあると実感しました。

全作品シリーズ最大の特典である「自作を語る」ですが、今回はすごく良かったです。村上春樹が考えていた事と、現実のギャップなどが率直に語られています。

この物語の感想ですが、「とにかく僕は、この物語が好きなんです」とダラダラ長文を書かなくても、主人公であるワタナベ君が寮の先輩である永沢さんに『グレート・ギャツビイ』の感想を聞かれた時の返事を引用するだけで事足りてしまいます。

通して読むのは三度目だが読みかえせば読みかえすほど面白いと感じる部分が増えてくる。

『ノルウェイの森』

通して読んだ回数は覚えていませんが、いつ読み返しても新たな発見があります。物語が持つ力はもちろんですが、心に残る言葉が多いのも何度も読み返せる物語になる条件の一つだと思います。主人公のセリフや考え方だけでなく、登場人物達が必死にあがきながら生きようとして(そして多くの人は打ち勝てない)、心からでてくる言葉の重さに驚きます。ちょっと大仰な言い方になりますが、一人の人間の中にこの様な物語が内包されている事に畏怖の念を隠せません。まっとうな道を少しばかり踏み外している(様な気がする)僕としては、せめて「自分に同情しない」で生きていければな……と思います。

村上春樹が「良い小説」の条件としてこんな風に書いていました。

「ふと思い出して、ページをめくってみて、気がつくと最後まで読んでしまうような小説」

村上春樹の小説は、僕にとってそんな小説です。

2004年08月22日(日)

読書 /

Text by pushman