じみへん たたき売り
つまらない会話を拡げる方法

いつ発売されているのかさっぱりわからないのですが、中崎タツヤさんの新作『じみへん たたき売り』が発売されていました。常にチェックしているわけではないのですが「そろそろなんか出てないかな?」と思って作家別の棚の「ナ行」のコーナにいくと、いつもぽつんと目立たずに置かれています。テレビでアニメ化されたこともありましたが、最近は連載も減っているのでしょうか。何も変わらないままで相変わらずおもしろいんですけどね。

基本的に見開き2ページの15コマ漫画。今よりもうちょっと人気があった時期がありまして、その期間はなんと4ページも使っていた時があります。でも、やはり中崎タツヤさんには2ページが合っていたようで、すぐ元に戻りました。ちなみに最近では15コマ漫画でもなくなり、15コマ使って複数の話を書いたり好きなように書いておられるようです。

『じみへん たたき売り』単行本

僕は中学生の頃から愛読しているのですが、ほんとに変わっていません。よくもまあここまでネタにもならないようなネタをこねくり回せるのだと感動すらします。どうでもいい話はもちろん、たまに物事の本質をついた風なちょっと考えさせられる話まで、いろんな種類のお話があるのですが、たまにほんとに意味不明なものがあったり、それもひっくるめて飽きません。

しかしどこがどうおもしろいのかを伝えるのはちょっと難しい。ほんとどうでもいい話ばかりですし。「友達だけで通用するアホな会話」が一番しっくりくるかも。適当に思いついたことを話して、嘘でもデタラメでも使えるものはなんでも使って、その話をできるだけ大きく広げるおもしろさ。一例を上げます。

「諜報機関に風の男二人の会話」

A:
なんか話してくださいよ

B:
原子力発電所の機械を動かしている電気はどこから来るんだろ

『じみへん たたき売り』

「暇で暇でしょうが無い夫婦の会話」

夫:
ヒマだなあ

夫:
他人のよけいな心配でもしてみるか

妻:
アホや

夫:
そうよなー
となりの和田さんとこの娘にピアノを教えに来る
ピアノ教師の心配をしてみるか

妻:
30歳ぐらいの女の人ね

夫:
週1回だから月4回として月謝いくら取ってるんだろ

妻:
2万はとれないでしょ…

『じみへん たたき売り』

こんな会話ばかりです。たまに「人生って何?」「宇宙の真理とは?」という興味深いテーマもあります。冗談抜きで「なるほど」と思うことも、結構あります。古本屋だと100円で売られていることがあるので、見つけたら是非読んでみてください。

じみへん たたき売り

どこから読んでも本当におもしろいです。

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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