DEADMAN
同じ内容と言われる物語の中で一番おもしろい

『DEADMAN』いいですね。江川達也さんの隠れた名作だと思います。吸血鬼ものです。『“全身漫画”家』に書かれていましたが、この時期はアシスタントが大量に抜けてしまったことで手が足りなくなり、背景を描くことを放棄したそうです。
それってどうなんだ?と思わないでもないですが、「その分作品のダークな雰囲気がに凄みが増した」というのは、そのとおりかなと思います。

昭和51年、春。県立麗鵬高校に入学した、英吉利斯帰りの男“伯爵”こと黒澤龍一、趣味は人間観察。その彼の怪しい雰囲気に、周りの人々は異様なものを感じ始める。伯爵の不思議な力は、彼に興味を持つ者を虜にし、教室をも徐々に支配していく…。伯爵の狙いとは!?

『DEADMAN』第1巻

江川達也さんの作品には「どれも同じ内容ばかりではないか」という批判がついて回るのですが、確かにそれは否定出来ないと思います。
この作品もデビュー作の『BE FREE』とかなりの部分がかぶっています。『方丈記』の「ゆく河の流れは絶えずして……」も引用されてますし、ラストシーンははっきりいってほとんど同じです。
でも僕はこういう作家が好きなんですね。なんかいいじゃないですか。もちろんまったく同じ物語ではつまんないですが、一つの真理(みたいなもの)を描くためには、様々な方法を使って、あらゆる角度で物事を眺める必要があるでしょうし。もちろんそうしたところで、真理は簡単に見つかるはずもないし、描けるわけでも無いわけで……でも、少しは近づいていけるような。

大抵の江川達也作品がそうであるように、この漫画も電車で読めません。女性器がもろに描かれているからです。
ただでさえエロ漫画すれすれの画を描くのに、この作品では描く場所さえ選べば性器を描いてもかまわない(のか?)という目からウロコの考えを実践し、もうとんでもない画が次々出てきます。僕はこの作品を電車で堂々と読む事は出来ませんでした。

主人公「黒澤龍一」は相当いいです。『火の鳥 未来編』にも死ねない男が出てきますが、古今東西の権力者達が欲した「不老不死」の現実って、こんな感じだろうなぁ、と両作品とも感じさせてくれます。
「黒澤龍一」は完全な傍観者となり、冷静に地球の歴史を見つめて人間観察に徹します。そこで見えてくる人間の本質は、まあ当たってんだろうなぁ、と哀しく同意せざるを得ませんでした。何千年生きても変わんねぇなと。むしろ悪くなってるぞと。この手の話はいろんな作家が描いてきたわけですが、そこから感じる共通点は「人間ってのはやっぱり変わらない、変われない。でも……希望を捨てるほどバカではない」という感じでしょうか。

江川達也さんって、いささか偏った考えを持っているなぁと思いますし、説教くさいところも増えてきたように思いますが、この物語はエンターテイメントとしても楽しめ、メッセージ性も高く、おまけにエロいのでおすすめです。

Update:

読書

Text by pushman