ミッチェル300
仕組みを理解できる機械じかけのリール

渓流釣りの釣果写真にはイワナやヤマメ、アマゴの横に、リールとロッド、ルアーが写っている。そして、川の流れなどそこにある景色が、写真の主役である魚を引き立てている。

僕もそんなかっこいい写真を撮りたくて、渓流釣りに関するサイトをよく見るようになった。当初は魚ばかり見ていたけれど、いくつかのサイトで見慣れないかっこいいリールを目にした。自分が使っているリールを始め、現在釣具屋で見かけるリールとは違う個性的な形状は、強く印象に残った。それらのリールは、カーディナル、アンバサダー、ミッチェル408といった、オールドリールだった。

僕は何かに興味を持つと、その分野の古い時代の道具を好きになる傾向がある。楽器は戦前のアーチトップやリゾネーターに惹かれるようになったし、ビリヤードのマイキューは未だにノーマルシャフトだし、装飾はハギに限る。
釣りに関しては流石に古い道具は使えないと思っていたけれど、淡水で使っている限り金属が激しく劣化することはないらしい。おまけに渓流釣りでは最新の機能なんて全然必要ないらしい。

ミッチェル300
決していい状態ではないけれど、痛みすぎてはおらず、ちゃんと使われていた道具という雰囲気が気に入った。

でも、渓流用に買ったダイワのレガリスLT2000S-XHは、軽くて巻き心地も良くて使いやすい。そして価格もお手頃。だからもうリールを買う必要は無い。まして全ての機能面で劣るオールドリールなんてもっと必要ない。
そう何度も自分を言い聞かせてはみたけれど、気がつけばオールドリールの事を調べてしまう。今は使われなくなった技術や、失われてしまった思想で作られたリールをこの目で見たい。そして自分でも使ってみたいという思いは強まる一方だった。
ある日これ以上自分の欲求に抗うことは時間の無駄だと悟り、ほとんど一目惚れしていたミッチェルのリールを買うことにした。

ミッチェルの代表的なリール「408」は見た目がかっこいいだけでなく、「プラナマティック」「スパイラルベベルギア」など機械的にもかっこいい機構やパーツが使われている。調べるほどに溢れ出すミッチェルリールの魅力。ところが程度の良い408が売られていない。そうしてサイトを彷徨ううちに「308」もいいなと思うようになり、「300」も気になってきた。
300はギアを8つも使っている。今じゃ考えられないらしい。それがかっこいい。その機構を、是非この目で見たい。408や308に比べると安いし、ちょうどオーバーホールしがいのありそうなものが売りに出ている。ということで、初めてのオールドリールはミッチェル300になった。

ミッチェル300 - 固定ガイドローラー
使用する上で一番問題がありそうなベールとラインガイド。紙やすりで削ってバフで鏡面仕上げにして……と考えるのが楽しい。

届いたリールは期待以上のかっこよさ。痛み具合も想定していた範囲内。想定していなかったのは、大きさと重さ。渓流で使い続けるのはちょっとしんどそう。でも、かっこよさが「このリールで釣りたい」と思わせてくれる。
ハンドルを回すと、今のリールとは反対方向にローターが回る。ものすごく違和感がある。でも、それがいい。そしてギアの噛み合う「ギャーッギャーッ」という音と手応え。たまらない。今のリールでは考えられない巻き心地だけど、それが道具を操っている感じを味わえる。こちらの要求にちゃんと応えようとしてくれる。そんな気がする。
ベールはメッキが剥げている箇所もあり、全体がざらついている。ラインガイドには錆が浮いている。どちらもラインが触れる箇所なのでしっかり磨く必要がある。
そして、リールフットが長くて太い。3本持っているロッドのどれにも装着できない。仕方がないのでガンガン削って、最近のリールと同じぐらいの大きさにして、全てのロッドで使えるようにする予定だ。

いろいろと問題はあるけれど、ほとんどは今のリールを基準にした場合のこと。昔はこれで釣りを楽しんでいたわけだし、見た目と仕組みのシンプルさ、かっこよさが「このリールを使いたい、使いこなしたい」と思わせてくれる。まだまだ不具合はありそうだけど、パーツが破損していない限りは自分の手でなんとかできそうに思える。そうやって使っていきたい。
カバーを開けると、内部は汚れたグリスがたくさん付着している。ヘッドの内部には砂が入ってざらざらしている。期待した通り、オーバーホールしがいがある。このリールのおかげで、オフシーズンも楽しく過ごせそうだ。

ミッチェル300 - 内部の汚れ
期待通りの汚れ具合。きれいにするのが楽しみ。

ミッチェル300

渓流で使うには少し大きい気がするけれど、これで釣りたいと思えるかっこいいフォルム。かなり安価で売りに出されているので、オールドリールデビューにぴったりかもしれない。

購入時の価格 ¥4,300

MITCHELL

ミッチェルのリールについて知りたいなら必読の本。Kindle Unlimited読み放題の対象書籍なので会員なら無料で読める。もちろん無料体験でも可。著者の竹中さんはウェブサイトでもありがたい情報をたくさん公開してくれている。

購入時の価格 ¥0

FISH and REEL[MITCHELL]

きれいな渓流魚とミッチェルのリールの写真集。見ていると自分でも撮りたくなるし、構図が参考になる。『MITCHELL』と同じくKindle Unlimited読み放題の対象書籍。

購入時の価格 ¥0

参考サイト

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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