理想のタックルで再開できた渓流釣り
2年ぶりのアマゴ、3年ぶりのイワナ、深まるコク

猟期が終わる頃、渓流釣りが解禁になる。昨年は自粛していたので、待ち待った解禁だ。行きたい場所、使いたい道具、あれやこれやと思い出したり考えたり、楽しい準備がより楽しい。

渓流釣り再開初日は解禁直後の賑わいも一段落したようで、人は多くない状況だった。放流された魚はあらかた釣られて、魚影も薄い。というか、魚の姿を見られない。でも、川の音を聴きながらキャストを繰り返しているだけで、なにかが満たされていく感覚がある。渓流釣りは魚が釣れなくても行為全部を楽しめる、素晴らしい釣りなのだ。——だが、しかし。

ヒットしたアマゴとファイト中
久しぶりのHITに慌てふためている様子。嬉しすぎて意味不明な言葉や擬音を発しているので、釣り動画を公開できる日はまだ当分先になりそうだ。

釣れなくてもいいけれど、姿くらいは見せて欲しい。魚に文句を言いたくなるぐらい、魚が居ない。僕が渓流釣りを始めた年は魚が釣れなくても魚の姿を見られない、ということはなかった。テキトーに投げたルアーを追ってくる魚を目にして「おるおる!」「来てる来てる!」と興奮することはできたのだ。
結局初日は川を歩き回っただけで終わった。釣りに行ってるのに魚の姿すら見られないのはかなりしんどい。着替えをしながらビンビン感じる疲労感。それでも楽しく、だからこそまた行きたくなるのが渓流釣りだ。数日前からの準備が徒労に終わったことなんてきれいさっぱり忘れて、道具を片付けながら「次はどこに行こうか」「あれをこう使えば快適なんじゃないか」と、気持ちは次の釣行に向かっている。

少しでも魚との出会いの確率を高めるため、次の釣行では入渓しにくい場所に行ってみた。朝早くに行った甲斐あって、その日の先行者はいなさそう。でも、数日前の足跡はある。今日もダメかなと弱気でキャストすると、珍しく狙った場所にスプーンが着水。そのまま思い描いたコースでスプーンを泳がせると根掛かり……と思ったらしっかりアマゴが喰っていた。久しぶりのことで大慌て。おまけにランディングネットを忘れて取り込みも大混乱。なんとか確保して、逃げようとするアマゴをなだめすかして撮影に成功。

2年ぶりに釣ったアマゴ
ただの記録と思って写真を撮りはじめたけれど、もっとかっこいい写真を撮りたくなって試行錯誤中。

その後も同じような場所で同じようなサイズを釣り上げ、ニヤニヤがとまらない。魚が居ないわけではなく、キャストする場所や歩き方など技術的な問題と、川の状況、そして魚とのタイミングが合わなかっただけなのだ。

釣ったアマゴとミッチェル408
同じサイズのアマゴとはいえ、同じような写真を撮っててもしょうがない。つまらない。なんとかしたい。

3回目の釣行はGW真っ只中。川は渇水で、おまけに釣り人だけでなく川遊びの家族も多く、状況は良くない。これは釣れなくても自分のせいではないと言い訳をしながら到着した中淵。流れの早い段落ちが続いた後にあり、まずめ時にはライズも見られる。ただ、淵の20m程上流で小さい子どもを連れた家族が賑やかに遊んでいる。夕まずめの前だったので、下流で粘って家族が引き上げたのを確認してから淵に向かう。

何度かキャストしても反応無し。そりゃ上流でバシャバシャ遊ばれたら魚もテンション下がるよな……と思いながら、スプーンを底まで沈めてゆっくりと引いてくると、ラインが引き込まれた。エゲリアネイティブパフォーマンスをぐっと立て、ミッチェル408のストッパーを掛けてジジジジジジ……という心地良い音を聴きながら、ラインを巻く。

3年ぶりに釣ったイワナ
イワナは横に寝かせるのが難しい。でも、こう見るとイワナは寝かせない方がかっこいいかもしれない。

サイズは小さいけれど、渓流釣りを始めた年以来、3年ぶりのイワナだった。どう考えてもアマゴ域なのでイワナと認識できず、しばらく「なんだこれ? アマゴじゃないよな……アブラハヤ?」と怪訝な顔をしていたけれど、イワナと気がついて満面の笑み。放流物かと思ったけれど、お腹が黄色いし体色もネイティブっぽいので、ネイティブもしくは稚魚放流で育った個体かもしれない。なんてことを考えられるようになったことも嬉しい。
たった1匹のこのイワナとの出会いが、それまでの疲労をチャラにしてくれて身も心も軽やかに気分良く帰路につけた。

3年前に渓流釣りを始めたのは、自分で魚を釣って食べたいと思ったからだ。それなのに2年ぶりのアマゴも、3年ぶりのイワナも、リリースする時になんの未練もなくて驚いた。
グラスロッド、古いリール、スプーン。
自分が使いたいと思った道具の組み合わせで狙った魚を釣ると、渓流釣りのおもしろ味にコクのようなものが加わるのかもしれない。

そんなことを考えながら、2年ぶりに自分で釣ったコクのある2匹目のアマゴを、塩焼きでおいしくいただいた。

エゲリア ネイティブパフォーマンス ETVS-46XUL

グラスロッドでしなやかで、スプーンやスピナーにはうってつけ……なんてことはよくわからないけれど、使いやすくてかっこいいからとても良い気分で釣りができる。

購入時の価格 ¥15,926

ミッチェル408

使いにくいと感じても使いたくなる、使って楽しいこのリールは、やっぱり渓流がよく似合う。

購入時の価格 ¥8,343

MIUネイティブ4.2g厚板

いくつかの有名なスプーンを使ったけれど、自分にしっくりくるのはこのスプーン。色は金色ベースの地味めなものが個人的に相性がいい。

購入時の価格 ¥473

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

  • Instagram
  • YouTube
  • ANGLERS