不幸な子供
不幸なんて言葉じゃ生易しいぐらい不幸

表紙からして嫌な予感のする『不幸な子供』すが、期待を裏切らない、相当猛烈不幸な子どものお話です。不幸なんて言葉じゃ生易しい。こういう状況を生き地獄というのでしょうか。しかし、読んでいる間はこちらの予想を上回る不幸の波状攻撃で、悲しみはもちろん、怒りの感情なんて起こるはずもなく、ただただニヤニヤしっぱなしでした。

裕福な家庭に生まれ、両親の愛情を一身に受け、不自由なく暮らしているであろう少女シャーロット。ある日父親が戦争に行くことになるのですが、その日から不幸な日々のはじまりはじまり。もうこの時のシャーロットの表情で、十分不幸の予感がするのですが、次のページで父親の戦死を知らされる母親の表情が最高。呆然とする、っていうのはこうなる状態なんだなと完璧に理解できるでしょう。しかもこの母親、母親の強さを少しも持ち合わせていないようで、あっちゅう間に衰弱死しちゃいます。

その後も万事そんな調子で話が進みます。不幸街道まっしぐら。事態が好転しそうな気配すら無いんですね。悲しみを描こうとか、悲惨さを書こうとか、もうそんな意図は全然ないんです、多分。悲惨な絵をおもしろく描きただけだったのではないでしょうか。叔父さんなんて煉瓦が落ちてきて死んじゃうんですが、これだけで十分おもしろいのに、その煉瓦が直撃している「あっ」っていう感じの首の曲がり方が最高です。

その後も最高に不幸な出来事の連続なんですが、句読点のように一拍置くためだけの不幸もあるんですよね。いかにも「ついでに」といった感じです。別にそれ無くても全然構わないのですが。

こんな感じで、読者がよくある物語に期待する「苦労のあとの幸福な出来事」「めでたしめでたしハッピーエンド」をことごとく裏切り続け、最後の最後は読者の予想通りというなんともすごい物語です。きっと読んでるうちに、次のページの不幸を予想できるように洗脳されちゃうんですね。最初の頃感じるであろう罪悪感なんて最後には忘れてしまいます。あまりにショックなことが有ると笑ってしまう時がありますが、それと同じなのかもしれません。度を越した不幸話は、猛烈におもしろいのです。

解説で触れられていますが、あるコマからずーっとシャーロットを見守っている奇妙な生き物がいます。これが何なのかわかりませんが、くれぐれも自分の視界に現れないことを、強く願います。

読書 /

Text by pushman