整形美女
秘密を抱えるしんどさ

この物語を読んでいて気がついたのですが、姫野カオルコは思っている以上に好きな作家であることが判明しました。今まで読んだのは『ひと呼んでミツコ』『終業式』の2冊。僕が好きな作家は「同じようなものばかり書いている」という批判を受けがちな人が多く、確かにそういうとらえ方もあるなぁと思うのですが、姫野カオルコさんのこの3つの物語は、すべて雰囲気は違います。雰囲気、というよりも目線でしょうか。『終業式』ではとても優しい目線を感じましたが、今回の『整形美女』は厳しいというかとても冷静、冷徹な目線を感じました。

この物語を読むと、「整形」を通じて「自分を偽ること」への免疫がどれぐらい備わっているかが自覚できます。作中で誰もがうらやむ美女になった阿部子は、一人寂しく休日を過ごし、ひたすら整形したことがばれるのを恐れます。一方美女から普通の女性へと整形した甲斐子は、ばれることを恐れてはいますが、多くの男性から誘いを受け、自分の願望を満たしていきます。二人が整形した動機は違いますが、整形後の人生の違いは動機には関係なく、整形したことへの後ろめたさが有るか無いかということです。

犯罪者が捕まるのは「罪悪感に苛まれ、心の底でその罪を許されたいと願うからだ」という話を聞いたことがあります。より良く、より幸せに生きるために行ったことが、後ろめたさを伴う行為になり、状況が好転するどころかより悪くなってしまう。こういうことは日常でもよくやってしまいますが、多くのことは些細なことなので忘れられるし、周りの人間も忘れてくれます。でも、それをずっと隠さなければならないようなことは、よほど強さと自信が無いとやってはいけないことだと思いました。秘密がばれてしまうことは最悪なことではなくて、それを一人で抱えていかざるをえなくなることが最悪なことなんだと思います。

というわけで、読んでいる間ずっと軽い緊張感をともなう物語でした。整形がネタということで、どーしても思い出すのが岡崎京子さんの『ヘルタースケルター』。整形にいたる経緯や物語の質は全然違いますが、整形手術をして生まれ変わり、自分の秘密を抱え、自分をも偽り続ける人の物語です。『整形美女』と合わせて読んでもらいたい物語ですね。

2004年10月17日(日)

読書

Text by pushman