お父さんのバックドロップ
あとがきを読んでから
4人の「子供より子供っぽい」お父さんを集めた短編集です。表題作「お父さんのバックドロップ」は『超老伝』と同じく、格闘技好き、特にプロレス好きにはたまらないでしょうね。夢枕獏さんによる解説にも書かれていますが、プロレスへの「愛」が無ければ書けない表現が多数あります。
下田くんのお父さんは有名な悪役プロレスラーの牛之助。頭は金髪、顔は赤白の隈取り、リングでみどり色の霧を吹く。そんな父親が下田くんはイヤでたまらない。今度は黒人の空手家「クマ殺しのカーマン」と対戦することになったのだ。父を思う小学生の胸のうちをユーモラスにえがく表題作。ロックンローラー、落語家、究極のペットを探す動物園園長と魚河岸の大将。子供より子供っぽいヘンテコお父さんたちのものがたり。
『お父さんのバックドロップ』
4つの短編ですが、どれも甲乙つけがたくおもしろいです。おもしろいんですが、凄く直球なんで『超老伝』を読んだ後ではちょっと物足りなかったのも確かです。番組名(日テレ系?)は知りませんが、日曜日の22時か23時前ぐらいにやってる3分ぐらいのほのぼのアニメを思い出しました。
なんやかんやとありましたが、みんな仲よくなりました。
といった風な感じなんですね。それが悪いとは思いませんし、実際ほのぼのしましたが。でもなにかが引っ掛かります。おそらくそれは、僕がらもさんに期待していることではなかったからだと思います。もっとひねくれた物語が欲しかった。
しかし、この本の最大の魅力はらもさん自身のあとがきにありました。「中島らもさんにこんな一面があるんだ……」とちょっと感動してしまいました。このあとがき、まえがきであってもいいような気がします。僕はあとがきを読んでから読み直し、最初に読んだ時の「なんかこそばいなぁ」という感じを、きれいさっぱり忘れてしまいました。できることなら、一旦記憶消してあとがきを読んで、もう一度読み直したいです。そうすればちょっと違った感想を持ったかもしれません。