GOLDEN BOY
妄想大爆発寸止め事故

副題「さすらいのお勉強野郎」。いいですね「さすらう」というのは。常々さすらいたいとは思っていますが、生きていく為にはさすらってばかりもいられませんからね。という固定概念をぶち壊す、妄想爆発漫画です。

東大法学部中退、といっても全ての課程を修得したため自主退学したという、筋金入りのお勉強好きの「錦ちゃん」こと、大江錦太郎が主人公。錦ちゃんはお勉強のために自転車で各地を放浪。そして、お勉強をしながらトラブルを解決し、女の子に惚れて惚れられる、というのが基本パターンです。

前半の一話完結型も好きでしたが、後半の錦ちゃんをお勉強に目覚めさせた陽子さんとの話は、好きです。いろんな意味で。まあ半ばエロ本と化していくわけですが、会話の端々に江川さんのメッセージがあふれ返ってます。そして、同時期に連載していた『東京大学物語』と明らかに内容がシンクロしていき、物語は暴走し続けます。「大丈夫かいな?」と思いながら読んでいると、物語は唐突に終わっちゃいます。しかも明らかに打ちきりとわかる形で。この経緯は『“全身漫画”家』に詳しく書いてます。

そんなこんなで、ネットでの評判はあまり芳しくないのですが、僕はかなり好きです。この漫画は江川漫画の根底に流れる共通メッセージ「ものごとに意識的である事」がもっとも顕著に表れていると思うんですよ。特にお勉強に目覚める前の錦ちゃんと金剛寺のやりとりがぐっときます。とにかく自分でお勉強する事。あまりにあからさまに語られるのでちょっと説教くさくて辟易しちゃう部分もありますが。

妄想大爆発しそうになりますが、爆発せずに不発。それなのに大事故起こして終わっちゃいますが、基本的には良質のエンターテイメント作品だと思います。僕は妄想好きですし、繰り返し語られる、芯のぶれない物語が好きなので、江川達也の作品を一つでも好きならこの物語はおすすめできます。で、この物語を気に入ったら『“全身漫画”家』も読まれる事をおすすめします。作品に対する素直な心情を読んだ後もう一度読み直すと、また違った部分が見えてきますので。

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Text by pushman

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