『山賊ダイアリー』ごっこ、再び
2019年度 3回目の出猟
『山賊ダイアリー』には狩猟だけではなく、釣りや山菜採りなど、自然の中で遊びながら食べ物を得る方法が描かれている。読んでいると自分も体験したくなることが多い。昨年初めて体験した散弾銃と空気銃での共猟もその一つだ。空気銃で水面の獲物を仕留め、驚いて飛び立った残りの獲物を散弾銃で仕留める。お互いのやり方が有機的に結びついている感じがかっこいい。残念ながら出会いに恵まれず成果は得られなかったけれど、とても楽しかった。
今期3回目の出猟は、昨年は果たせなかったコンビ撃ちを体験すべく、先輩のAさんと今年から自動銃を所持して狩猟を始めたCさんの3人で、散弾銃2挺とエースハンターで挑むことになった。
自分よりも猟歴の浅い人に初めて出会ったので、少しでも先輩面をしたい。とはいえ人になにかを教えられるレベルでもない。そこで、獲物がいたら優先的に撃ってもらおうと考えた。僕にできる先輩面はその程度だ。しかし猟場に向かう車中で今日までの狩猟体験を伺うと、すでに獲物も仕留めているし、その数も種類も立派なものだった。狩猟に関する経験は完全にCさんの方が豊富だった。少し気後れしたけれど、憧れのコンビ撃ちへの期待は高まった。
幸先よく最初の池でカモの群れを発見。僕が斥候となり、エースハンターを準備して池に向かう。双眼鏡で確認すると、残念ながらオシドリの群れ。撃ってはいけないけれど、きれいなので遭遇すると嬉しくなる数少ない非狩猟鳥だ。
その後も遭遇するのはオシドリなどの非狩猟鳥ばかり。いくらなんでもオシドリばかりだと腹が立ってくる。やっとカルガモに出会えたのに、近づく前に逃げられた。さすがに人気のカモはスレてきているようだ。
あーだこーだと近づき方を反省しながら向かった三段池で、狩猟鳥の群れに出会えた。ヒドリガモだ。
『山賊ダイアリー』ごっこスタート。
ヒドリガモは『山賊ダイアリー』でおいしくないカモとして描かれている。実際おいしいという声は聞いたことがない。そのためあまり狙われないのか、狩猟鳥の中では比較的のんびりしている。しかし僕はまだ食べたことがない。野生の動物は個体差も大きいと聞くし、自分で食べて判断したい。
Aさんの陣頭指揮で配置につく。ヒドリガモは一番下の池にいるので、僕はそこで空気銃を発砲する。Aさんはカモの逃走経路を制限するため、わざと姿を見せつつ念のため散弾銃を用意して待機。Cさんは一番上の池で待機し、逃げてくる群れに散弾をぶち込む。
それぞれが配置についたことを確認し、ペレットを装填してスコープでヒドリガモを捉えた。
距離は目測で50m強。初めて猟場で委託射撃できる絶好の状況。中っても外しても、Cさんにはチャンスが回るのでいつもより少し気が楽だ。これはいけるという確信を持って、引き金を引いた。
発砲音の後、ヒドリガモの遥か手前で着水するペレット。狙った個体と周囲にいた数羽はちょっと驚いたそぶりを見せたが、飛び立たない。それぐらいの大外し。めちゃくちゃ不甲斐ない。カルガモやマガモと比べるとヒドリガモは小さい。そのせいで目測が大きく狂ってしまったようだ。
それでも別の群れがAさんの思惑通り上の池の方に飛んでいき、散弾銃の発砲音が鳴り響いた。
最初に狙ったヒドリガモはそのままなので、もう一度狙撃。しかし今回も外れ。残っていたカモは全て一段目の池に飛んでいき、再び散弾銃の発砲音が鳴った。
再び止め刺しに手こずる。
一番上の池に戻ってCさんに「どうでした?」と聞くと、「半矢にしてしまいました……」と水面を指差す。双眼鏡で確認すると対岸のボサ付近で羽をばたつかせている。
汚名返上のチャンス。止め刺しなら空気銃だ。12回ポンプしてから対岸に移動し、10mぐらい離れてヒドリガモの頭に狙いを定めた*1。
引き金を引くとヒドリガモは跳ね上がって羽をばたつかせる。でも、中っていない。自分の射撃の下手さに嫌気がさし、もう撃つ気にならない。結局タモですくい上げ、昨年のコガモと同じくナイフで止め刺しをした。
Cさんは手際よく腸抜きをしている。あたふたしながら止め刺しに向かい、止め刺しし損ねた僕とはえらい違いだ。その姿はもう立派な猟師、先輩猟師だった。
工夫でカバーする。
結局これが最後の出会いとなり、楽しい共猟は終了。憧れのコンビ撃ちは半分成功。やはりエースハンターで1羽を仕留めないとすっきりしない。射撃力に問題があることは明白だけど、猟期中に向上するとは思えない。となると低すぎる狙撃力を補うため、工夫を続けるしかない。昨年自作したクアッドスティックは使えると思うが、セッティングに少し時間がかかって焦ってしまう。もう少し手早く委託できるものはないか……。最近はそんなことばかりに考えを巡らせている。