渓流・源流釣りの安全装備
末長く山釣りを楽しむための道具

昨年の渓流釣りはあまりに魚との出会いがなく、以前より憧れていた源流域に足を伸ばすきっかけになった。渓流域でも非日常を感じて満足していた僕にとって、源流域は心休まると同時に心踊る場所でもあった。そこに至る道中はしんどい思いもするけれど、そんなものは釣りをできる場所に到着すれば吹き飛んでしまう。ただ、何度目かの釣行で同行者にヒヤリとすることがあり、「舐めたらアカンな」と心底思わされた。狩猟や山釣りは危険だからこそ「大袈裟な装備品は使いたくない」「身軽でいたい」という気持ちがあったけれど、こんなにおもしろいことで怪我をして、二度と山釣りができなくなることは絶対に避けたい。

ということで、源流域に行く時に装備、携行するようになった道具を紹介。

山釣り中
たくさんの荷物を背負っても釣行中はあまり重さが苦にならない

ヘルメット

沢登りや山釣りに関する情報を調べていると、ヘルメットは必須装備として紹介されている。でも、「ヘルメットか……」と、どうしても大袈裟に思えた。そして大袈裟な装備は小っ恥ずかしい。と思っていたけれど、源流域への二度目の釣行で、ヘルメットの購入を即断する出来事があった。

同行者が3m程距離を空けて前を歩いていると、パラパラと小石が落ちてきて、その後すぐに同行者と僕の間に20〜25cmの落石があった。同行者と僕はその場に固まったまま顔を見合わせ、落石があった場所を確認し、また顔を見合わせた。落石が発生したと思わしき場所では、折れた枝がぶらぶら揺れていた。

落石の原因はわからないけれど、落石の怖さは理解できた。そして、落石が僕と同行者の間を転がり落ちてくれたのは、ただ運が良かっただけだということも。この落石はいろんなことの警告に思えて、安全な釣行を意識するきっかけになった。

モンベル L.W.アルパインヘルメット

渓流釣りだって足を滑らせ頭を打つ可能性はあるわけで、被っても損はしない。鬱陶しいし、気恥ずかしくはあるけれど。

購入時の価格 ¥9,790

ゲーター(脛当て)

僕は寒い時期にウエストハイウェーダーを履くことが多い。これがまあまあ高価な買い物だったので、僕自身の身を護るというよりも、ウェーダーが破れたりしないようにレッグガードを装備していた。これがほんのり暖かく地味にありがたい。そして、心底ありがたいと思ったのは、岩や硬い物体と接触した時の痛みが激減された時だ。

源流や渓流では大小様々な岩を登ったり跨いだり、あるいは身を預けたりと、思っている以上に身体と硬いものが接触する。一度装備するのを忘れて源流域に行ったことがあるけれど、植物が鞭のようにしなって脛をピシャリと叩かれたり、岩に脛をコツンとぶつけたりした。もちろん痛い。レッグガードの有り難みを文字通り痛感した。

このレッグガードは見た目以上に防御力が高く、装備していると「コツン」程度のぶつかりならなかったことにしてくれる。かなり強力なベロクロで装着脱着がちょっと面倒だけど、必須装備だと思う。

リトルプレゼンツ ショートゲーター

後述するニーパッドを使用するので、ショートで必要十分。耐久性もあり大満足の一品。これを装備していたら弁慶も泣かずに済んだのではないだろうか。

購入時の価格 ¥4,523

ニーパッド(膝当て)

前述の落石以前に「渓流釣りって危ない遊びだなぁ」と思わされたのは、膝を岩にコツンとぶつけた時。小さな石を踏んで数cm滑り、手をついていた岩に膝をコツンとぶつけた。経験した人はわかってくれると思うけど、これがまあかなり痛い。「ィッツゥー……ッ!」てな感じでそこそこの痛みがそこそこの時間継続して、腹立たしいことこの上ない。悶絶した。

この出来事以来、ニーパッドを装備するようになった。防御されてることに感謝する機会はそうそうないけれど、身を護ることに加えて移動時や釣りをしている時の体勢の選択肢を広げてくれる。痛みを気にせず岩場で膝をつけるのが、とてもありがたい。

K-WORK ヒザパッド PW-40

珍しくレビューが参考になった一品。膝を付いて作業する方々からの好評さを信用した。でも、買い替えるとしたらこれよりも着脱が簡単そうなこっちを買うと思う。柔らかくてもいいのでプラスチックカップがある方が個人的には安心。

購入時の価格 ¥1,324

熊鈴(熊避けグッズ)

渓流釣りを始めた頃からビビりまくっていたのが、熊との遭遇。漁協で話を聞くと「熊? おらんことはないけど、ここらはまあ出会わんわ」と言われて安心していた。ところが昨年から目撃情報が急増。源流域までの登山道はもちろん、民家も近い登山道の入り口でも目撃される状況になってきたので、今年は釣行前に自治体の熊出没情報を確認するのが必須となった。

ということで、まずはばったり遭遇しないため、熊がこちらに気がついて立ち去ってもらうために、熊鈴を2種類付けている。ひとつはジャンラジャンラとやかましく鳴るタイプで、これは近くで大きく聞こえるけれど、距離があるとあまり聞こえない。もうひとつはチーンチーンと澄んだ音が鳴るタイプ。これはそこそこ距離を空けても聞こえる。

同行者ともども装備しておくことで、熊とのばったり遭遇を避ける確率も上がるだろうし、ちょっと離れて行動する同行者の存在を感じられるのも助かる。

モンベル トレッキングベル スクエア

ジャンラジャンラとやかましいタイプ。やかましい割に離れるとあまり聞こえないので、遠くまで聞こえるタイプもあった方が安心できると思う。

購入時の価格 ¥860

モンベル キーカラビナ ベルナスカン

チーンチーンと澄んだ音色が遠くまで響くタイプ。どちらの鈴も民家近くでは騒音になるので、すぐに取り外せるカラビナ付きなのはありがたい。

購入時の価格 ¥950

熊スプレー

熊鈴はあくまで「ここに人がいますよ」と熊に気づいてもらうための道具で、熊が鈴の音色を嫌って寄ってこないわけではない。ということで、遭遇した時のために熊スプレーも必須。

ただ、僕の場合は護身用として持っている気持ちもある。山で出会う人とは大抵気持ち良く挨拶を交わすし、場合によっては情報交換もする。なので危険な目にあったことはないけれど、僕はどうも人を信用できないらしく、「いきなり襲われたらどうしよう」という疑念が頭から消えない。狩猟にしても山釣りにしても、人と出会うことが少ない場所なので、出会った人が危険人物なら自分で対処するしかない。武器の類はお互いの命に関わるし、行動不能にさせる熊スプレーは山での護身にもぴったりだと思う。

とはいえもちろん、人にも動物にも使いたくはない。この道具を使う必要に迫られないのが一番良い。

ポリスマグナム 熊撃退スプレー B-609

ヒグマには力不足らしいけれど、本州にいるツキノワグマや猪、猿には十分有効らしい。そして人に使っても過剰防衛にならない程度の威力らしい(実際はどう判断されるのか知らない)。とにかく一生使う機会がないことを願う道具の筆頭。

購入時の価格 ¥5,720

ヒル対策

僕が行く山にはヒルが多く、谷によっては気がつくと左右の靴に10匹以上のヒルが蠢いている……書くだけで気が滅入ってきた。僕は虫全般、そして見た目や動きが気持ち悪い、おぞましい生き物全般が苦手だ。ヒルはその頂点に鎮座している。血を吸われるのもいやだけど、そんなことよりとにかく見た目と動きが気持ち悪い。気持ち悪すぎる。おぞましい。おまけに天敵がいないらしく、毎年増える一方だ。

ということで、僕がヒルの天敵になると決意した。

ヒルを駆除する時にいつも思い浮かべるセリフ(『寄生獣』第6巻 202ページより)

とはいえヒルは僕の天敵でもあるので、まずは近寄らせない努力をする。僕が使っているのは「昼下がりのジョニー」。でも、どれだけジョニーを吹きかけても、ヒルは取り付いてくる。これはジョニーが悪いわけではなく、竿を出している間は立ち止まる時間が長くなりがちだし、そもそも移動する場所が水辺でヒルが多いのが原因だと思う。ならばヒル避けは不要かというと、そうではない。吹きかけ忘れると取り憑いてくるヒルは確実に増える。それに取り付かれてもヒルにジョニーを直接吹きかければ、ギューっと身を縮こませて強烈な吸引力も失い簡単に取れるようになる。大量に吹きかけ続ければ死んだように動かなくなるけれど、死んだふりかもしれないし、そのまま生かしておくと後々の災いの種になるので、確実に殺しておきたい。

そこで便利なのがターボライター。生半可な殺し方では内部に匿われているかもしれない卵的なものから増殖してしまうイメージが拭えないので、焼くのが一番確実で効率がいい。普通のライターだとヒルとの距離が近いし、効率よく火を当てられないので、ターボライターが便利だ。内部までしっかり火を通せば匿っている卵的なものもろとも生命活動を停止するはず。……そんなものがあるのかは知らないけれど、あくまでイメージとして。

ヒル下がりのジョニー

自然環境で生分解する材料だけで製造されているらしいので、遠慮なくガンガン振りかけている。直接吹き掛ければ悶絶してすぐ吸血を止めるので、効果はかなりあると思う。

購入時の価格 ¥1,620

新富士バーナー マイクロトーチ アクティブブラック

ヒル退治用と言っても過言ではない使いやすさ。ストレスなくヒルを駆除できる。見た目で黒を選んだけれど、山で使うものは目立つ色の方がいいので黄色がおすすめ。

購入時の価格 ¥1,336

大荷物を担ぐわけ

ヘルメットなど命を守ってくれる道具から、人によっては不要なヒル対策グッズまで持っていくのは、こんなおもしろい遊びで怪我をしたりトラウマ級のヒルに吸血されて、山で遊べなくなる、山で遊ぶ気がなくなる可能性を極力小さくしたいから。僕が足を踏み入れている地域なんて、本格的な源流釣りや沢登りを楽しんでいる人からするとめちゃくちゃ安全なんだと思う。でも、携帯は通じなくなるし、すれ違う人もほとんどいない、野生動物が主導権を握る地域で遊んでいるのだから、ビビり倒しているぐらいが僕にはちょうどいいと思っている。これからも装備は増えるだろうけれど、減ることはなさそうだ。

おそらく子どもの鹿だったもの……。細かい部位もきれいに食べられていたので熊ではないと思うけれど、いきなりこんなものと出くわすと怖い。自分がこうならない保証はないので、山奥に行くならできる対策はしておきたい。

Text by pushman

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