モービル機(TM-G707)の受信感度低下の原因を求めて
最初は直感 試してみる価値

アマチュア無線であれデジ簡であれ、巻狩に参加するならハンディ機は必須の持ち物になる。巻狩だけではなく、複数人で山に入る時は持っていると安心できる、とても便利な道具だ。特に渓流釣りの場合は目視できる距離でも川の音で声が届かないことはよくあるし、一時的に別行動を取る時も安心。とても重宝している。

ハンディ機に比べると、モービル機は必須とまでは言えない。でも、あれば便利なのは確かだ。移動中でも目的地変更の連絡や全体の情報を、リアルタイムで知ることができる。ハンディ機の出力では通信しにくい状況でも、モービル機で中継して全体に連絡することもできる。
僕がその役目を担った時、誰からも返事が無いことがあった。当然こちらからの連絡も届いていないと思い、移動して再発信すると、「ずっと返事してるがな」と言われた。なんと僕のモービル機は発信には問題ないけれど、受信感度が著しく低いらしい。

「あれば便利」な道具なのでそこまで不便ではないけれど、なぜ受信感度が悪いのかがとても気になる。アマチュア無線の免許を持っているからには、解決できなくても原因を知る努力はしてみたくなった。

液晶パネルが接触不良のTM-G707
度重なる分解、組み立てで液晶パネルが接触不良になり、周波数の数字の一部が欠けて表示されるようになってしまったTM-G707。「145.00J」ではなく当然「145.000」。その内これも改善を試みたい。

前提条件

真っ先に考えたのは本体の故障。でも譲ってくれた人が使っていた時は問題がなかったらしいし、原因は他にある気がした(根拠はない)。ネットの情報を頼りに原因を調べていると、聞き慣れない数値や単位があり、それらを測定する道具が欲しくなった。でも、数値がわかっても修理に出したりなにかを買い換えたりする必要はあるわけで、まずは設置方法に問題があると決めつけて、自分でできる試行錯誤を全て試してみることにした。

設置状況

本体はDINボックスに設置。アンテナは後方の運転席側に設置。そのためアンテナケーブルは7mのものを使用している。電源はバッ直で取り出し、リレースイッチをかましてエンジンが動いていなければ通電しないようにしている。さらに手動で通電を切るためのトグルスイッチも設置。これはほとんど見た目だけのために導入したんだけど、後々とても助かることになる。

まとめると、僕のTM-G707はエンジンをかけないと絶対に通電しない。エンジンをかけるとリレースイッチで通電する。手動で通電を切ることも可能。もちろん本体の電源ボタンをONにしないと電源は入らない。

原因究明の流れ

最初に疑ったのはアンテナの設置場所。僕の車はエンジンが後方にあるので、後方にアンテナを設置するのは電波に影響がありそうだと思っていた。ということで、マグネット基台で車の中心あたりに設置してみた。しかしなんにも変わらず。

次に疑ったのはケーブル。長さが影響しているのかもしれない。でもこれは新たな出費が発生するので、ひとまず考えないことにした。

本体の故障はどうしようもないけれど、例えばハンダの劣化など自分で修理を挑戦してもいいレベルのことが原因かもしれない。ということで本体をバラしてみると、ホコリや汚れがあるので丁寧に除去。そしてハンダが劣化しているかどうかの確認。とはいえ素人が見ても判断できず、結局掃除しただけで元に戻した。

無線機本体、設置方法に問題ないとすると、他の車載機器に原因があるのかもしれない。まず疑ったのはBluetoothでiPhoneと接続して音楽を楽しませてくれている、激安のオーディオ機器。無線使用中は音楽を流していないけれど、電源は入れっぱなしだった。主電源を落としてみると……なにも変わらない。ならばと全配線を引っこ抜いてみた。でも、状況は変わらなかった。

かなり諦めムードになってきたものの、もう一度発奮して改めて配線周りをチェック。何の根拠もなくリレースイッチが原因な気がしてきたので、リレースイッチを取り外しトグルスイッチのみで通電を管理するようにした。

配線に問題ないか確認するため、エンジンを切った状態でアマチュア無線愛好家の交信をワッチ(?)してみる。すると今までノイズ混じりだった周波数で発信内容が、明瞭に聞こえてきた。根拠のない疑いがドンピシャで原因だったとわかり、めちゃくちゃ気持ちいい。しばらくご機嫌で受信を続け、本体の電源をオフにし、トグルスイッチも切る。その状態で本体の電源ボタンを押しても、電源は入らない。配線もバッチリだ。

意気揚々とエンジンをかけて、今度はその状態でトグルスイッチをオンにし、本体の電源を入れる。通電も問題無し。受信は……問題あり?! さっきまで明瞭だった無線愛好家の声にノイズが混じっている。そしてエンジンを切ると明瞭になる。

結局リレースイッチは原因ではなく、エンジンをかけた状態に問題がある。つまり、エンジンとアンテナの位置関係か、他の電子機器が原因だ。
再びアンテナをあっちこっちに移動させても状況は変わらず。ならばとオーディオ、ドラレコ、ETCカード読み取り機など、主要な後付け機器の電源を全てオフにする。本体の電源がない機器もあるので、電源を取り出しているヒューズボックスを確認。なんの電源かわからないヒューズがあったので辿ってみると、iPhone用のワイヤレス充電機のために設置したUSB電源ポートだった。

エーモン USB電源ポート(2881)
受信感度低下の原因の後付けUSB電源ポート。先にこのレビューを読んでいれば……

完全解決

ドキドキしながらヒューズを引っこ抜き、TM-G707の電源を入れる。感度良好。恐る恐るエンジンをかけると……感度良好のまま! 受信感度以上に僕の心が晴れやかになった瞬間であった。

運転中にiPhoneの充電が出来ないのも不便なので、USB電源ポートへの通電を手動でオンオフできるスイッチをかまして、問題は完璧に解決。無線を使わないときは充電器に通電してiPhoneを充電しながら音楽を楽しみ、無線を使うときはスイッチで充電器への通電を切ってiPhoneのMusicも停止している。

相変わらず無線や電気の知識は乏しいけれど、持ち前の好奇心としつこさで原因究明、問題解決できたのはちょっと筆舌に尽くし難い、気持ちいい体験だった。

エーモン 貼り付けプッシュスイッチ(3223)
後付けのUSBポートへの通電を切るために追加したスイッチ。安価で素晴らしい商品だけど、当然安っぽい。トグルスイッチにしたかった……

エーモン 貼り付けプッシュスイッチ(3223)

ほんとはトグルスイッチにしたかったけれど、さすがに車に穴を開ける根性はなく、埋め込まれたように見えるこのスイッチを選んだ。

購入時の価格 ¥493

エーモン USB電源ポート(2881)

無線通信を使用していない機器が無線に干渉するとは想像できなかった。このレビューを読んでいれば時間と労力がかなり軽減されたと思うと、大変悔しい。ということで、便利だけれど無線通信をする人は使わない方が無難。

購入時の価格 ¥1,680

Text by pushman

  • Instagram
  • YouTube
  • ANGLERS