罠ガール
獣害対策のあれやこれやを興味深く学べる良書
情報を得る方法は色々あるけれど、興味を持った物事に関する本を読むのが好きだ。狩猟に関する情報もいろんな本から得た。僕がおすすめする狩猟本は、『山賊ダイアリー』『ぼくは猟師になった』『羆撃ち』。この3冊は狩猟に興味がない人が読んでもおもしろく読めると思うし、狩猟に限らず「自分で食べ物を手にいれる生活」に興味が湧くと思う。
では、狩猟を始めた人におすすめする本は? その回答の一つに挙げられるのが『罠ガール』。所謂「おっさん趣味を女子高生にやらせてみた」系の作品だけど、狩猟を農業を軸にした女子高生のドタバタ日常漫画……ではない。くくり罠、箱罠、そして囲い罠と罠猟全般に関する知識はもちろん、鳥獣被害対策で捕獲した獲物の利活用、そして人間と自然、野生鳥獣との共存について描かれた物語で、駆除としての狩猟に関わっていない僕でも、狩猟の楽しみ方の幅が広がった。
主人公である千代丸は、自分の畑を守る為にやむなく狩猟(有害鳥獣駆除)を行っている女子高生(!)。獣害から農作物を守るためとはいえ、命を奪うこと、そしてその行為を他人に任せざるを得ない現状に後ろめたさを感じながら、周囲の大人たちから狩猟の技術、獲物の利活用方法などを学び、友人達と共に生き物の命を奪うこと、人間と野生鳥獣の共存、豊かな自然を残していく生活と向き合っていく——。

僕は銃と罠の狩猟免許を持っているけれど、毎日見回りができる範囲に猟場はないので、罠猟をやったことはない。でも、ありがたいことに見回りや設置場所の選定に同行させてもらっている。その度に自分でやりたいという思いは強まるばかり。なのでこの物語で描かれる罠猟にまつわる色んなエピソードはとても勉強になった。僕が罠猟のお手伝いで経験して得た知識と合わせて、より実戦的な知識になってくれたと思う。
作者の獣害対策経験を基にしているだけあり、狩猟の描写はもちろん駆除や狩猟に対する偏見や野生鳥獣と人間の共存方法についての思いが丁寧に描かれている。特に最終巻は作者が考え続けて出した(その時点での)結論を、読者に伝えるためのお話のようになっている。ちょっぴり説教くさいけれど、趣味の狩猟しかしていない僕にも共感できる点、気付かされた点があって、自分で動物の命を奪って食べ物にすることへの後ろめたさとの向き合い方が少し変わった気がする。
罠ガール 1巻
登場人物たちはかわいらしく描かれているし、おもしろおかしい描写やエピソードもあるけれど、それだけではない真摯な鳥獣被害対策漫画だと思う。
