Stop & Listen @ Detaj
音楽が素朴な娯楽だった時代の音楽を楽しむ

戦前のハパハオレ・ハワイアン、スウィング、ラグタイムやカリプソを得意とする「 Sweet Hollywaiians」と、戦前ブルーズをストイックに追求する「Old Southern Jug Blowers」。近いけれど異なる音楽を愛する2組のバンドが、大阪北浜のDetaj(デタイュ)に集まった人達を、音楽が今よりもっと素朴で楽しい娯楽だった時代に連れて行ってくれた。

複数のバンドが同じ日に同じ場所でライブをする場合、バンドごとに演奏し、最後にセッションしておしまい、というパターンが最も多いと思う。というか、そうせざるを得ない。でも、このライブでは最初から2バンドがステージに上がり、1〜2曲ごと交互に演奏するという変則的なライブを行った。
会場となったDetajは、ライブをするように作られた場所ではないので、いわゆる「ステージ」はない。入り口の真正面に並べられたスティールギター、テナーバンジョー、テナーギター、アーチトップギター、ストリングベース、ウクレレ、ギターバンジョー、バンジョーマンドリンといった、数々の弦楽器(それもほとんどがヴィンテージ)がずらりと並んでいる場所が、この日のステージであることがわかる。

そんな場所がステージなので、バンドと客席は同じ高さになり、後ろの方は少し見にくい。さらに、会場には2本の大きな柱があり、一方のバンドが全く見えない座席もあった。つまりライブ会場としては、まったくいい環境ではない。「しかし」というか、「だからこそ」なのか、演奏する側も聴く側もリラックスして気負いがない。それでいて高揚感を感じる不思議な会場の雰囲気だった。観客側の気持ちとしては、「楽しませてもらう」ではなく「楽しもう」という能動的な感じが強かったのかもしれない。

向かって右側にSweet Hollywaiians、左側にOld Southern Jug Blowers。全ての楽器、歌声はマイクを通さず、生音のみで聴こえてくる。きっと1920年代の酒場では、こうやって人が集まってきて、何か楽器を弾ける人達が自分の好きな曲を演奏し、それを聴いている人達も自由に飲んだり食べたりしながら、気楽に楽しんでいた気がしてくる。ライブ中、何度も自分が2009年の大阪北浜のカフェにいる、という感覚が不確かになった。

1stステージは、Sweet Hollywaiiansの「Louisville Special」からスタート。そこからはほんとに時代感覚が狂う曲と演奏。休憩時間中のBGMはなんと生演奏。バンドの方々にとっては全然休憩になっていないけれど、心底楽しんでいるようだった。Hollywaiiansのメンバーも、普段ステージでは演奏しないブルーズを弾き語りしたり、いつも以上に自由に楽しんでいた。

再開後も親密な空気は変わらず、ついに最後の曲が終わり2つのバンドが一緒に演奏……と思いきや、Old Souther Jug Blowersから「もう一曲演らせて」と声が上がり、「Louisville Special」を演奏。つまり、最初と最後が同じ曲。演奏する側も聴く側も、「もう楽しくって仕方がない」といった雰囲気になっていた。
その後のセッションは、同時代とはいえ互いのジャンルの違いで四苦八苦していたけれど、そのハラハラ感も楽しませてもらった。

開始早々「今日は僕たちが楽しむ日です」という言葉が飛び出し、まさしくそのとおりに進んでいった今回のライブ。でも観客を置き去りにしていたわけではないし、そう感じた人はいなかったと思う。ある人がなにかを楽しんでいる様子が一線を超えると、見ているこっちも楽しくなる事があるけれど、その感じが一番近いかもしれない。でも、そこには確かにバンドと音楽、音楽と観客、観客と音楽の親密な繋がりがあった。互いのバンドが目指しているというか、「かっこいい」と思っているものを詳しくは知らないけれど、そんな知識が無くても「かっこいいものは、かっこいいんだ」と思えたし、そのかっこいいものを知りたくなった。
演奏だけに注目すれば、もっとクオリティの高かったライブはあったと思う。でも、あの会場の雰囲気、テンションはなかなか得難い体験だったと心の底から感じる。僕が足を運んだHollywaiiansのライブで、間違いなく最高のライブだった。

Ticklin’ the Strings

かっこいいジャケットなので、SP盤……とは言わないのでレコードで発売してほしい。

The Jug Band Special

このライブを始め、いくつかのライブで拝見しましたが、Hollywaiiansとはまた違ったカッコ良さがあります。

Update:

音楽

Text by pushman