Wの悲劇
混沌とした昭和感の中の、度肝抜かれる演技力

いろんなことへの興味が絡まって、薬師丸ひろ子にはまっている。子どもの頃(35年程前?)は「なんか不思議な雰囲気の人だな」と思っていた程度で、特に興味は持っていなかったのだけど。

きっかけは間違いなく「あまちゃん」。薬師丸ひろ子の演技を初めてちゃんと見て、ただのアイドル女優じゃなかったんだと知った。そして、頭をよぎるサビしか知らないいくつかの歌。こういう時に今の時代は本当にありがたく、Amazon Music Unlimitedで「セーラー服と機関銃」「あなたを・もっと・知りたくて」そして、「Woman」を初めてちゃんと聴いた。
潮騒のメモリー」で歌が上手いことや素晴らしい声の持ち主であることは知っていたけれど、若い頃の歌をちゃんと聴いたら改めて驚いた。「歌ほんまに上手いやん!」「いい声やなぁ〜クリスタル的な声やなぁ〜」と新鮮な気持ちで80年台へのタイムスリップを楽しませてもらってるうちにファンになり、Wikipediaからのみ仕入れた浅い情報を元に、なんだかとてもかっこいい生き方をしている人に思えて、ハマってしまったのだ。

そして、録画ハードディスクの中にいくつかの主演映画を発見。手始めに「Wの悲劇」を観た。演技や演出から時折滲み出る昭和っぽさを楽しみつつ、「なかなかおもろいなぁ」と気楽に観ていたけれど、主要な役者達の「映画での演技(物語の現実)」と、「舞台での演技(劇中劇)」の演じ分けに気がつき、急激に物語に引き込まれた。

引き込んでくれたのは間違いなく三田佳子。大女優という肩書きの所以がようやくわかった。この人が大女優と呼ばれていたり、ずっと長者番付1位だったのかわからなかったけれど、ようやく理解できた。ほんとに大女優だったのだ。ついでに松本人志が長者番付けの1位になった時に、タスキを掛けて「ガキの使い」に出た腰の軽さ(と言っていいのかわからないけど)にも今更驚く。
最初は「ちょい役なのかな?」と思っていたけれど、物語が大きく動いてからは本当に圧巻。まさに「大女優」というイメージ。若干古い演技に感じるけれど、それもひっくるめて往年のハリウッド女優みたいだった。

そして、薬師丸ひろ子の記者会見シーン。演技の中で演技をしてない演技するってもう訳がわからない。当時人気絶頂のアイドル(?)女優ではなく、演劇に一生懸命な一途に生きている女の子にしか見えなかった。三田静香という役が憑依しているみたいだった——と言うのは簡単だけど、演じる静香も劇中で演技しているわけで、やっぱり相当ややこしい。これを演じ切ってるんだからそりゃ絶賛したくなるし、めちゃめちゃ応援したくなる。
再出発を決意してからの静香もよかった。前半で世良公則が演じる森口が語る、俳優として生きることの辛さを、静香は苦しみも含めて楽しむことができそうな気がする。自分で自分を演出する最後のやりとりは、静香の女優としての強さと女の子としての弱さが混ざり合い、その葛藤自体を見事に演出していて、こうなってしまう前から静香はずっと女優として生きていたんだろうと思わせる。

物語の流れや演出には正直首をひねったり思わず笑ってしまうところがあるんだけど、大女優という肩書きが相応しい二人の芝居が観れたという満足感で、大好きな作品になった。確か劇中劇があったような……ぐらいの情報しか知らず、なんの期待もしていなかったけれど、いろんな意味で度肝抜かれた物語だった。

「Wの悲劇」の商品画像

Wの悲劇

ところどころで「誰かに似てるなぁ……」と思っていたのですが、ラストシーンの静止画は藤田ニコルに似ている気がする。

絶叫するシーンを見た瞬間、子どもの頃にこの予告編を見ていたことを思い出した。ほいでこのサムネイルも藤田ニコルに似てると思う。

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Text by pushman