マガモの幻、キジの飛来
2019年度 5回目の出猟
電車で猟場まで向かう時は電車内に人が少ない方がいいので、始発で出発していた。猟場には日の出前後に到着することになる。それから自転車で猟場を走り回るわけだけど、ほとんどの時間は猟場間の移動に費やされる。出会いがないまま5〜6時間ほど自転車を漕いで狩猟……というか、サイクリングを終えることは何度もあった。
今年は初回以外は車を借りて出猟しているので、朝はわりとのんびりしている。それでも今まで以上の池や川に足を運んでいる。本当に車は素晴らしい。今の所は獲物との出会いにも恵まれている。鳥撃ちは早く行動するものだと思っていたけれど、獲物との出会いはタイミング次第だと思うようになった。今回ものんびりと猟場に到着し、ちゃんと運良くマガモに遭遇できた。
場所はいつもの池。距離もいつもと同じ。これは流石に仕留めないといけない。そう気負っていることをはっきりと自覚したので、クアッドスティックを取り出して一呼吸置き、平常心を取り戻す。
クアッドスティックは広げず畳んだまま立てて、ちょうどいい高さを左手で握る。そして握った親指の上に先台を載せる。こうすると手だけで支えるよりも安定する。自分の射撃能力の低さを認めて反省し、素早く安定した射撃姿勢をとるために考えた方法だ。
舞い散った白い羽
マガモはこちらに気が付いたようで、しれっと動き始めた。こうなるといつ飛ばれるかわからない。6羽ほどいる中から1羽を選んで、レティクルの中心を首の付け根あたりに合わせる。ゆっくりと引き金を引く。発砲音。飛び散る羽。
という流れだったはずなのに、狙ったマガモを含めて一斉に飛び立つ。中ってへんのんかい!と毒づきながら必死に身を潜めると、狙った1羽を先頭に飛び立ったマガモたちがさっきより近くに着水した。
今までならここで大いに慌てていたけれど、それなりに経験を重ねたのでまずはそのまま身を潜め続ける。マガモたちの様子を伺いながら、ゆっくりと先台を広げて再度ポンプする。さらに一呼吸おいてマガモの姿を確認しようとすると、マガモたちは飛び去ってしまった。
マガモ達の行先を確認しながら数を数える。1羽、2羽、3羽、4羽、5羽。……5羽? 確か6羽いたはずだけど、今となっては確証が持てない。
最初にマガモがいた場所を双眼鏡で確認すると、確かに羽らしきものが浮いている。移動して確かめると、やっぱり羽だ。やはり最初の弾はどこかに中っていたようだ。そう信じ込んで舞い降りた場所付近を中心にしばらく探したけれど、見つけることはできなかった。
舞い降りてきた憧れの獲物
もやもやしながら飛び散ったように見えた羽や、飛び去った数など腑に落ちない点を思い出して、いろんな可能性を考えた。
もしかすると羽だけをかすったのかもしれない。最初に6羽いると思ったのは見間違い、数え間違いだったのかもしれない。
スコープの覗き方も悪かった気がする。引き金を引く時に力が入りすぎてガク引きになっていたかもしれない。
意気消沈しながらエースハンターをガンケースにしまっていると、マガモが逃げた方向から2羽の鳥がこちらに向かってくる。さっきのマガモが戻ってきたと思って慌てて頭を引っ込める。
2羽の鳥は池の手前で大きく旋回して僕のほぼ真上を通って20mほど先のボサに舞い降りた。なんとマガモではなく、キジのつがい。マガモと並ぶ憧れの獲物だ。
降りた場所は深い藪の中。双眼鏡で丹念に探すが、もちろん見つけられない。今日はエースハンターではなくMSS-20を持ってくるべきだった。
ガンケースからエースハンターを取り出し、じりじりと近づきながら探索を続けたけれど、結局こちらが見つける前に飛び立たれてしまった。
キジは何度か発見しているけれど、未だに銃を向けたことがない。今日みたいにすぐそこのボサにいることがわかっていても見つけられないのだから、犬なしでキジを獲るのはとても難しいことだと改めて理解した。
犬なし空気銃なら畑や田んぼにぼーっと突っ立っているキジと出会わないことには、どうにもならない気がする。
カモの群れの動き
狙ったマガモが飛び立ってすぐ同じ池に降りたのは初めての経験だった。弾が羽をかすめたせいで違和感があったか、ちょっとしたパニックになって反射的に飛び立ったのかもしれない。
飛び立ってすぐに下降したので驚いたけれど、それは他のマガモも同じだったみたいで、「えッ?」という感じで一瞬遅れて下降した気がする。
昨年カルガモやコガモを仕留めた時は一斉に逃げ出したのに、今回は残りのマガモも全く同じ動きをしたのが強く印象に残った。
リーダーなのか見張り役なのか、ある程度の数が揃ったカモの群れには、明らかに他よりも警戒心の強い個体がいる。他のカモはその個体の行動を真似ているのか、あるいは指示に従っているのか、同じように動く。
今まで飛び立たれた後は棒立ちで見送っていたけれど、身を隠し続けることは案外重要なことなのかもしれない。