ジオラマボーイ パノラマガール
ちゃんと普通におもしろい

一度はまるとなかなか嫌いにならない性格を利用して、岡崎京子さんの本を読みふけっています。新たに『ジオラマボーイ パノラマガール』を読みました。表紙からもわかるように、画が最近(といっても8年も前か)のものと違いますね。まだなんか柔らかいというか。出版されたのは1989年で、もう15年も前。当時の風俗が描かれていますが、ちょっとこっぱずかしいですよね、80年代って。

“BOY MEETS GIRL” STORY “IN SHU-GO-JU-TAKU”とあるように、普通の女の子と普通の男の子のお話です。女の子(津田沼春子)は退屈な日常にうんざりしながら生きていて、男の子(神奈川建一)は、メチャクチャを求めて高校を中退。二人は偶然出会って春子は建一に一目ぼれ。建一は特に一目ぼれもせずプー太郎生活を満喫。今までと違う世界に足を踏み入れ、お決まりのなんやかんやを体験する。ってな感じのお話です。

Amazonのレビューにも書かれていますが、『リバーズ・エッジ』から入った僕としては、なんか全然違う人の物語を読んでいるような感覚がありました。画も違うし、全体的にうきうき感があって。気になってる事や、気に入らない事や、納得できない事などいろいろ起こるのに、常にそれを楽しんでるねあかな人というか。それが嫌だとか悪いとかではもちろんないですが、僕が『リバーズ・エッジ』を呼んで強く感じた「無関心」は、この物語にはなかったですね。全体的に嬉しさがあふれてしまっている気がします。漫画を描くことがただただ嬉しかったのかな?『リバーズ・エッジ』とは全然全く違う世界なので、約5年の間に岡崎さんの中で何が起こったのか凄く興味深いです。

とはいえ、出てくる人間やいろんな出来事は、やっぱり他の人がさらっと描けるものではないと思います。小学生売春、それをしきっている小学生、無機物になる女の子などなど。ただ、比較的新しめの作品とは違い、この作品の登場人物達は作者に守られているというか、暖かい視線で見られているように思います。しかし、セックスとか人同士のつながりの部分に関しては、岡崎京子的な突き放した視線を感じました。

岡崎京子さんをまだ読んでない人は、この作品から読むと最近の作品も取っ付きやすくなるかもしれません。ラストもあたたかいですし。こういう気持ちにさせてくれる物語を描く人が、数年後に『リバーズ・エッジ』『ヘルタースケルター』(まだ読んでませんが)みたいな作品を描いているって……すごいですね。
この物語は失礼な言い方ですが普通の物語です。でも、ちゃんとおもしろいです。そして、岡崎京子さんの物語の芯の部分を見やすくしてくれる物語だと思います。

ジオラマボーイ☆パノラマガール 新装版

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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