愛の生活
たくさんの兆し

どうも自分が感じてた以上に岡崎京子さんの『リバーズ・エッジ』を気に入ってしまったようです。あまり短期間で何回も読み直すのはよくないなと思いながらも、気になって何度も読んでしまいます。これじゃいかんということで、新たに『愛の生活』を読みました。

同棲していたOLが突然男をつくって出ていき、家賃を払えず夜逃げをするはめになる林屋三太。棲む当てもなく途方に暮れている三太は、同じ学校の桜田純子に誘われるまま、純子の兄、貴夫と奇妙な同居生活が始まる……ってなお話です。

岡崎京子さん自身による後書きにもあるように、このタイトルは間違っています。「愛の生活」なんてものは一切描かれていません。しかしほんと、この人はちょっと壊れている(ように見える)人をなんでこんなにも自然に描けてしまうんでしょうね。……壊れている人というか、うーん……「幸せになりたいと誰よりも強く願い、そのことを全く自覚していない人」かもしれません。

日常生活に起こりうる、でも大抵の人は他人事と思っていること、夜逃げやDVや自殺や近親相姦などなど、ほんとすぐ隣にある事件をさらりと起こして、読者をビシッとさせてくれます。そんなことにびくついてもしょうがないという事も教えてくれるし、とにかく幸せになるよう努力しろと。まだ2冊しか読んでませんが、そう感じました。

どんなおもしろい物語も終わりがあるわけで、おもしろい物語であればあるほどその終わり方が重要です。この物語のラストはグッドです。相当猛烈グッドです。こんなに余韻を残すラストを読んだのは本当に久し振りです。生きていると悩みが尽きることはありませんが、この物語には直接的な解決策ではなく、なにか事態を動かすために必要な「きっかけ」が描かれているような気がします。

愛の生活

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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