π
天才数学者の妄想爆発物語

もう予告編で完全にまいってしまいました。天才数学者マックスの妄想を軸に展開される物語なのですが、マックスが仮定した世界の成り立ちがかっこよすぎです。
話の端々に折り込まれる、数字と言葉の関係、黄金率、自然のいたる所にある「渦」などなど、知識欲を満たしてくれるワードが満載。こうしたいろんな要素がまぜこぜになっていくと、マックスの仮定はかっこいいだけではなく、リアルなものとして感じられるようになります。

『π』3種類のチラシ
黄金比になっていると思われる変形チラシ。おそらく関西は1種類だけしか配布されていませんが、東京界隈では全部で6種類ほどのチラシがあったそうです。路上へのペインティングといい、かなり宣伝に力を入れていましたし、それはかなり効果があったと思います。

1: Mathematics is the language of nature.
2: Everything around us can be represented and understood through numbers.
3: If you graph these numbers, patterns emerge.

Therefore: These are patterns everywhere in nature.

Max Cohen in the motion picture π

久しぶりにサントラを引っ張り出して大音量で聞きながら、この仮定を入力したせいか、「……これ、真実なんではなかろうか」と思えます。
「数学は万物の言語」っていうのはなんとなくわかる気がするんです。きっとそうなんでしょう。だから、「全ての事象は数字に置き換えて理解できる」ってのもそうだろうなと思いますし、「それを数式化すれば一定の法則が現れる」のは当然ですよね。そこから導き出される「全ての事象は法則を持つ」という考えはやっぱり真実ですね。なんで気付かなかったのか……。

といった感じで、平々凡々な人間をも簡単に狂気の世界へ引きずり込む、恐ろしくておもしろい映画です。この物語を生み出したダーレン・アロノフスキー監督はマックスと同じく本物の天才ですね。
低予算を逆手にとって、同じカットを何度も繰り返して使い回し、切羽詰まったマックスの狂気を演出。パン、パン、パンとジャンプカットで繋がれたシーンは、認知できない何かがゆっくりと変わっているように思えます。
音楽も凄く効果的に使われています。あまり聞き入ってしまうと頭痛がするほどです。

90分に満たない作品ですが、見終わったあと「普段使わない頭つかっちまったー」感で心地いい疲れと妄想が渦巻くこと間違い無い物語です。

そういえば公開当時、大阪のミニシアター周辺やひっかけ橋などの道路に、様々な色のスプレーで「π」と書かれていたのを鮮明に覚えています。迷惑かけてはいけませんね。でも、気持ちはわかります。
この「道路にスプレー」、聞いた話ではアメリカでこの物語を気に入った映画ファンが、もっと多くの人に観てもらいたくなって、勝手に行った活動だそうです。日本はこれを真似したのだと思いますが*1、他の地域でも行われていたのでしょうか?

π

頭の良いかっこよさを堪能できます。

π(パイ)の神秘

映画を観たら知的好奇心が刺激されるので読みたくなると思いますが、神秘は書かれていません。

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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