スティル・ライフ
好きなんだけど刺さらない

初めて『スティル・ライフ』を読んでいた時(多分一年半ぐらい前)、「すごく好きな作品になるな、これは」と思いながら読んでいた。でも、読み終わったらすっと消えてしまった作品だった。そのあと『マシアス・ギリの失脚』も読んだけど、これも同じく、読んでいる間ははまり込むけど、すぐその世界から抜け出してしまう作品だった。

で、僕にとっては一回転してに気になる作家になっている池澤夏樹さんですが、先日改めて「スティル・ライフ」を読み直しました。冒頭からむちゃくちゃかっこいいし、非現実的なくせに興味深い雑談を随所に盛り込んでいて、30分で読み終わってしまいました。で、「なんでこんないい作品をおぼえてないんだろう?」と思ったんですが、しばらくするとやっぱりまた読んでいたときの興奮は薄れていってるんですね。でも今では確実に好きな作品の一つといえます。

決して広がりがない作品ではないのですが、すごく完結している感じがするからかもしれません。冒頭の、世界と自分と、自分の世界との関係を説明するくだりからして、すごく完成されていて。突き刺さるんだけれど、そのまますっと抜けていってしまうかんじです。どこにも引っ掛からない。でも今ぱらぱらとページをめくってみると、すごく作品に入り込んでしまう。

僕にとって、不思議な作家、作品です。

2004年05月22日(土)

読書

Text by pushman