東京飄然
笑える力抜きすぎエッセイ

僕は町田康が大好きなのですが、村上春樹の場合と違い、新刊を無条件に即購入してしまうほどではありません。ところがここ最近は、目にしたら必ず買っています。『東京飄然』も、発売を知らずに本屋に行って「お!」って感じで手に取り表紙をめくり、あっという間にレジを目指して歩いていました。おそらくこの人は「つかみ」がとても巧いんだと思います。

旅に出たくなった。なぜか。理由などない。風邪に誘われ花に誘われ、一壺を携えて飄然と歩いてみたくなったのだ。

東京飄然

いやいや、旅に出たくなるのはわかるとして、最後の理由「一壺を携えて」ってのが「くっ」とひっかかります。ひっかかるので続きが気になり、読み進めていくと、とても本屋で立ち読みを続けることができない表情になるので、レジに向かうことになると思います。

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2006年01月22日(日)

読書 /

Text by pushman

逆水戸
ドラマ化してほしい

短編集『権現の踊り子』の中だけでなく、今までの町田康の作品の中で間違いなく何も考えず単純に笑える作品です。意味不明なタイトルですが、しばらく読むと「逆・水戸黄門」ということだと気付きます。なにをもって「逆」といってるのかというと、まあなんというかとても現実的なのです。やくざ者から借金をしてる男は善人で人に騙されたりしたわけでなく、ただの博奕好き。でてくる代官は全然悪くない普通の代官。黄門様も虚栄心が強く、身を隠しているくせに誰も黄門様に気が付かないと、それはそれでむかついたりしています。

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2005年11月05日(土)

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Text by pushman

工夫の減さん
工夫が好きなやつ、必読

初めて『権現の踊り子』を読んだ時、タイトルにとても魅かれたのは覚えていたのですが、内容は一切残りませんでした。その後読み直すこともなく、たまに「逆水戸」のみを読んでは笑い転げる日々でしたが、久しぶりに全編を読み直し、「工夫の減さん」の素晴らしさにやっと気付きました。
良かれと思って工夫ばかりして、事態をより悪化させてしまうどころか、他人に迷惑をかけ続けているおっさんの物語。たまらなく切ない。こういう状況は、程度の差こそあれ誰しもが経験してると思います。

博奕で身を滅ぼしたとか女でしくじったとかいうのは聞いたことがある。しかし工夫で身を滅ぼしたというのは聞いたことがない。

工夫の減さん – 権現の踊り子

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2005年10月31日(月)

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Text by pushman

猫にかまけて
猫が教えてくれること

僕はこのサイトでずっと「電車やドトールで読んではいけない本」の筆頭に、町田康の作品を上げていました。なぜなら顔がにやつくから。それなのにドトールで読む本を探しに本屋さんに入り、この本を買ってしまいました。僕は町田康が好きで猫も好きなので、この本から逃げる術がありませんでした。タイトルどおり、町田康が一緒に住んでる猫達にかまけている生活をつづったエッセイです。町田康が好きで猫も好きな人は必読です。町田康に興味がなくても、猫好き、あるいは猫に興味がある、という人も必読です。

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2004年11月23日(火)

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Text by pushman

壊色
町田康の原点

とても親切な方から『壊色』を頂きました。しかも1993年出版の初版です。と思ったら文庫判より内容が少ないのですね。でも、豪華だからいいです。負け惜しみではなく。
『きれぎれ』でなにかの賞を受賞して広く有名になる前の本です。町田町蔵=町田康ですね、念のため。「第1章 天丼ゆうてる」「第2章 うどん玉・バカンス・うどん」は短編小説っぽい。「第3章 また時間どおりに来やがらぬ」はエッセイと言うか、日記? 町田康公式ページの日記に近いです。「第4章 『唱歌注解』全アジアの女性たちよ」は童謡などの歌詞を勝手に読み替え、ちょっとしたお話を創作しています。

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2004年07月30日(金)

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パンク侍、切られて候
笑いながら描かれる本質

著者初の長編時代小説。短編集『権現の踊り子』でも「逆水戸」という現実的な水戸黄門話を書いていますが、今度のは時代設定が江戸時代なだけ。どんな話か、というのを説明するのは非常に難しいです。
江戸時代、フリーランスの超人的刺客、掛十之進を中心に、この世は巨大な条虫の胎内にあると信じている宗教団体「腹ふり党」、何でも爆裂させるエスパー、凶暴な猿軍団が死闘を繰り広げるって話なんですが、って書いてても意味がわかんないです。僕はこの一文やられてしまいました。

牢人は抜く手も見せずに太刀を振りかざすと、ずば。

パンク侍、切られて候

この一文が気に入った人は必ず気に入る作品です。この鬼才はまたもや新たな傑作を生み出したということでしょう。

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2004年05月11日(火)

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Text by pushman