ボウリング・フォー・コロンバイン
伝えたい事をちゃんと伝える

世間では『華氏911』がいろんな評判を呼んでいますが、人込み嫌いなので家でゆっくりと『ボウリング・フォー・コロンバイン』を観ました。劇場でも観たので2回目。なんだかマイケル・ムーアの映画は何かしらの意見を言わなくてはならないような気分になって緊張しますが、そういうことはちょっと脇によけて感想を。

『ボーリングフォーコロンバイン』チラシ

さらっと言うのも不謹慎かと思ったりしますが、猛烈におもしろい映画だと思います。なんといっても編集が抜群ですよね。マイケル・ムーアがゆっさゆっさと巨体を揺らせながらインタビューする画もおもしろいし。
個人的に一番好きなのは、カナダの自宅訪問。しかも住んでる人が「I♡NY」のTシャツを着ていたりして、「仕込みかよ!」とつっこみたくなります。

そしてなによりおもしろいのが、普通のアメリカ人の発言。まじめに言ってるだけにおもしろい。ひとことで言うと「アホか」です(笑)。ほんと失礼な事言ってすいません。ただこの映画を見たら多くの人はそう思うんじゃないでしょうか。映像(編集)のおっそろしいところだとも思いますが。昔はアメリカ大好きっ子でしたが、いまじゃそんなこと思えないし、思っていても大きな声では言えない雰囲気だと感じています。

もちろん、アホでマヌケな人ばかりではありません。「この状況をなんとかしなければ……」と感じている人も大勢いるはずです。そういう人たちにはマイケル・ムーアの思いは伝わっていると思うんですよ。ただ一番届けないといけない人たちにはどうやっても届かないような気もします。

マリリン・マンソンのことは全然知らないし、あまり興味もないのですが、すごくかっこよかったです。話を聞くとすっきりします。わかりやすい言葉で自分の置かれている状況を説明して、自分の意見もはっきりと伝えられて。ものすごく立派な大人ですね……って僕なんかに言われたくはないでしょうけれど。
逆に全米ライフル協会の会長(だった)、チャールトン・ヘストンにはがっかりというか、切ない気分にさせられました。なんでこんな人になってしまうんでしょう?『ベン・ハー』好きなんですけどね。
でも、人それぞれの見方があるというのは、生きていく上で忘れてはならない事だと思います。アメリカが生んだ偉大な作家フィツジェラルドも言ってますよ。

「ひとを批判したいような気持ちが起きた場合にはだな」と、父は言うのである。
「この世の中の人がみんなおまえと同じように恵まれているわけではないということを、ちょっと思いだしてみるのだ」

『グレート・ギャツビー』

これって本当に、とてもとっても大事な事だと思います。

結局えらそうな事を書いてしまいましたが、普段何も考えない僕のような人間でもこうやっていろいろ考えさせてくれるきっかけを与えてくれる映画です。「ドキュメンタリー」って何?とも考えさせられました。生放送でもカメラマンの位置やスイッチャーのタイミングは「編集」と言えるでしょうし、編集する事はなんらかの意図を含ませる作業になるはずです。この映画は伝えたい事をしっかり伝えようとして、それにもとづいて編集された、素晴らしい作品だと思います。

いろいろ騒がれて先入観もあると思いますが、良質なエンターテイメントにもなっているので、楽しむ気持ちを忘れずご覧頂きたいなと思いますです。はい。

ボウリング・フォー・コロンバイン

情報を知る方法や伝え方の重要性がよくわかります。

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

  • Instagram
  • YouTube
  • ANGLERS