誰も知らない
残酷な物語の優しい目線

久しぶりに映画館に行って『誰も知らない』を見てきました。主演の柳楽くんがカンヌで賞を取ったことはもちろん知ってましたが、子供たち4人だけで生活しているお話、ということしか知りませんでした。是枝監督はわりと好きで、といっても『幻の光』『ワンダフルライフ』ぐらいしか観ていませんし、両方とも1回のみ。でもなんか波長は合うなぁという感じがすごくしてまして、内容を知らない割に「まあ楽しめるだろう」と決めつけていました

『誰も知らない』チラシ

もうこの映画、相当猛烈にいいです。是枝監督の最高傑作。そしてこの映画に出演している人、全員最高。最初にYouが出てきた時は、「母親? Youが?」と思いましたが、Youの空気感が大変良いです。他の人なら「子どもを捨てた母親」という感覚がもっと強くなっていたと思います。Youが演じていることで「子どもを捨てた」とはあまり感じなくて、明と同じように「しょうがないよな……」と思っていました。彼女は子どもを愛していないわけではないし、もし誰かにそんなことを言われたらとてもびっくりするだろうなと思うのです。ただ、自分のことも大好きで、ちょっとばかし自分に甘かっただけなんだと。
明はそれを全てわかった上で、母親を好きなんですね。寝ている母親を見つめる明を正面から捉えたシーンはすごく好きです。優しすぎだ……明。映画は基本的に監督のものです。ですが、この映画をここまで高めたのは子ども達ですね。みんな本当にかわいい。

京子も茂もゆきもほんとうにいい顔しています。日本の子どもの表情は他の国と比べて沈んでいるというような意見をよく目にしますし、僕もずっとそう思ってましたが、この子たちを見ると安心できます。そして何といっても長男の明を見事に演じた柳楽くん、もうやばいですね。僕が女の子ならば間違いなく恋に落ちるでしょう。柳楽くんのあらゆる表情を覚えています。演技じゃないといえばそうなのかもしれませんが、そんなこたぁどうでもいい、伝わってくるものがある表情を持っていることはそれだけで素晴らしい才能ですよね。

兄弟と心を通わせる女の子、韓英恵さんも相当いいです。最初は戸惑いながらも、だんだんと兄弟になじんでいく、優しくて強い女の子を見事に演じていました。僕から助演女優賞を差し上げたいぐらいです。猛烈にかわいい、というわけではないんですが、笑顔がたまらなくいいです。

ちょっと長く感じましたが、観終わった後はそんなことよりも柳楽くんの表情と優しさと強さが繰り返し思い出され、自分もちょっとばかし優しく強く生きたいなぁ、と思いました。

誰も知らない

いろんな意味で子どもの力を感じることができます。

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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