イングロリアス・バスターズ|クエンティン・タランティーノ

イングロリアス・バスターズ|クエンティン・タランティーノ

Author : pushman|Movie|2009-11-23 Mon 01:02

久しぶりにふらりと街に出かけたら、「イングロリアス・バスターズ*1のポスターが目に飛び込んできたので、「いつから公開かな…」と思ったらなんと初日でした。ということでそのままチケット売り場に直行してきました。

イングロリアス・バスターズ

最近まったく映画館に足を運ばず、情報蒐集もしていなかったので、タランティーノが新作を撮っている事すら知りませんでした。この映画に関して知っている情報は「ナチス」「復讐する女」「ブラッド・ピットが出ている」ぐらいだったので、理解できるのか不安でしたが、さすが、ほんとにさすが、タランティーノ。2時間半という長い物語を、ダレさせることなく描いてくれていました。「キル・ビル」もかなり楽しめましたが、緊張感はこちらの方がかなり上ですね。おもしろくなければ返金、というキャンペーンをしているそうですが、劇場を出る頃にはそんなこと忘れちまってる気がします。

タランティーノ作品の登場人物達は、単純に「いいもの」「わるもの」に分けることができず、それが作品の大きな魅力の一つになっています。とはいえ、見る側は対立するグループが出てくると、なんとなく「いいもの」「わるもの」に分けてしまいます。この物語なら、当然「わるもの」にはナチス。「いいもの」には家族をナチスに虐殺され、復讐を誓う女「ショシャナ」と、ナチスに追われたユダヤ系で結成されたの「イングロリアル・バスターズ」なる極秘部隊が当てはまるかと思います。が、その描き方がなかなか興味深かったです。

僕たちは「ナチス」の取った行為を知識として知っていますが、この映画の中でタランティーノお得意のえぐい描写を担当するのは「ナチス」ではなく、「イングロリアル・バスターズ」。どんな方法でナチスを殺すのか、また恐れさせるのかが、メンバー紹介になっているぐらいです。とても残酷な描写が続くのですが、どこか滑稽に見せるのはさすがタランティーノ。しかし、隣の席に仲睦まじく座っていたかカップルの空気はどんどん変わっていってました。どうもデートに適した映画では無い様です(笑)。
対するナチス側が殺害するシーンは、こういう表現が適切かわかりませんが、普通の想像しうる殺し方です。バスターズがナチスを殺す時(または殺してから)、それはもう笑ってしまうぐらいエグイ事します(笑)。

物語の最後までそれは持続されるのですが、こうして思い返すといろいろ考えてしまいます。

アウシュビッツ強制収容所を舞台にした「ライフ・イズ・ビューティフル」。感動しましたし、好きな作品でした。まさしく「笑いあり、涙あり」の名作だと思います。しかし、以前感想を書いた「マウス」の著者アート・スピーゲルマンの「ナイン・インタビューズ」での発言を読んでから、この手の実際あったことを物語に取り入れる事に対して、「それでなければならないのか?」という疑問が頭から離れなくなってしまいました。つまり、今回の場合で言えば、「わるもの」はナチスである必要があったのか、よくわからないのです。

この物語は当たり前ですが作り話です。そもそもそういう政治的なメッセージは無いと思います。だとすれば、完全に架空の話としてもよかったのでは?と、ふと考えてしまうんですよね。とはいえ、難しく考えているわけではなく、もう一回見たいなと思うぐらい好きな作品なんですけれども。

僕なりに無理矢理「ナチス」である意味を見つけるとすれば、前述のように多くの罪無きユダヤ人を虐殺したナチスの面々を、ユダヤ人、またはナチスに追われる面々が、とんでもなく残酷な方法を用いて復讐することで、戦争や殺人、そして人間の残酷な一面を描いたのかなと。そして、復讐することで何を得ることができるのか…やられたことをやり返す、ということは…なんて具合にどんどん暗い方向に思考が走り出しますが、基本的にエンターテインメント作品なので、難しい事考えなくて十分楽しいです。優れた物語は「楽しい」「おもしろい」だけではなく、いろいろな思いや考えを派生させるということですね。

しかしブラッド・ピット、久しぶりに見ましたがかなり良かったです。今どれぐらいの人気で、どういう立ち位置にいるのか知りませんが、90年代のブラッド・ピットはほんとにかっこ良くて大好きでした。「トゥルー・ロマンス」のやさぐれジャンキーもよかったし、「12モンキーズ」の怪演は完全にブルース・ウィリスを喰ってたし、「ファイトクラブ」のタイラーは完璧でしょう。僕はこの手の狂気をまとった感じのブラッド・ピットが大好きなので、常々「タランティーノとの相性はいいに違いない」と思っていたのですが、期待通りの組み合わせでした。

が、何と言ってもこの作品で一番ヒリヒリさせてくれるのは、ハンス・ランダ親衛隊大佐を演じたクリストフ・ヴァルツでしょうね。この人が出てくると緊張で息苦しくなりました。ちょっとティム・ロスに似てますね。

そして、女性をかっこ良く描くのが本当に巧い、タランティーノ。作品毎にレベルアップしてる気がします。ショシャナの人、すごく魅力的でした。

この感想書くためにイングロリアス・バスターズ - Wikipediaを見てたら、なんとナレーションがサミュエル・L・ジャクソンなんですね。なんともったいない…ちらりとでも出てほしかったです。そして、本当は役者になりたい監督の面目躍如、タランティーノも出てますね。全然気が付きませんでした。そして、なんとまあハーヴェイ・カイテルまで…こちらも全然気がつかず…そして見た事あるなぁと思っていた俳優達もいろんな映画で実際に見てますね。やはり映画も見続けないと、そういうアンテナ効かなくなってますね。みんな大好きな俳優なのに。
しかしタランティーノファミリーとは言いませんが、ローレンス・ベンダーやワインスタイン兄弟等、タランティーノが世に出る時に力を貸した人たちとずっとつながっているんですね。そういうの、なんか嬉しいです。

これはやはりもう一回見たい気がしてきました。とりあえず23日までなら60分はただで見れるし…なんてせこいことは言いません。1,800円以上、十分に楽しませてくれる物語です。

  • *1これから見るつもりの人は公式サイトはあまり見ない方がいいかもしれません。少なくとも「STORY」は見ない方がいいです。結構細かい出来事も書いちゃってるので。

Tag(s): クエンティン・タランティーノ

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