2004-07-12 Mon
週に一回の楽しみというか、ご褒美というか。とにかく、村上春樹さんの物語を読むことは僕にとっていつでも、とても幸せなことです。今回は「村上春樹全作品 1979〜1989〈5〉短篇集〈2〉」。短編集「カンガルー日和」と「回転木馬のデッド・ヒート」、それと本作のために書き下ろされた「沈黙」と、何作かの単行本未集録作品が読めるという、とても得した気分(?)になれる作品集です。
以前も書きましたが、僕は「カンガルー日和」に集録されている「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」という短編が猛烈に好きです。今回の解説に、「100%の女の子」好きな僕にとって嬉しいことが書いてました。なんと村上春樹さん自身も「カンガルー日和」のなかで「100%の女の子」が一番気に入っているそうです。作品には全く関係ないんですがそういうのって相当嬉しいです。ミーハーなんですね。ちなみに山川直人監督作品「100%の女の子 / パン屋襲撃」も春樹さんはお気に入りのようです。この映画、僕も結構好きなんですが、僕にとって室井滋さんは「100%の女の子」ではないのは確かです。どんどん話はそれますが、大森一樹監督作品「風の歌を聴け」にも室井滋さんは出演されています。しかもヌードで…
さて気を取り直して。まず今回の春樹さん自身による解説ですが、作品量が多いのであまり突っ込んだ解説はなく、ちょっと物足りないなぁと思いますが、やはり春樹ファンには嬉しいことがありました。上記の件ともう一つ、僕が長年疑問に思っていた「回転木馬のデッド・ヒート」の冒頭に書いてある「ここに収められた文章は原則的に事実に即している」ということの真実が書かれているのです。春樹ファンなら知ってて当然なのかもしれませんが、すごくすーっとしました。これだけで2,000円ぐらいの価値があります。
全作品のもう一つのおまけは、改稿されているという点なのですが、今までの全作品では改稿個所に気付くことはありませんでした。でもこの短編集は結構気付きましたね。ただ残念なことに「100%の女の子」はオリジナルのほうが断然良かったです…ほんの少し書き足されただけで、結構作品の雰囲気が変わるもんだなぁ、と改めて思いました。あと、文章ってほんと繊細なものなんだといまさら気付きましたね。今まで気付いてなくて言うのもアレですが。最初は「何回も読み直したから、相当気に入ってるから引っ掛かったのかな?」と思ったのですが、何回か読み直してみてもやはりオリジナルの方がいいと思います。
さらなるおまけとして、結構な数の単行本未収録作品が掲載されているのですが、う〜んこれも、やはり、載せるべきでは、なかった…かと…思います。読む前は相当楽しみにしていたのですが、やはり一度見切られたものはそんなに良くないですね。僕みたいに「とにかく村上春樹の文章を読みたい」という人にはいいと思いますが。もちろん、くだらない、というわけではないですけどね。他の作品と比べると見劣りするということです。
そんなこんなで作品集全体としては、ちょっと不満が残ります。正直に言って。もちろん喜びはすごくあるんですけど、それはさっきもいった、「珍し物見たさ」を満たしてくれる喜びが大半です。ですが、が、いろいろ文句言ってますが、やはり村上春樹さん、最後はきっちりしめます。この本の最後の物語「沈黙」は本当に素晴らしいですね。何回読んでも心をグラグラと揺さぶられます。そりゃ「全国学校図書館協議会」も選ぶわ。ほんとね、中高生頃に読んでたらもっともっとやられていたと思います。春樹さんのテーマの一つである、個人と暴力を克明に描いています。これがこのまま書き下ろしでこの作品集に集録されていただけでなく、別の短編集「レキシントンの幽霊」に集録されていて、本当に良かったと思います。多くの人に読まれているでしょうから。
大沢さんが本当に恐れるもの。そういうことの怖さを、もっと伝えていかないといけないんじゃないかなぁ、と思います。
さて、収録されている作品で個人的に好きな作品は「カンガルー日和」から「カンガルー日和」「100%(以下略」「タクシーに乗った吸血鬼」「駄目になった王国」。「回転木馬のデッド・ヒート」からは「レーダーホーゼン」「タクシーに乗った男」「プールサイド」「嘔吐 1979」「雨やどり」。で、最後にもちろん「沈黙」。特に「回転木馬のデッド・ヒート」収録の作品が以前より深くしみ込んできました。こういうことって歳をとっていく上で必要で、かつ幸せなことの一つですね。まだまだその感じたことを言葉にうまく出来ないですが。それに、同じ作品を読み続けることも悪いことではないですね。何故自分がその作品を好きかということがはっきりとわかってくるようになるし、自分の変化を身をもって体験出来るし。うん、歳とって良かった。
あと「駄目になった王国」を強くおすすめします。僕の周りにはあまりこの作品を好きな人はいないんですが、相当すごいと思います。タイトルのとおり「駄目になっていくもの」について書いているのですが、立派な人が堕ちていく物悲しさを実感出来た、初めての作品です。これを読むと歳とることが、少し怖くなりますね…歳のとり方をきちんと考えなければいけないなぁと。
しかし最近「ビールが飲みたいような気分」になることも多くなってきたなぁ…
とまあだらだらといつものように長文を書いてしまいましたが、この作品集は3,360円なんですね。で、改めて個別の値段を調べたら3作品を合わせて1,100円未満なんですね…差し引き2,000円ちょっとの価値は…ありますね、ありました。解説+未集録作品ですから。にしても高いですねぇ…でも自分へのご褒美にはぴったりですよ。次の全作品は「ノルウェイの森」です。何回も何回も読んだのに、緊張します。
¥ 3,360 (定価)
¥ 3,360 (Amazon価格)
なし (Amazonポイント)
(Amazonおすすめ度)
在庫あり。(価格・在庫状況は2月11日 9:27現在)
¥ 400 (定価)
在庫切れ (Amazon価格)
なし (Amazonポイント)
(Amazonおすすめ度)
在庫切れ(価格・在庫状況は2月11日 9:27現在)
¥ 193 (定価)
¥ 193 (Amazon価格)
なし (Amazonポイント)
(Amazonおすすめ度)
在庫あり。(価格・在庫状況は2月11日 9:27現在)
« Old 2004-07-10
通貨が堕落するとき|木村剛
2004-07-15 New »
終業式|姫野カオルコ