2004-07-27 Tue

MONSTER|浦沢直樹

最近歯磨きをしながら「MONSTER」を読み直していたのですが、休みに入って一気に読破してしまいました。

一応原作から始まりの部分だけご紹介。

ドイツ・アイスラー記念病院に勤務する日本人医師・天馬賢三は、瀕死の重傷を負った双子の一人・ヨハンという名の少年の命を救う。同時期に入院したデュッセルドルフ市長の執刀をそのため拒否した彼は、市長の死の責任を問われ政治的に窮地に。だが院長ら上層部の怪死で逆に外科部長に出世する。その9年後、失踪したあのヨハンが現われ、院長らを殺害したのは自分だと告白する。天馬は無実の罪で追われながら、ヨハンを追跡する。

MONSTER

通して読み直したのはおそらく3回目ぐらいだと思うのですが、友人とよく話したり、まだ読んでない人を見つけると相当な熱意を持っておすすめしていたので、重要な部分は結構覚えていました。でも、人にすすめたり、感想を言ってるうちに僕の感想自体が物語になっていったと言うか、変な思い込みが出来ていた事に今回気付かされました。

僕の周囲にも「MONSTER」好き、浦沢直樹さんの作品好きな人は多いのですが、「MONSTER」に関しては、凄い人気になったせいもあるのか、素直に面白い、と言いきる人はあまりいません。もっとも多いのは「話を引っ張りすぎ」という意見です。人気が出すぎたものだから連載を終わらせられなかった、ということですね。僕もそう思っていましたし、9巻あたりで終わるとちょうど良い感じだなぁと思ってました。テンマとヨハンが最接近しますしね。でも結局その倍の 18巻まで続いたわけです。

で、今回読み直し始めたときも「9巻あたりで終わるといいなぁ〜、と思うだろうなぁ〜」と思って読んでいたのですが、7巻から 18巻まで一気に読んじゃってそんなことちっとも感じませんでした。それどころか、今までで一番面白く読めました。正直に言いますと、今まではラストの意味、もっと言うとこの物語の芯の部分を理解していなかったように思います。今でも巧く説明は出来ませんが、なんかこう、見えた、というのが一番しっくりくる表現です。そう、僕にも「終わりの風景」が見えたんです…というのは言ってみたかったから言っただけです、すいません。でも、最終巻を読んでいて以前は触れられなかったものを触れた、という感覚をひしひしと感じたのは事実です。物語との距離は確実に縮まったと思います。

こういう巨悪、「MONSTER」の場合は巨悪なんてものではないですね、絶対悪です。そういうものを題材にすると、歯の浮くセリフなんかが満載されていますが、このちょっと相当猛烈におもしろい「MONSTER」にもそれがふんだんに出てきます。でもねー、これが許せるんですよ。というか、そこまで追いつめられてもそんな甘っちょろい事言ってるヤツァすげえなと。

なんかモラルというか常識、想像力が著しく欠落している方々が世の中を大きな顔で歩き回っていますが、そんな人が増えたのも、歯の浮くセリフを徹底的にバカにしてきた報いかなと、ふと考えましたね。6巻の真ん中辺りで、殺されかけた裏社会の実力者が、忘れていた食卓に招かれて過去を語るシーンがあるのですが、ここは相当な名場面です。たわいも無い話をして楽しむテンマ達を見てその男がいいます。

食卓だな……

これが、食卓というものだ…

俺は……
金を儲けるためならなんでもやった…

俺は……金を手に入れて、何がやりたかったんだ……

…中略…

ただこういう食卓が、欲しかっただけなのに…

MONSTER 第6巻

そしてその後、最後の身内を失った彼は、同じように食卓を忘れた女性と二人で静かな食卓を囲みます。自分がぎりぎりのところで失ってしまったものを、その女性には失わせまいと。

うーん…甘いとは思うんですよ、基本的には。でもね、真実だよなぁとも思うんです。僕はどっちかっつうと性善説を支持しますし、支持したいので。

おもしろく、楽しく生きたい、働きたい、という素朴な希望がいつから歪んでしまうんだろうなぁ、なんてことを考えてしまいました。おまけに、これを読み終わった日は「ドキュメンタリーが見つめた 15年」という素晴らしい NHK の番組を見た後だったので、相当社会派思考になっていました。

それにしても物語も大詰めになった頃の○○○は異様にかっこいいですよね。泣けるぐらいかっこいいです。決めるときは決める、過ちは認める、あんな男になりたいですね。グリマーがぶつこの大演説

人間は………

人間は、食事をうまいと思わなければならない……

休日のピクニックを楽しみにしなければいけない……

仕事が終わった後のビールがうまいと思わなきゃいけない……

人間は……人間は……

子供が死んだ時、心の底から悲しいと思わなければいけない……

MONSTER 第18巻

…相当泣けます…しかし、その演説が泣かせるのではなく、それを聴いている○○○の表情がいいんですよ。いや、グリマーももちろんいいですけどね。グリマーがいてなければ、こんな大演説をしなければ○○○の行動もちょっと違っていたかもしれないと思うぐらいです。でもやっぱり○○○です。グリマーと○○○の別れ際の会話が…もう…かっこよすぎ。まさか○○○があんな事をいうとは…(泣)。いかん、書いてて興奮してきました。

まさかとは思いますが、まだ読んでいない人、退屈はしないので是非読んでみてください。とりあえず、1巻だけにしよう、なんて買ってしまうと、後悔しますよ、まとめて買えばよかったと。そしてたまには、社会派野郎になってみるのもいいもんですよ。

この物語の後日談がでています。が、漫画ではなく小説、というかレポートという形で出版されています。個人的にはこういう後日談って好きではないのですが、これは面白かったですよ。読んでも読まなくてもすっとしないのは同じですが、浦沢直樹さんの仕掛けにはまりまくるのは凄く気持ちがいいものです。僕も今度これを読み直す事にします。

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2004-07-27 Tue / Author - pushman / Book / Comment - 0 / TrackBack - 0

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