2004-07-03 Sat

花男|松本大洋

久しぶりに「花男」を読みました。もちろんうちの猫「花男」はこの作品から名前を頂きました。

いわゆる「ガリ勉」なだけでなく、ほんとに頭のいい茂男(小3)が、夏休みに突然父親の花男(30歳)と一緒に住むことになるのですが、この父親の花男。茂男がまだ小さい時に、プロ野球選手になるため家を出ていってしまったものの、草野球の助っ人をしながら、ヒーローインタビューの練習に励むとんでもない男。エリート街道まっしぐらの茂男は完全に見下していて、親子の関係は成り立っていない、というよりも完全に逆転しているのです。とにかく、一緒に住むことになる2人には、「ハードボイルド」な日常が待っているのです。

理由はなぜかさっぱりわからないのですが、僕は松本大洋さんの漫画を、「こじゃれている、一風変わった人々が読むおしゃれ漫画」と思い込んでいて、ずーっと手を付けていなかったのですが、「ピンポン」が映画化されるタイミングでちょうど読む機会があったので、勇気を出して読んでみてびっくりしたわけです。…熱いなぁ、と。もう猛烈はまってしまって、「鉄コン筋クリート」、「青い春」など、どわーっと一気に借りて読みました。で、しばらく間を空けて、「花男」の存在を知ったのですが、幸か不幸か誰も所有していなくて、初めて自分のお金を出して手に入れた松本大洋作品は「花男」ということになりました。しかも、内容を全く知らないまま。表紙に「A BOY MEETS A PAPA AND BASBALL」と書かれているのを見て、単純に野球漫画?と思ったぐらいです。

この人の作品は「ピンポン」「青い春」と映画化されていますが、個人的には映画にする必要は全くないと思います。というのも、とても映画的な漫画であり、登場人物達は紙の上でいきいきと動き回っていますし、コマとコマの間も見えちゃうんですね。描いていないところも見せてくれるんです、きちんと。ほんとに。今回改めてそれを感じました。表情とかも動きがあるんです、比喩的な意味でなく。また、ぱっと見てわかることですが、画の構図がもう漫画とか映画とかの境界を軽々と越えているんですね。映画化するとき絵コンテとかいらないだろうなぁ、と思います。また、道端で普通に河童とかが寝ころんでいてそれがすごく馴染んでいるんですね。もう漫画とか映画とか関係なく、松本大洋という新しいジャンルですよ、ここまでくると。ほんとかっこよすぎです。

で、「花男」ですが、読者のほとんどは「茂男」として作品世界にすーっと入っていくことができると思います。というのも、自分が口にするのはちょっと恥ずかしいようなセリフを、花男が大声で叫ぶわけですが、「いい大人が何を言ってやがる」と言いながら、どこかで自分もそう思いたいと思っている茂男の気持ちがすごくわかるからです。

この作品はもう絶対に電車やドトールコーヒーで読んではいけません。僕はこれまでも町田康とか、T・R・ピアソンの作品を人が大勢いるところで読むことは危険だ、と警告してきましたが、それは「危ない人だ」と思われるのをさけるためです。笑いを止めるのが困難だから。しかし、この作品はそれとは全く逆に危険です。僕は家でも一人の時にしか読めません。その理由は…80 %ぐらいの確率で号泣してしまうからです。まだ読んでいないという方で、通勤・通学時に読もうかなと思った方は、かなり気合いを入れないといけませんよ。僕の友人の元卓球部員は「ピンポン」が好きで「鉄コン」は全く面白くない、と切り捨てていたので「花男」を貸してあげても「めんどくせえなぁ」といった感じだったのですが、夜中の2時に貸して、その5時間後に「今読み終わりました。号泣しました」という反省メールをよこしました。こう感じるのは男だけなのかな、と思っていましたが、娘さんをお持ちの女性も号泣していました。まあ最終刊の半ば辺り、茂男がやっと、ちょっとだけ素直になり始める頃、読者の涙腺もゆるみはじめるようです。僕は今公式ページ小学館 松本大洋の本の「花男」の予告編を見ているだけでゆるんできました。

「自分で潰さない限り、夢はなくならない」なんて青臭いことを、信じてもいいかな、いや、信じるべきッス!と言えるようになる作品です。とにかく、「ビリビリすること」これが大事なわけですね。

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2004-07-03 Sat / Author - pushman / Book / Comment - 2 / TrackBack - 0

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「花男|松本大洋」へのコメント

あい wrote...

花男は確かに面白いが鉄コンを馬鹿にされてるようで非常に腹ただしい

2007-03-25 Sun 00:24

pushman wrote...

あいさん、不快な気分にさせてしまったようで申し訳ありません。ですが、僕は別に「鉄コン」を馬鹿にしてるつもりはありませんし、むしろ好きな作品なのですが。なぜそうとられてしまったのかよくわかりません。

2007-03-28 Wed 09:02





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