2004-07-02 Fri

若い読者のための短編小説案内|村上春樹

3〜4年前に買っていて、ずーっと読むのをためらっていた「若い読者のための短編小説案内」を読みました。タイトルどおり、村上春樹さんが日本の短編小説を紹介するというものです。文学のことはよく知りませんが、「第三の新人」と呼ばれた方々の作品を取り上げています。

村上春樹さんは、作家になる前は日本の小説をあまり読んでなかったと公言していますが、この本にはなぜ日本の小説を読んでなかったか、また、どうして日本の小説を読む気になったかも書かれています。

僕は買った本はすぐに読み始めて、はまってしまうと一気に読んでしまうのですが、この本を何年も読まずにいたのは、二つの理由からです。

一つは、書評というものがあまり好きではなく、村上春樹さんも「何年も前の作家ならともかく、同時代の作家なら書評や研究本で読み方を固めず、自分で自由に読んだ方がいいと思う」みたいなことを以前あった公式ホームページで言われていました。僕もほんとにそう思うので、村上春樹さんが書評を書いていることになんとなく違和感を感じていて、購入したはいいもののどうも読もうという気になれませんでした。

そしてもう一つ、僕は猛烈影響を受けやすいので、好きな作家が「良かった」「翻訳した」という本は、必ず読まないと気が済まないのです。僕の読書遍歴はそうやって細く深く(はないかな…)掘り進んできています。ですので、猛烈好きな村上春樹さんのおすすめはおそらく全部読みたくなるだろうと、(金銭的に)恐れて手を出さずにいました。

でもBlogを始めて、しかも書評ではないですが、自分の感じたこと、思ったことをつらつらと書いていると、自分の文章の拙さや伝えきれないもどかしさが日々大きくなってきて、ふとこの本のことを思い出し、「同じように(と思いたい)書評嫌いな村上春樹さんはどんな風に書いているんだろう?」と思って読んでみたわけです。

で、感想ですがこの本、著者名を伏せられていたらちょっと村上春樹さんとはわからないかもしれません。というのも口語体で語られていて、授業をそのまま書き写したような感じで、というかそのまんまなんです。後書きを読むとそのあたりの理由もわかるのですが、正直ちょっと読みにくかったです。少なくともいつもの村上春樹作品(小説であれエッセイであれ)のようにすらすらーっとは読めませんでした。それでもやっぱり、うんうんなるほどなぁ、と思いながら読めるんですよね。さすがです。

紹介されている、吉行淳之介、小島信夫、安岡章太郎、庄野潤三、丸谷才一、長谷川志郎の6人の名前は知っていますが、見事に一つも読んだことがありません。つまり、全く予備知識が無いまま読み進んでいったのですが「読みたい!」と思ったのは、

です。って、なぜか吉行淳之介さんは、へぇー。という感じだけでしたが、でもやはりその他の方の作品は読みたくなってしまいました。特に「馬」は猛烈読みたいです。

春樹さんの、物語の作り手としての意見は、いかに一つの物語を作ることが大変か、またおもしろい事かということが伝わってきます。またこういった部分を説明する時には、「ああ、村上春樹だなぁ…」と思える説明をしてくれて、疑問点もきちんと指摘し、考えを押し付けるような印象は受けませんでした。好きな作品を取り上げているわけで、当然といえば当然ですが基本的には作品の味方をしていて、「ここ、おもしろいですよね。そこは素晴らしいですよね」ということが言いたかっただけなのかなとも思いました。

巻末に、紹介している作家の簡単な説明と、集録されている作品などを紹介してくれていて、とてもありがたいです。しかし、ほとんど入手困難と書いています。この本が出版された頃(1997年)はまだインターネットもそんなに普及してなかったんですね。今は Amazon がありますし、検索したらきちんと出てきました。ほんと便利すぎる時代ですね。

タイトルどおり、「ここにはこんな物語があって、あっちの方にはああいう物語があります」と案内してもらったと思います。とりあえず、入手しやすい「樹影譚」あたりから読んでみようと思います。

若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)

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