2004-07-19 Mon

カリフォルニアの炎|ドン・ウィンズロウ

職場のMEEさんより「カリフォルニアの炎」を頂きました。やっぱりいいです、この人。ドン・ウィンズロウ。もう最高です、僕にとって。なんか理屈を越えてますね。手が合うというか、波長がすごく合っています。僕はジャンルとかよくわからないのですが、おそらくミステリーです。ミステリーの定義もよくわからないですが。謎のない物語なんてないですしね。とにかく、とても楽しめる物語です。

主人公はこよなくサーフィンを愛する、脛に傷持つ火災査定人、ジャック・ウェイド。彼が愛する砂浜を見下ろす豪邸で、一人の美しい女性が火災の犠牲者となり、その調査を担当する事になる。読者にもすぐに先の読めそうな単なる保険金詐欺のようでそんな単純なお話ではない、相当複雑に入り組んだ複数の陰謀に巻き込まれながらも、自分の信念を貫きとおし強大な組織と、まあなんやかんやとやり合う、よくある物語です。

最初にも書きましたが、どうも僕はこの物語の作者、ドン・ウィンズロウさんと波長がとても合うようです。「ストリート・キッズ」から始まる、ニール・ケアリーシリーズを初めて読んだときも相当わくわくしましたが、物語の雰囲気は変わっておらず、あっという間に物語に入っていけました。

ドン・ウィンズロウさんと、翻訳者の東江一紀さんの波長も合っているのか、相当読みやすく、読むのを中断する事が困難な作品です。またもや降りるべき駅で降り損ねそうになりました。登場人物達は、清廉潔白とはほど遠い過去を背負っているのですが、ほぼ全員が個人的な最後の砦をしっかりと、命がけで守っているのが伝わってくる物語です。汚れちまった人生だけれども、心までは汚れちゃいないぜ、といった感じで。ちょっとだけの悪の匂いが猛烈にかっこいいです。

このドン・ウィンズロウはちょっとT・R・ピアソン的な笑いがあります。あんな特徴的な文章を書く人ではありませんが、声に出して笑うほどではない、しかしにやつきを押さえるため下唇を噛まざるをえない羽目に何度か陥りました。町田康を初めて読んだときも、特におかしな言葉を連ねるのではなく、人が考えている事や行動、事実や人が考えている常識、その思考形態を羅列する事がこんなに笑えるとは…と驚きましたが、そこんところをとても分かりやすく伝えてくれています。

最近、「笑える、笑えない」という言い方をよくみますが、小説に限らず、映画でも舞台でも、作品を鑑賞する姿勢としては単に笑いを消費しているだけで、あまり感心できる姿勢ではないと思います。笑えるものを書こうとか、笑わしてやろうとは思っていません。ただ、なぜぼくの書いたもので笑ってくれる人がいるかというと、笑いと泣きって紙一重で、人間のやっていることを、普通に、まじめに描写すると自然に可笑しくなるからではないでしょうか。

BOOKアサヒコム | 作家に聞こう | 町田康

これを読んだとき、「うわぁっすげぇ…」と思いました。情けない感想ですが。全く持ってその通りだと思います。そこのところをよくわかっているからこそ町田康にしても、ドン・ウィンズロウにしてもシリアスな場面ににやつく言葉を持ってくるんでしょうね。かっこいいなぁ…

ミステリーの感想を誰かに言いたいときに常につきまとう一つの重要な問題に、「ネタバレ」がありますが、今回の作品はある意味読み始めるとすぐに結末は見えてくるのでちょっと安心です。この物語、結末がわかったとしても、もう犯人は絶対こいつだ!と断言出来ても、最後まで読んだほうがいいです。ジャックは明らかに世渡り下手です。でも人として失ってはいけない、と信ずる何かを持っている人間です。そんな人間の末路なんて、この世の中では誰でも予想がつくと言うものです。

ハッピーエンドは、無い。

でも、それでもジャックは自分の信念と、大事な人々のために必死に闘うのです。まあこんな風に言葉にしてしまうと「陳腐」なんて言葉では間に合わないぐらい嘘臭いですが、読んでいるときはそんな嘘臭い事を守る大事さ、かっこよさがビリビリと伝わってきます。突き放されたラストシーンを読み終ると「うん、頑張ろう」なんて思ったちゃうわけです。むちゃくちゃかっこいいですよ。

カリフォルニアの炎 (角川文庫)

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2004-07-19 Mon by pushman - Category: Book
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「カリフォルニアの炎|ドン・ウィンズロウ」へのコメント

タカジロウ wrote...

ニール・ケアリーシリーズは3作目までしか読んでないんですが、かなり好きですよ。スラングとかの訳がまた最高で。テンポもいいですよね。「カリフォルニアの炎」チェック入れときます。

2004-07-19 Mon 20:41

pushman wrote...

タカジロウさん
ありがとうございます、今日はカタカナですね(笑)。

ニール・ケアリーシリーズ好きなんですか! なんかむちゃくちゃ嬉しいです。思わず小躍りですよ。

「カリフォルニアの炎」も凄く良いですよ。ただニール・ケアリーの方が愛せますけどね。

この本の後書に書いてるんですが、ニール・ケアリーシリーズの第4作があとしばらくで翻訳刊行されるそうです。って、書いているのが平成 13年9月…もうすぐなのかな? 何にせよ待ち続ける事がある、というのはいいことですね。

とにかく、「カリフォルニアの炎」是非読んでみてください。

2004-07-19 Mon 21:33





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