人間競馬
自分の人生を選ぶタイミング

生きていると何かにすがりつきたくなる時が必ずやって来ます。いくら頑張ったところで最善の結果を出してくれる保証なんてありませんからね。占いやジンクスなんてものがあるのも、最後の根拠無き自信を持つための手段なのでしょう。そうしたもの全てひっくるめて「運」だと思います。

続きを読む

2006年05月28日(日)

読書 /

Text by pushman

シュウシャインの周坊
友達になれない男達のつながり

一人でいることは嫌いではありません。どちらかと言えば好きなほうだと思います。何をしてるかといえば、まあいろんなことをしていますね。本を読んだり、ネットを徘徊したり、音楽を聴いたり、カレーを作ったり。最近ではヘルニア対策として、軽く運動したり。このようにやりたいこと、やるべきことはたくさんあるわけです。一人万歳です。とはいえ「ずーっと一人で生きていく権利を与えます」と言われても、まあ……断りますね。憧れないわけではありませんが、孤独感に襲われた時はそばに誰か居て欲しいです。自分勝手な言い分ですが。そんなわけで、「シュウシャインの周坊」はかなり響く作品でした。

この物語の主人公は「手下」はいても「友だち」「相棒」は存在しない「バイニン」の世界に生きる男。全てが勝負につながり、「胸を打ち割った話などナンセンス」な世界に生きることに疲れ、友だちを欲したとき、周坊という少年に出会う。しかし、バイニンの世界に生きすぎたのか、友だちではなく相棒として周坊を育てるはめになる。それでも博奕を通じていろんなことを教えながら友だちになろうと努力するが、互いに不器用な感情をぶつけ合い始め、周坊は男の元を去ります。ある日、男は荒みきった周坊と雀荘で再会する──。こんな感じの男だけの物語ですが、ある種の愛情が存在している物語です。

続きを読む

2006年02月09日(木)

読書 /

Text by pushman

耳の家みみ子
堕ち続けた先のカタルシス

心が揺さぶられたり、身体にまで影響があり、そして、人生の彩りを鮮やかにしてくれる。そんな作品をたくさん読んだり、観たり、聴いたりしてきましたが、そういう作品の多くは「人生を豊かにする」といったような、抽象的な効用だけでなく、「へぇーそうなんだ」といったような、実用的知識を教えてくれることが多いです。パスタのゆで方とか、フォーク並びの素晴らしさとか。「耳の家みみ子」で僕が得た知識は、日本が生んだ世界最高の博奕「手ホンビキ」です。Googleで検索するといろんな情報を得られますが、まあ素人衆は手を出せない博奕ですね。遊びでいいからやってみたいですが、なんか遊びですらやばいという話です。日本にカジノができたら、ラスベガスの真似だけじゃなく、こういった日本独自の文化も体験できれば嬉しいと思いますです。

さて、この物語、「ホンビキ」の息詰まる攻防ももちろんおもしろいのですが、最大の魅力は「(自覚的に)堕ちていく」人々です。

続きを読む

2006年01月22日(日)

読書 /

Text by pushman

スイギン松ちゃん
正しい選択がない人生

村上春樹、庄司薫に続いて、僕の人生を豊かにしてくれる作家に出会いました。猛烈にかっこいいペンネームの、阿佐田哲也です。初めて読んだのは『阿佐田哲也麻雀小説自選集』でしたが、その時感じた作家と自分との親密さが、この「スイギン松ちゃん」収録の『ギャンブル党狼派』で決定的なものとなりました。

「スイギン松ちゃん」は、渡世にあるまじきふるまいをして、破門になったスイギンの松ちゃんと主人公の少し変わった友情の物語です。

賭博場の熱気に魅かれて渡世に入った松ちゃんは、破門にされたことで絶望し、軍隊に入る。激戦の地を渡り歩いた松ちゃんは運良く生き残り、そのせいで自分は桁違いの運を持っていると思い込んでいる。そんな松ちゃんとある雀荘で出会った主人公は、松ちゃんを利用し、だましながらも奇妙な親近感を抱く。二人は時にコンビ打ちをしたりもしますが、松ちゃんがヘタをうつと、主人公はコンビ打ちの最中でも容赦なく松ちゃんをカモにするし、松ちゃんの方もその所業を恨んでいるのに、町で出会うと悪態をつきながらもつるんでしまう。そしてまたカモられる…それでもやっぱりつるんでしまう。そして二人は、勝負をする度に確実に距離を縮めていきます。

続きを読む

2005年12月16日(金)

読書 /

Text by pushman