2005-10-08 Sat
久しぶりに読み直しましたが、読めば読むほどはまってしまう作品です。「寄生獣」を好きな人は、高確率で気に入るのではないでしょうか。
戦国時代、記録にも残らないような小規模な合戦を冒頭に持ってきて、現代人が見落としている、また、見ることのできない秘密をまず読者に見せる第一話から、僕は完全にのめり込んでしまいました。
設定は、とても寄生獣に似ています。主人公はふつうの人間で、取り立てて優秀なわけではない。ところが、未知の能力を手に入れて、その力のルーツに否応無しに近づいていく。また、普通の人間でありながら、普通の人とはまったく違う基準で動く人物が出てきたり、読めば読むほど、物語の相似性を感じずにはいれません。寄生獣と違うのは、主人公が元々その能力を持っていて、物語の進行とともに覚醒していくところぐらいでしょうか。それだって、同じといえば同じです。だからといって、この物語が寄生獣の二番煎じであるなんて、僕はまったく思っていません。むしろ、4巻で終ってしまったことが、とても残念でなりません。おそらく、余り人気がなかったために、岩明さんが描こうとしていたことを、ラスト近くでぎゅうっと圧縮する必要があったのではないでしょうか。そこだけが寄生獣と正反対に思えます*1。
この物語には、
恐怖と、
怒りと、
愛がある──。
というのは寄生獣のコピーですが、これはこの「七夕の国」にも当てはまると思います。「七夕の国」でのその対象は「住んでいる土地、丸神の里」。そして「祖先」。つまり、自分自身のルーツですね。僕は住んでいる土地や家に余り愛着のようなものをあまり感じません。そりゃきれいなところだったり、こつこつ自分好みの部屋にしていったら愛着もわきますが、それでもそこに自分の行動を抑制されてはたまらない、というのが僕の基本的な考えです。なので、丸神の里の人たちが、自分を押さえてまで土地を守ろうとする気持ちが最初はわかりませんでした。そこにとどまるには「愛着」だけではないんですね。そこには「恐怖」があります。人が何かに縛られるとき、この二つが重要な要素なんだと思います。それがなんであれ、少なからず恐れる気持ちがあるからこそ、人はそれに縛られてしまうんだなと。
考えてみれば、愛着なんてふとした事で失われてしまいます。僕も今まで、色々なものにのめり込み、色々なものを所有してきましたが、今ではどこに行ったのかわからないものも多数あります。あの膨大なF-1の切抜き記事はどこにいったのやら…とにかく、愛着なんてものは幻想なのではあるまいか、と思う今日この頃ですが、反対に恐怖というものはなかなか消えてくれません。僕は情けないことにびびりなのでよーくわかるのですが、未だにシャンプーをするときに目を瞑るのが怖いんです。目を開けて、そこに誰かいたら…と思うと、開けれなくなってしまうのですよ。わかってくれますでしょうか、この感覚。ちなみに、霊感は(おそらく)零で、今まで何かを見たことはありません。それでも何か、子供の頃に想像してしまった「恐怖」というのは、消えないんですよね。
僕の場合はこのように、他愛も無いことですが、丸神の里の人々が共通して見る(見てしまう)夢というのは、少なくとも里の人々には現実なのです。そのことがわかると、この奇妙な里に住む人々の心理も少しは理解できたのかな、と思います。主人公の南丸くんは、幸いその恐怖を知らないので、多くの読者と同じように里の人々のがんじがらめの生活を理解できません。自分が使える能力で、何か就職活動に役立たないかとか、もっと大きく、世界のゴミ問題を解決できないものかと、一人で頭を使います。それはとても滑稽に見えますが、笑うことはできません。なんというか、とてもリアルなんですよね。自分の周りのことも解決できないのに、世界の事を案じてみたりすることって。ここら辺も、寄生獣とテーマが近いなと思う所以です。
ただ残念なのは、話のスケールからすると明らかに全4巻では収まっていません。溢れかえってます。おそらく、もっとゆっくりと話をすすめていくつもりだったと思うのですが…まあ推察ですけど。でも4巻はすごい駆け足なんですよね。仮に元々そういう展開だったとしても、僕としてはその後の物語を見たかったです。ほんとに残されてしまった人たちの。
あと、絵をまったく描けない僕が言うのもなんなんですが…岩明さんの画力不足─これも駆け足だからかもしれませんが─を感じてしまったことです。この人、力の抜けた笑いとかはいいんですけど、なんというか鬼気迫ったときの顔がね、こちらを冷静にさせてしまう絵になってると思うんです。寄生獣でも、新一が寄生獣を一人ずつ殺そう、と決意して、里美をビビらせてしまうシーンがあるのですが、その時の新一の顔がね、ふとこちらに「あ、決意してるな」と感じさせてしまうんです。とても残念です。「七夕の国」は場合は、ヒロイン(になるのかな)の女の子が、過去の自分と決別するきっかけとなるシーンで…なんというか…吼える?んですが、その時の表情がなんとも…セリフがなければただ驚いた顔のような感じで、そのシーンの重要性との間に、すごいギャップを感じさせてくれます。
まあでもその辺は、岩明さんのファンになれば、脳内補正が効くようになるので問題ありません。納得しちゃえばいいわけです(笑)。
というわけで、久しぶりの感想で力みまくって、いつものように好き勝手書いてしまいましたが、書かれていないことを考えさせてくれる、とてもおもしろい物語だと思います。ある時期を境に、人というのは常に将来のことを考え続けることになると思うのですが、もっと先のことを考えるきっかけになる物語だと、そう思います。
「将来よりもっと先」ってなんだ? 一体なんなんでしょうね(笑)。おもしろければいいですけど(笑)。
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