2006-02-09 Thu

シュウシャインの周坊|阿佐田哲也

一人でいることは嫌いではありません。どちらかと言えば好きなほうだと思います。何をしてるかといえば、まあいろんなことをしていますね。本を読んだり、ネットを徘徊したり、音楽を聴いたり、カレーを作ったり。最近ではヘルニア対策として、軽く運動したり。このようにやりたいこと、やるべきことはたくさんあるわけです。一人万歳です。といっても「ずーっと一人で生活しますか?」と聞かれたら、まあ…断りますね。一つの理想世界ではあるのですが、突然孤独感に襲われた時に何か話せる相手は、絶対に必要です。相当猛烈自分勝手な言い分ですが(笑)。そんな僕なので、「シュウシャインの周坊」はかなり響く作品でした。


男は孤独であることを求め、「手下」はいても「友だち」「相棒」は存在しない「バイニン」の世界に生きている。全てが勝負につながり、「胸を打ち割った話などナンセンス」な世界に生きることに疲れ、友だちを欲したとき、周坊と出会う。しかし、バイニンの世界に生きすぎたのか、友だちというより、真の相棒として周坊をバイニンとして育てることになる。博奕を通じていろんなことを教え、友だちになろうとするが、互いに不器用な感情をぶつけ合い始め、周坊は男の元を去る。そして、ある雀荘で、男は荒みきった周坊と再会する─。


男だけの物語ですが、ある種の愛情が存在している物語です。

この物語の主人公と周坊は、よく似ています。どちらも孤独を嫌っているのですが、よりかかる相手もいないし、寄り掛かってくれる相手もいません。特に周坊はまだ子どもであり、我慢することができず博奕でも人間関係でも、力を抜かずにぶつかっていきます。男も周坊にもっと近づいていきたいと願っているのですが、彼が生きるバイニンの世界から抜けることはできず、周坊をしっかりと受け止めることができません。

多分この二人の関係は、友だちというよりも家族、兄弟だったんですね。男の方は、この後「ホモと深い関係になった」と語っていますが、この時点の周坊を見る目はあくまでも「兄さん」です。周坊も最初はおとなしくしていますが、徐々に反抗する機会が多くなり、結局離れてしまいます。周坊は完全に「兄さん」に頼りたいと願っているのですが、男にはその役割は重すぎたのでしょう。はっきりいって、それはもう「父親」の役割ですからね。とはいえ、周坊が去ってしまった後も気にかける様子は、まるで父親のようです。再会した雀荘で、へたくそなコンビ麻雀をする周坊を見た男の感想は、思い通りに育たなかった息子への想いなのかもしれません。

私が手元においていたらもっと格好いい悪党にしていたろう。

シュウシャインの周坊 - ギャンブル党狼派

格好わるい悪党を見るに見かねた男は、格好いい悪党とはこういうもんだ、とばかりに周坊を何度も陥れます。男にすれば、愛のムチ、みたいな感覚なんでしょうね。そこには厳しさだけではなく、優しい眼差しもありますし、自分が上にいるという余裕も感じられます。腕白な弟であり息子である周坊を気づかうことで、男は人間として大きくなっていったのかもしれません。予想できなかった周坊の行為に、狼狽し腹を立てても、周坊が子どもである所以を思い出し、少し嬉しくなったりしてるあたりは、完全に父親の感情だと思います。

ただ友だちが欲しかった男は、結局友だちを手に入れることはできませんでしたが、自分を頼って甘えてくる、繊細な息子のような存在を手に入れたわけです…人生なかなか思い通りにはいきませんね。

友だちというのは、ある部分では家族の結びつきよりも強く、そのくせ断ち切ることが簡単です。ある時には受け入れてくれるし、ある時は完全に拒絶されたりします。性別や血のつながりを越えた、「ただ気が合う」という一点で結ばれた関係だからこそ、そのような極端な反応を受け入れられるのかもしれません。周坊の甘えと怒りは、家族にしかぶつけられませんでした。家族というのは友だちが拒絶したことを、受け入れてしまいがちです。いいとか悪いとかは場合によるでしょう。しかし、真っ先に家族に向かう甘えは、あまりいい方向に自分を運んではくれなさそうです。

友だちは一人いればいい。

とても大事な人に、最近言われた言葉です。この感想を書いていて、僕なりにこの言葉の意味がわかったような気がします。

ギャンブル党狼派 (角川文庫 緑 459-55)

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阿佐田 哲也

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