2004-07-31 Sat
数年前、僕をどん底から救ってくれた漫画があります。えーと、変態漫画「月光の囁き」です。変態漫画というと、読んだ人は必ず「それだけではないだろう」と言うと思います。僕もそう思います。確かに変態漫画ではありますが、極端に純粋な恋愛を、極端に突き詰めた物語でもあります。
どんな種類の変態かというとSMですね、ええ。専門の方から異論があるかも知れませんが、まあ大きなくくりとしてはSMでしょう。もちろん、拓也がMで、紗月はS。この本読んでると「愛を究極まで突き詰めると、やっぱSMだな」と思うようになります。
Google 検索: 月光の囁きでは、映画版の「月光の囁き」方が上位を占めていますね。なんといってもつぐみさん(「月刊つぐみ」おすすめです)が最高ですものね。…話がそれましたが、映画も相当いいのでそれは納得です。今回は原作の方の感想ですが、また改めて映画版の感想も書きたいと思います。
主人公は剣道部の部長、日高拓也と、同じく剣道部の北原紗月。入学以来ずっと紗月に憧れを抱いていた拓也は、紗月を思うあまり紗月の身に付けているものを収集している。そんな秘密を抱えながら、紗月との朝練を繰り返すうち、紗月も拓也に好意を抱くようになり二人はつき合い始める。しかし、拓也の秘密は隠し通せるものではなく、全てを知られた拓也は開き直りともとれる行動に出る…
ざっとこんな感じの物語で、しかもここまでの展開が速い。純情恋愛路線はあっという間に終わりを告げ、あっという間に変態純愛物語の始まりです。
作者の喜国雅彦さんの作品は中学生の頃から読んでまして「傷だらけの天使たち」とか結構好きでした。あんまり長持ちはしませんでしたけれども。その人が数年ぶりに心を激しく揺さぶられた、映画版「月光の囁き」の原作者だとは。大げさに言えば僕の人生観に深く影響を与えた作品なんです。ただの4コマ漫画作家と思っていた僕が浅はかでした。
というわけで、僕は映画からはいったのですが、まだ映画も漫画も見ていない方は是非映画から見て欲しいと思います。と言うのも、漫画はちょっと表現が露骨なところがあったりするので、いきなり拒絶反応を起こしてしまう危険があるからです。で、映画から見ると塩田監督の巧さがよくわかります。設定や話をちょっとずつ変えているのですが、ここまで原作を壊さずにできるんだぁ、という意味でも感動しました。同時デビュー作である「どこまでもいこう」もよかったですしね。とにかく、映画から見たほうが原作者の喜国雅彦さんと、映画監督の塩田明彦さんの幸せな出会いが実感出来ると思います。
さんざん変態変態と言ってますが、この物語の芯の部分はその恋愛のかたちです。ある事件から紗月を命がけで救った拓也が言います。
俺は紗月を守る。
世界中の誰からも、
たとえ死んでも、
世界中を敵に回しても、
……こうやって二人だけの時に、
守ってもらいたいけん。
なんか女の人からすれば冗談じゃない、となるかもしれませんね。どうなんでしょう。でも、すごく素直な気持ちですよね。実際これを聞いた紗月は、激しく拓也を攻めます。ま、当然ですね。それでも拓也は引きません。ただ一言。
神様が間違えたんや。
潔し、拓也。開き直ってるだけじゃん! と思えるかもしれませんが、そんなことは無いのです。本当なんです。神様が間違えたんです。こういう恋愛もあるのです。それを認めない世の中を作っちゃった神様が悪いのです。…と思います。
まあ確かにちょっと引いちゃう描写がありますが、それはあくまでおまけの部分で、この拓也の気持ちって…愛情の本質だと思いませんか。僕はすごくかっこいいと思います。まあ、それを言わないほうがかっこいいんですけどね。言っちゃうんですよ、男の子は。
こんな事いって、紗月から変態呼ばわりされて(言われて喜んでるんですが)、それでも紗月を見守り続けるという理解出来ない行動(ストーカーとは違います)を繰り返す拓也に、ある男が言います。
男:お前は紗月のなんなんや。
拓也: それは、紗月だけが知っとってくれたらええことです。
拓也の望みは、100%の自分が紗月に受け入れられ、100%の紗月を受け入れたいだけなんですね。恋愛当初は誰でもこのような気持ちを強く持っていると思うのですが、人間慣れてくると恋人以外の人間、特に他の異性にもよく思われたいなどと思いがちです。八方美人とかそういうのとは違う話で。ある程度はもてていたいとか、自分がまだ異性にとって魅力的なのか、とかそんな理由で。でも拓也は紗月に出会った時から完全に、100%紗月のために生きているのです。それが正しいか正しくないかなんて、誰にも決められないですしね。ただ拓也は、月として生きていく事を決めたんです。それだけの事です。そこにたまたま世間から「変態」と言われる性癖というか、行為がともなっただけなんだろうと思います。
拓也にはもちろん友達もいますが、友達には自身の事をわかってもらおうなどとは、思っていません。わかって欲しいのは、紗月ただ一人。他人を拒絶しているわけではありません。現に拓也は後輩から慕われているのです。
それにしても「変態」とはすごい言葉ですね。こんなに「変態」と変換したのは初めてです。とにかく、変態漫画であろうが何であろうが、好きなものは好きなんだということを、恥じる事なく生きていこうと思います。
変態だって別にいいじゃない
変態だって別にいいと思います。
¥ 509 (定価)
在庫切れ (Amazon価格)
なし (Amazonポイント)
(Amazonおすすめ度)
在庫切れ(価格・在庫状況は2月10日 11:17現在)
« Old 2004-07-30
壊色|町田康
2004-08-22 New »
ノルウェイの森|村上春樹