2010-08-15 Sun
初めて見たのは学生時代。アルバイト先のレンタルビデオ店店長に「ウディ・アレンが好きならこれも見ておくのだ」と諭され、渋々見ました。どうもこの手のタイトルは軽すぎる感じがして敬遠していたのです。ラブコメって基本的には好きなんですけど、若かったのでとんがっていたかったのでしょう(笑)。この店長にはいろいろな映画を教えてもらいましたが、その中でも「恋人たちの予感」は興味の範疇外であったこともあり、「教えてもらって本当によかったな」と思える物語です。
先日ふとしたきっかけで見直したのですが、およそ10年間で自分の考え方の変わったところ、変わっていないところを気付かされた気がします。そして、ほんとにおもしろい物語は、時間の経過とともに別のおもしろさも提示してくれる事にも気付かされました。
物語は大学を卒業したハリーとサリーが出会うところから始まります。卒業後の新天地が同じハリーとサリーは、交通費や労力の分散のためサリーの車で目的地に向かいます。その時の出会いは幸福なものにはならず、後味の悪さを残して二人は別れます。数年後偶然再会する二人ですが、「思い出したくない思い出に遭遇してしまった」という感じで、そそくさと別れます。さらに数年後再会した二人は、徐々に距離を埋めていき、やっとのことで友達になります。悩みを相談したり、退屈な夜に電話をしたり、そんな関係を長く続けていく二人ですが、ある事がきっかけで急速に距離が縮まります。混乱した二人は、今までの心地いい関係が崩れてしまわないよう互いに気を使い合うのですが、それでも徐々に二人の関係はぎくしゃくしていきます。そして、ほんとに自分が失いたくない関係とは、どういう関係なのか考えさせられる事になります。
この物語、まずキャスティングが素晴らしいですね。中でもメグ・ライアン。ちょっと強がる時にアゴをつんと突き上げる仕草や、泣き笑いの演技がほんとにかわいいです。そして、サンドウィッチを食べながら「女性の演技」について語り合うシーンは、ここだけで短編作品として成立してしまうぐらい完璧です。会話の内容が興味深く、笑えます。そして、多くの男性を不安な気持ちにさせるでしょう(笑)。
神経症的な男の気持ちを代弁してくれるビリー・クリスタルも素晴らしいです。ハリーが女性との関係で煩わしいと考える点は、共感を覚える男性も少なくはないのではないでしょうか。女性からは罵声を浴びそうですが(笑)。元スタンダップ・コメディアンだけあって、「変なアクセントで喋る」というシーンでのアドリブは、メグ・ライアンの当惑した表情を巧く引き出し、これまた楽しいシーンです。
ハリーとサリー、それぞれの親友もいいですね。男の友達同士。女の友達同士。それぞれの関係性がよくわかるのではないでしょうか。まあ女の人同士がどういう付き合い方をするのかはよく知りませんが、男友達の意味が有るような無いようなアドバイスや意見は、とてもリアルです。どこの国でも男のアホさ加減の根本は同じなんですかね。
構成も素晴らしいです。シーンのつなぎにお年を召されたご夫婦が二人のなれそめを語るのですが、それがもうほんとに微笑ましいのです。話の流れとは関係ないのですが、様々な出会いとその後の関係の不思議さが、ハリーとサリーの距離を縮めてくれる可能性を期待させます。
そしてロブ・ライナーの演出はほんとに見事です。二人が初めて出会うシーンでは、まあ率直に言って感じ良くないんです。二人とも。自分の考えを大切にするあまり、他人の意見を聞く気がないんですね。聞いている様に見えても、上っ面だけ。若さ特有の格好悪い部分がよく見えます。なので、二人が好印象を抱かなくて当然なんですよね。見てるこっちもよく思わないのですから。そんな二人も、再会する度に社交辞令なんかも覚えて角がとれていき、他人を理解したいという姿勢を隠そうとしません。そうなって初めて、見ているこっちも二人に好感を持てるようになります。二人の距離と、見ている側が二人に感じる距離に乖離が無いのです。初めて見た時はこんなこと思わなかった気がするので、きっと歳をとった事で見えてくるシーンだと思います。歳とる事でいいこともあるのです、きっと(笑)。
「男女の間で友情は成立するか」
「親しい男女の間でセックスはどういう意味を持つか」
この手の話題になると、男と女が、というか個人個人が異性をどういう目で見ているのかわかりますね。この物語はその回答を描いている訳ではありませんが、実際に「友達と認め合う、親しい間柄の男女」が一線を越える時に起こりうる葛藤を見事に描いていると思います。そういう葛藤を越えてめでたく結ばれた恋人同士には猛烈におすすめします。付き合い始めの甘い日々を笑って思い出すことができるでしょう。
ただし、間違っても「恋人になる予感」がある人と見てはいけません。この物語を見る前の会話を思い出しては疑心暗鬼になり、その後の会話だって「これは本音なのか…」と気になってしまうと思います。後から思い出して「…ギャッ!」と声を上げてしまうぐらい恥ずかしい台詞は、付き合い始めだからこそ口に出せるものですからね。もっとも、ハリーの様に憎めない台詞はいつでも歓迎されるようなので、センスの問題なのかもしれませんけれども(笑)。
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