2011-12-31 Sat

お熱いのがお好き|ビリー・ワイルダー

何度も何度も観た作品ですが、数年ぶりに、そして初めて劇場で観ることができました。マリリン・モンローのかわいさや、ジャック・レモンの軽妙な話芸など、観ていてひたすら楽しい作品ですが、今回初めて楽しめた要素に「音楽」がありました。

職にあぶれて冬の街を彷徨うベース奏者ジェリー(ジャック・レモン)とサックス奏者ジョー(トニー・カーティス)。不運が続き、マフィア絡みの殺人現場まで目撃してしまい、口封じのためマフィアに追われるはめになります。隠れ蓑に選んだのは女性だけで構成されたジャズバンド。二人は女装して潜り込む事に成功し、バンドとともにフロリダに到着します。その楽団のボーカル兼ウクレレ奏者、シュガー(マリリン・モンロー)に一目惚れするジョー。一方ツアー先で出会う大富豪オズグッド3世に一目惚れされる“ダフネ”ことジェリー。女装したままシュガーを狙う事は出来ないジョーは、大富豪の跡取りに扮してシュガーと改めて出会いを作ります。一方富豪のおじいさんに気に入られてしまったジェリーは、いくら拒絶しても諦めないオズグッド3世の相手をするうち、奇妙な感情を抱えることになります。

あらすじを書いていると「なんてややこしい話!」となりますが、コメディなので強引な流れも笑いながら楽しむことができます。特にジャック・レモンの軽さは最高ですね。この人のお芝居を観ていると、多大な影響を受けていそうな日本の俳優やコメディアンがちらちらと目に浮かびます。

10年程前の僕は“ジャズ”という言葉の響きに憧れつつも、いまいちその良さがわかりませんでした。今のようにYouTubeでいろんな音楽を手軽に聴けなかった時代なので、村上春樹作品で紹介されているミュージシャンのCDを買ったり借りたりして片っ端から聴きましたが、どうも耳に馴染まない。例外的に楽しめるのは、好きな映画のサントラに収録されている曲ばかり。それだって曲が気に入ったというよりも、その曲がかかっているシーンを鮮明に思い出せる事が嬉しく、曲そのものを楽しんでいた訳ではなかったです。その後なぜか突然ウクレレに興味を持ち、ギターに憧れ、意味不明な各種楽器を蒐集し、古い時代の楽しい音楽を愛でる日々が訪れ今に至る訳ですが、思いのほか「なんか……この曲知ってますよ!」となる機会が多いのは、この頃聴いていたサントラのおかげだと思います。

ということで、今回は物語はもちろん、劇中の音楽や演奏シーンも楽しみにしていたのですが、なんかいろいろ「わかるわぁ」となることが多くて嬉しかったです。

まず、ジェリーとジョーの初登場シーンでは「Sweet Georgia Brown」が演奏されています。まあ二人は演奏そっちのけで喋っているんですけどね(笑)。
なんのかんのあって潜り込んだバンドのマネージャーの名前が「スー」なんですが、自己紹介で「I'm Sweet Sue.」と言ったりしてました。これは実際ニヤリとしてしまいましたね。もちろんこのバンドは「Sweet Sue」で最後を締めます。
移動中の列車内で行われるリハーサルでは「Running Wild」が演奏されています。この時シュガーがウクレレを演奏しながら歌うのですが、管楽器だらけのバンドにウクレレ1本入れる理由がさっぱりわかりません(笑)。実際まったくウクレレの音は聴こえません。まあでも、マリリン・モンローが演奏するなら管楽器よりもウクレレかなって気もしますけどね。

嬉しかったのは曲だけではく、演奏に関する知識ですね。ダフネ(ジェリー)に興味津々の大富豪オズグッド3世は、どのようなスタイルでベースを演奏するのか尋ねます。

オズグッド3世

きみは弓も使う?それとも指だけかい?

ダフネ

いつもひっぱたくだけよ!

たしかこんな感じで訳されていたと思います。オズグッド3世は猛烈にアタックしているんでますが、ダフネは激しく拒絶します。当たり前ですね、お互いに男なんですから。なのでこのようなきつい返しになっているのですが、最後の「いつもひっぱたくだけよ!」という表現はうまい返しではないと思います。なんかただ拒絶しているだけに聞こえますよね。
でも、実際には「Most of the time I slap it!」と言ってるんですね。「スラップ」という演奏方法を知っていなければ字幕通りにしか理解できませんが、知っているとニヤリとできます。

まあこんな感じで、以前より音楽への愛着があった分、今までよりも楽しめました。歳を重ねてまめ知識が増えていくと、若い頃にはわからなかったおかしみや喜びが増えますね。まあ若い頃にものを知らなさすぎたとも言えますが。

しかしビリー・ワイルダー作品は終わり方がほんとに素晴らしいですね。今みたいにだらだらとしたエンドロールがないことも少しは影響しているような気がしますが、短くシンプルなのに心に残る台詞で、深い余韻もたせつつ物語をスパッと終わらせてくれます。特にこの物語の締めの台詞は、おかしなこと、鬱陶しいこと、めんどくさいこと、信じられないこと、信じたくないことなどなど、しんどいことが増えて来ている昨今において、ふっと力を抜ける言葉だと思います。

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撮影中のカラー写真らしいです。しかしマリリン・モンローってほんときれいでかわいいですね。

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