2004-06-15 Tue

さよなら怪傑黒頭巾|庄司薫

薫くんシリーズ第3弾「さよなら快傑黒頭巾」。出版順でいえば、2作目は「白鳥の歌なんか聞こえない」なんですが、なぜかこちらの方が先に出版されたようです。庄司薫さんのエッセイ「狼なんかこわくない 」にそんなこと書いてあったような気がします。

さて、赤・白・黒・青の4部作の中で、僕はこの作品が一番好きです。一番読みやすくて、そして猛烈心に響く作品です。今回由美ちゃん(薫くんの幼なじみで、敵ながらあっぱれな宿敵(笑))は旅行に出かけていて出番がないのですが、猛烈魅力的な女の子達が登場します。ノンちゃんと、いとこのアコ(イカシテます)。

素敵な女の子と、「人生という名の兵学校」の戦士たちに翻弄されながらも「なんともいえないとんだ一日」を、薫くんが実にいろんなものにぶつかりながら、いろんなものと闘っていくお話です。

今回の薫くんは、いままでとちょっと違います。相変わらずオタオタしますが、断固としていろんなものと闘っていきます。「人生という兵学校」の先輩でもある、尊敬し、大好きな兄と、その友人の厳しい現実との闘いを、力不足でありながらも必死に応援し、援護射撃をします。そして、当たり前なんだけど、闘っているのはなにも男の子だけではなくて、女の子もしっかりと闘っているんだ、ということにしっかりと気づく話でもあります。そして、「男ってのはなんともみっともない動物だ」ということにも…

庄司薫さんの物語に流れている一貫したテーマとして、(ちょっとくどいくらい)男の滑稽さが書かれています。男の子たるもの、なんの夢もないなんて事は論外だし、すぐ実現出来そうな夢なんて夢ではないし、でもいつまでも夢を見てるわけにもいかないし、あきらめるときはあきらめるときで、いちいちそこに理由や大げさな儀式が必要になるし…ほんと文字通り、考えてもどうしようもないようなことまで、くどくどと一人で、時には友人達と考え込むわけです。そして一所懸命に考えて考え抜いて、結局身動きがとれなくなってしまう。アコが言うように、「男ってのは滑稽ね」ということですね。もう全然否定できません。ほんとその通りです。でもね、薫くんのお兄さんが言うように、「なにも女の子にいわれなくたってそうさ」ってことなんですね。あーあ、ほんとさまにならない生き物です。

僕は思うのですが、「男の子」のことがよくわからないという「女の子」は、この薫くんシリーズさえ読めば基本的男の子の事はすっかりわかってしまうんじゃないかと。

でもこの物語を読んでると、やっぱり女の子の方がえらいというか、大人というか、したたかというか…「男の子ってわかんない」ってふりをしているだけなのかな、とも思いますが。

薫くんのお兄さんの友人、山中さんの結婚式のシーンの薫くんは、ちょっと相当かっこいいことをしてしまいます。ガンになるのを気にしてスモークリング*1を使って煙草を吸う中年の紳士と実に鮮やかに闘い、叩きのめします。「若さ」という相手が決して持つことの出来ない武器を手にして。

シワよせて 煙草すうかや ワレモコウ

さよなら快傑黒頭巾

わかりますか? あーかっこいい。

この一句で、相手は静かに席を立つわけですが、誠実な薫くんは自分のしたことを品性下劣といって後悔したりするんですね。やはり薫くんはとてもいい奴です。

この結構式で、「大人の事情」を兄と兄の友人達から教えられた薫くんは、祝う気持ちもないのに結婚式に出席している人たちに対して、簡単に怒ったりひやひやしていたことを反省します。わかっていたようで、わかっていなかったのだと。そして、そんな短絡的な判断で、もしかすると自分が山中さんをさらにきつい立場に追い込んでしまったかもしれないということを感じて。そしてさらに、ノンちゃんとアコから、「女の子ってのはすごい化け物」であることを知らされて、もう完全にマイッテしまいます。

このあたりから3人の物語は猛烈に面白く、いろんな情熱を抱え込んだままサエナイことをして、3人で夜の街を徘徊するのですが…若者しか持ちえない悩みというか、目の前の現実的な問題と、ちょっと身の丈を越えた大げさな問題を一緒くたにしてそれぞれ考え込む3人それぞれが、とてもとっても優しい気持ちでお互いを支えようと頑張ります。そして惚れっぽい薫くんはどんどんアコに魅かれていくんですね。考えてみれば、薫くんシリーズ中で一番恋愛小説っぽいものになってます。

いつまでも夢見がちな男の子に振り回されながらも、ほんとけなげにそれを許すのんちゃんもいいですが、なんといってもアコですね、個人的には。

健気に男の子を信じるノンちゃんに半ばあきれながら、でもちょっと憧れながら優しく見守っています。…そんなアコに、どうもサマにならないことばかりしている薫くんが、いよいよ考え込んでしまって、どうしていいかわからなくなったときに、アコが言います。

まあこれはあまりに好きなシーン(読むたびに鳥肌が立ちます)なので、書きませんが、アコのような魅力的な女の子にそんなことを言わせてしまうんですから、薫くんもなかなかのもんです。しかしその言葉を言われてしまったら…男の子ってのは相当に大変です。マイッタマイッタ…

初めてアコと二人きりになっても、薫くんは「ちょっと見どころがある」ためにとても慎重に考えて行動してしまいます。何か大事なものがその手からこぼれていっている感覚はあるのに、それを止めることも、それが何かを見極めることもできなくて…読んでるぶんには切なくていい、と思いますが、やはりあまり経験はしたくないことですね。

今回薫くんは、最後まで休むことを許されないのですが、疲労困ぱいした意識の中で、戦いやぶれていった戦士達のことを優しい気持ちで理解します。そして、いつか自分もそこにいかなければならない…いや、すでにそこに参加しているんだということも…

なんのかんのといっても、男の子は

ワレモコウ アンポダンゴを こねそこね

さよなら快傑黒頭巾

なんてことにならないように、断固として頑張らないといけないのだなぁ、と思います。はい…

たとえ無理だとしても かっこよくなりたい気持ちを放棄せず

斉藤和義 ジユウ ニ ナリタイ

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参考記事

この時代のよくわからない言葉は、FUTARO's Homepage さんの「全共闘時代用語の基礎知識」でよくわかります。どうもありがとうございます。

  1. *1 - 当時販売されていた肺ガン防止用具、だそうです。

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2004-06-15 Tue by pushman - Category: Book
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まいで〜す! wrote...

きんたまだ~

2005-02-13 Sun 10:00





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