キンクロハジロのお味
おいしくなくはないけれど

エースハンター4羽目の獲物となった、キンクロハジロ。いつだって油断しているように見えたし、雨の日は普段以上に油断しているように見えた。いや、絶対に油断していた。おかげでこちらもリラックスして狙いを定めて引き金を引くことができた。結果、自分で言うのもなんだけど、見事なヘッドショット。

回収も手際よく済ませ、状態を確認。(見事な)ヘッドショットで仕留めたので、腸抜きは不要と判断。蓄圧式の噴霧器で傷口や体表を洗浄し、ゲームバッグ(という名の納骨袋)に包んで、大量の保冷剤と水を入れたクーラーボックスで急冷。狙撃から回収に至るまで、初めて自分の理想通りに進められた。

帰宅して改めて洗浄して水気を拭き取り、新聞紙に包んで保冷剤を入れたクーラーで保存。1日1回保冷剤を入れ替え、3日後*1に羽を毟って解体した。

心臓、肝臓、砂肝とササミ。塩とたっぷりの黒胡椒で焼いただけ。これがうんまい。これらの部位は弾が中っていない限り、おいしく食べられると思う。とはいえ砂肝を割いた時に中から出てきたもの次第では、気分的においしく食べられないかもしれない。

網焼き中の砂肝とレバー(キンクロハジロ)
ビビリなので念入りに焼いた結果、かなりひどい見た目になってしまった。おいしかったけれど、全くおいしそうに見えないので、調理中の写真しか掲載できない。

続いてモモ肉と手羽元。これも塩と黒胡椒で焼くだけ。これまたうまい。旨味が濃い。が、ちょっと独特の香りはした。「クサい」「おいしくない」といった不快なものではなく、普段食べる鶏肉などからはしない匂いなので、ちょっと気になるという感じ。
ただ、後日シカの解体に立ち会わせてもらった際に、数人が精肉をしながら「この匂い苦手」と言っているのにまったく気にならなかったので、僕は匂いに鈍感なのかもしれない。

手羽先は羽根を毟る時に破ってしまったので、今回は廃棄した。コガモやヒドリガモの時はおいしく食べたので残念。
モモ肉も手羽先も、鶏肉と比べたらめちゃくちゃ硬い。硬いけど?硬いから?噛むたびに濃い旨味、滋養がありそうな味が楽しめると思う。

一番量が多い胸肉は、ヒドリガモと同様、一旦冷凍してお鍋でいただくことにした。
1回目は解凍しすぎて薄く切るのが難しく、3〜4mmになってしまった。こうなると火の通し加減がむずかしい。ちょっと火が通り過ぎるとレバーっぽさが強くなるし、かといって「しゃぶしゃぶ……パクッ」といくのも怖い。結局安全を優先して、ちょっとレバーっぽいのを我慢して食べた。
2回目はガッチリ凍った状態で切ったので、1mm程度。これぐらいだと「しゃーぶしゃーぶ……パクッ」といける。うん、おいしい。とはいえ、やっぱりちょっと独特の香りが口の中に広がる。個体差もあると思うけれど、やっぱりキンクロハジロは独特の風味が強い気がする。

キンクロハジロの胸肉
バーナーで炙ったのに毛が残ってしまってげんなり。『わが家でつくる合鴨料理』によると、バーナーで炙る際は皮の色がちょっと変わるぐらいまで炙った方がいいらしい。

今まで「キンクロハジロは不味い」という話にビビっていたけれど、実際に食べたらそれなりにおいしく食べられた。
これからキンクロハジロと遭遇したらどうするか?
「獲って解体して食べる」という狩猟の一連の流れの経験が浅いうちは、積極的に狙おうと思う。油断していることが多いし。
ただ、間違いなくおいしい内臓肉とモモ肉は量が少ないし、胸肉は半笑い、あるいは苦笑いを浮かべてしまう味ではあった。狙撃から回収、そして解体の経験を十分積んだら、積極的に狙わないようになる……そんな味だった。

わが家でつくる合鴨料理

多くの人が食べ慣れていない、料理することも少ないカモ肉を、おいしく食べるための基本知識が丁寧に書かれている。狩猟をしている人でも「カモ肉は苦手、おいしくない」と言う人が少なくないけれど、そんな人にこそ薦めたい一冊。

購入時の価格 ¥1,572

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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