雨に出猟すれば
あるいは心地良い狩猟環境について

マガモやカルガモは、人に気がつくと「ヤバッ!」という感じですぐに緊張した様子を見せる。状況を確認して十分な距離があればさらに距離を取るし、十分な距離がなければすぐに飛び立つ。
ところが狩猟鳥でも人気がない潜水採餌ガモ(海ガモ)は狙われる頻度が低いのか、人に気がついてもせいぜい距離を取るぐらいで、逃げることは少ない。特にホシハジロやキンクロハジロはなかなか逃げない。この日遭遇したキンクロハジロは、雨が降っていたせいか距離を取る素振りすら見せなかった。

初めて雨の日に出猟した時は普段より多くの獲物を目撃したし、その大半が気を抜いているように見えた。いつも木の下に隠れている慎重なマガモも、堂々と姿を見せていた。
それなのに、エースハンターが濡れるのを嫌がって事前のポンプをせず、あんまり濡れたくないのでゆっくり動くことをめんどくさがり、つまり獲物以上に気を抜いた状態で池を覗いて、油断してのんびり寛いでいたマガモを驚かせ、逃してしまった猟師がいる。

もちろん僕だ。

隠れているマガモ
狩猟鳥でみ特に狙われやすいマガモやカルガモは、普段こんな感じで枝の下など見つかりにくい、撃ちにくい場所に隠れている。

今年はその経験を踏まえ、ちゃんと事前にポンプして、いつもと同じようにゆっくりと池を覗き込んだ。双眼鏡で対岸や木の下などもしっかりと確認する。でも、なんにもいない。
銃禁エリアを含め、猟場に向かう道中の池にはたくさんのマガモやカルガモがいた。普段はつがいで見ることが多いキジバトも、群れで固まり畑でなにかをついばんでいた。カラスもたくさんいた。
でも、猟場の池にはなんにもいなかった。

隠れているマガモと堂々としているホシハジロ
この写真を撮った後、奥まった場所にいるマガモ達は一斉に飛び立ち、真ん中のホシハジロはそのまま居続けた。危機意識のレベルが桁違い。

その後も空振りが続いて気が抜けた頃、ようやく遭遇したキンクロハジロ。その数3羽。「なんでもいいから狩猟鳥と出会いたい」と思っていたはずなのに、実際にキンクロと遭遇するとなんとも言えない気分。はっきり言って、かなり落胆した。
しばらく観察していると、こちらの存在を気にはしつつも全然逃げようとしない。気を抜いているのだ。
こちらはなんとなく撃ちたくない気持ちがあったので*1、完全に姿を見せている。普段狙われていないにしても、これはひどい。危機意識が無さすぎる。
人間にとって鬱陶しい雨も、野生鳥獣にとってはリラックスできる天気なのかもしれない。

おかげでこちらも普段よりリラックスした状態でスコープを覗くことができた。レティクルの中心をキンクロハジロの頭に合わせて、引き金を引く。発砲音に少し遅れて、キンクロハジロは大きく羽を広げて2、3度ばたついてひっくり返った。

ところが残りの2羽はまだ悠然としている。頭の中がはてなマークだらけになりながら、再びポンプ。12回目のポンプを終えようとした頃、やっと異変に気がついて羽をばたばたさせ、ぐるぐる回転し、ようやく飛び去った。今まで一緒にいた仲間がひっくり返って、さすがに慌てたのかもしれない。

この日は本当にたくさんの狩猟鳥を見た。それに反して、畑仕事をする人はいなかったし、人も車もほとんど見かけなかった。狩猟、特に鳥猟は人の目を気にせざるを得ないので、人出が減るとストレスもかなり減る。鳥猟をするなら雨の日は理想的な環境だ。

ただもちろん、身体的には不快なことが多い。濡れるし、靴も泥だらけ。車内も濡れるし、泥で汚れる。銃も双眼鏡も、身に付けるもの全てが濡れるし、汚れる。合羽と長靴がないと、楽しむよりもイライラが確実に勝つ。
そして、濡れた猟具の手入れなど、帰宅してからもやらないといけないことが増える。こんな思いをして獲れなかったら、普段以上に疲れるかもしれない(疲れる)。

コンスタントに獲れるようになれば、わざわざ雨の日に出猟しようとは思わなくなるかもしれない。雨の日に出猟する明確なメリットは、遭遇率のアップと獲物の気が緩むことで、獲れることが決まっているわけではないからだ。
ただ、雨に打たれながら、雨音を聞きながら、獲物を求めて山道を歩いたり池に向かうのは、なぜだかとても心地良い。

そんなわけで、僕はまだ当分の間、雨の日でも出猟するだろう。雨を楽しめる、数少ない機会だから。

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軽いし折りたためるので自転車狩猟時代から愛用。雨天時はもちろん、回収時にも役立つ。

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What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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